やるだけでなく、やりきる仕組み
“働き方改革”でIT業界の常識を覆す。
SCSKの「スマートワーク・チャレンジ」
とは(前編)
SCSK株式会社 執行役員 人事グループ副グループ長
河辺 恵理さん
達成部門へのインセンティブ支給で組織的な取り組みを促す
私はもともと開発畑の出身で、12年の「残業半減運動」の頃は、まだ開発部隊の部長でした。正直なところ、自分の部署が32部署に選ばれなくて良かった、と思っていたんですよ(笑)。ところがちょうど次の「スマチャレ20」が始まる年に人事部に移り、これを実施する側に回ったわけです。スマチャレ20とは、より賢く効率的に、つまりスマートに働いて、目標の“20”を達成しようというチャレンジです。
活動名に冠した“20という数字”には、いくつもの目標が重なっていますね。
はい。まず残業削減については、平均月間残業時間20時間以内を目指しました。これは前年度平均比で約20%減であり、1日あたり約20分減という目標に落とし込むこともできます。さらに有休取得日数は20日。つまり年度付与分を100%消化しようということです。このわかりやすく、ストレッチな目標設定も、トップの強い思いを受けての決断でした。スマチャレは、残業半減運動と異なり、全社・全部署が対象。エントリーは事業部門ごとに行ない、全社共通の目標「20時間」「20日」を達成するための施策の具体化および実施・運用は、残業半減運動と同じく、現場主体で進めることにしました。スマチャレの最大の特徴は、目標を達成した部門のメンバー全員に、夏季賞与に特別加算する形でインセンティブを支給すること。原資には、残業削減で減少した残業手当の原資が充てられました。これこそが、最初に申し上げた「残業代が減る分は社員に還元する」という、中井戸の決意を具現化した施策なのです。
残業半減運動では「部」単位でしたが、「事業部門」単位となると、施策を徹底して成果を上げるのが大変です。人数も、組織の規模もぐっと大きくなるわけですから。
そうです。産業部門や金融部門などは1000人以上の大所帯ですが、所属する部や課、個人単位でいくら目標を達成していても、1000人の平均値が目標に至らないと、インセンティブの支給対象になりません。逆に自分個人や、自分の部・課だけができていないと、部門全体の足を引っ張ってしまうことにもなりかねない。そこが、施策としてのポイントでした。つまり誰もが、他の部署や社員の働き方を、もう、ひとごとにはできない。役員である部門長の責任の下、組織を挙げた取り組みが求められるわけです。
リーダーにはまさに、マネジメントの能力が問われますね。
中井戸も私たちに「これは組織マネジメントの基本中の基本だ」とよく言います。ほかにも、スマチャレには改革を推進する仕掛けがいくつかあるのですが、それは後ほど詳しくお話しするとして、肝心の取り組みの結果はどうだったのか。残業半減運動からの流れを受けて、残業時間は着実に減少していきました。全社の月間平均で2008年度は35.3時間だったのに対し、スマチャレ1年目の13年度は22.0時間に。2年目の14年度は18.1時間と、ついに目標の20時間をクリアすることができました。年休取得も08年度の13.0日から、13年度には18.7日、14年度には19.2日と増加傾向にあります。これは取得率にして97%であり、まさに100%をうかがうところまで改善されてきました。スマチャレに、一定以上の効果があったことは間違いありません。