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~誰しもが経験するつまずきを乗り越える方法とは?~新人がイキイキと働くために、人事ができること

「3年3割」と言われる若年層の早期離職問題。手間もお金もかけて採用した「期待の新人」が辞めていくことは、会社にとって大きな損失である。なぜ、新人がうまく職場に定着しないのか。その原因を探っていくと、昨今の若者事情とともに、職場が抱える課題も浮き彫りになる。そんな課題を解決する新人のための支援ツール『ReCoBook(レコブック)』を開発した株式会社リクルートキャリアの石田幸子さんにお話を伺った。
プロフィール
石田幸子さん photo
石田幸子さん(いしだ・さちこ)
株式会社リクルートキャリア 新卒事業本部
領域企画統括部 インフローソリューション部 R&Dグループ マネジャー ReCoBook開発責任者
ミスマッチをなくすためのソリューションサービスや、新入社員の立ち上がりを支援する『ReCoBook』をはじめ、若年層の早期離職問題の解決に向けた新サービスの企画・開発を主導。外部講演講師やコンサルタントとして、新人・若手の強化に関する課題解決にもあたっている。
※ReCoBookは、Recording(自分の状態・成長を記録する)とCo/Communication(共に・良いコミュニケーションを生み出す)をかけて命名した新人支援サービスの名称。

10年若く社会に出てきてしまっている。
能力不足ではなく、未成熟な新入社員

―― せっかく苦労して採用した新人が、なかなかうまく職場になじむことができずに離職する、思ったような成長が見られない、などといった悩みを聞くことも多いようです。

そうですね。私は、様々なソリューションサービスの企画・開発を行い、企業の新卒採用のお手伝い、特に選考において如何に良い人を採用するか?という課題の解決を支援してきました。その中で、「良い人を採ったはずなのに、なかなか育たない」とか「どうもうまく職場に馴染めなじめていないようだ」という相談を受けることが近年増えてきており、2年くらい前から、具体的にどのようなソリューションが効果的かの検討を始めました。

その1年前には小社メインサービスであるSPIが、総合適性検査SPI3としてバージョンアップいたしました。若者の育ってきた環境の変化に伴って学生の質も変化しているようで、採用場面においてもSPIで人物を見る領域を広げる必要性が出てきていたからです。しかも、大卒3年3割の離職が社会問題化していて、何とかそれを食い止めなければいけない。そう考えていました。

―― 学生の質の変化とは、具体的にどのようなことでしょうか。

「採用選考をお手伝いする中で、学生の資質そのものには、大きな変化はないだろうと感じていました。SPIの結果を見ても、特に何かが著しく変化したということはありません。採用した人物も、以前より質を落としたということではない。ただ、社会的に未成熟という印象を持っていました。

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今、1990年代生まれの人々が入社していますが、この世代の育ってきた環境の中で、一番大きな変化は、コミュニケーションの手段だと思います。対面というより、ネットを通じたコミュニケーションが主流で、例えば仕事の中で何かわからないことがあったとしても、直接先輩に聞くことをためらってしまう。ネットを使って調べて、そのまま自分の中に閉じてしまう傾向があります。但しその分、情報ツールは器用に使いこなしています。

また、いわゆる「ゆとり教育」を受けてきた世代でもあります。毎年、日本生産性本部から新人のタイプが発表されますが、2014年の新人タイプは、「自動ブレーキ型」だそうです。手堅く何事も安全に進めるため安心感がある、といった強みがある一方で、社会に出て力を発揮するには、周囲からの丁寧な支援・指導が必要とありました。昨今の新人の特徴がよく表現されていると思います。社会に出て、急に「自律して頑張れ」と言われても立ち上がりにくい実態があります。

つまり、資質や能力が低いのではなく、以前に比べて10年くらい若い状態で社会に出てきてしまっているのです。資質や能力は高いのだけれど、未成熟。そしてこれは、本人たちが悪いのではなく、育ってきた環境によるものが大きいのです。そういう状況で入社してきているのだから、これまでと同じ感覚で新人を育てていくことは難しいという結論に至りました。

最初の一歩を、うまく踏み出すための支援が実は大事になってきている

―― では、そのような未成熟な世代の新人に対して、どのように対処していけばいいとお考えでしょうか。

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そもそも、新人の成長には、会社になじんで定着し、活躍していくステップがあると考えています(図1)。本来、この段階を一つひとつ上がっていくことが新人にとっては成長で、受け入れ側は、このステップをしっかり認識しなければなりません。ところが、昨今は、多くの企業でいきなり新人に大きな期待がかけられます。仕事の高度化によって、以前であれば初歩的な仕事から与えていたのに、いきなり2~3年目の社員がやるような本格的な仕事を与えられていることもあります。そんな中でも、自社なりに新人の成長のステップを描き、一つひとつ上がっていくという関わりが必要です。

さらに、そのステップを上がっていくときに、初めての環境の中で現実と対峙して受け止め、そこから一歩踏み出して葛藤してもがき、気づき、振り返り、また新しいステージへと上がっていく。そういうサイクルを回すことで、活躍していくまでのステップをのぼることができると考えています(図2)。
あるべきステップとサイクルの回し方を示したからといって、このサイクルをどの新人も一律に回せるとは限りません。必ずつまずきます。そして、一人ひとりつまずくところも異なりますし、このサイクルを回すスピードも異なります。ここに新人育成の難しさがあると思います。このような新人育成の難しさをふまえ、最初の一歩を踏み出すために支援することが、とても大事になってきたのではないかと思います。

【図1】「立ち上がり」期にめざすべき状態とは?
「立ち上がり」期にめざすべき状態とは?
【図2】「立ち上がり」のプロセス
「立ち上がり」のプロセス

―― そうした最初の一歩を踏み出す支援がうまくいっている企業と、うまくいっていない企業とでは、何か違いなどあるのでしょうか。

どのようなお手伝いができるかを探る過程で、20社近くにヒアリングしてきました。ある人事の方から伺ったのは、最初の1ヵ月は人事がしっかり研修を行うがその後は職場任せで、半年後にフォロー研修を行うと、実は新人はその半年間に大きな葛藤があって「辞めたい」と思っていたという話です。しかも、それが判明した時点で、すでに手遅れになっていた、ということが悩みだと言うのです。

一方、うまくいっていた会社のケースでは、地方に配属された新人を、人事が出張がてら一人ひとりフォローしている企業がありました。また、新人の成長を促すため、1年間は正式配属せず3ヵ月に1回ローテーションでさまざまな部署を経験させ、その間ずっとメンターと人事が三者面談を行いつつ、1年をかけてどの部門に向いているかを探り定着させているという企業もありました。両社とも、やはり一人ひとりに対してきめ細かいフォローを行っているという印象を持ちました。

結局、うまくいっていないところは、職場の育成力が弱まっていて、人事としてうまく関われずにもどかしい思いをしている。一方、うまくいっているところは、人事が新人一人ひとりに目を向け、見守り、タイミングよく新人と関わっている。一人ひとりの状態を見つつ、タイミングよく適切なフォローを行っていることがわかりました。

―― 効果的なフォローするには、具体的にどのようなものがありますか?

まずは、新人をひとかたまりで捉えるのではなく、一人ひとり個別に見るスタンスをもつことです。さらに、能力や知識、スキルがどれくらい身に付いたかということより、その職場の環境をどのように前向きにとらえているか。心の状態、コンディションをしっかりとらえておくことが重要だと考えます。ちょっとしたことで新人の心は揺れ動きます。この揺れがかなり激しくて、落ちた状態で誰にもフォローされないと、ずっと落ちた状態で抱え込み、スムーズに立ち上がることができなかったり、「辞めます!」となってしまう。逆に、自分の悩みや落ち込んだ状態を誰かに相談できている新人は、だんだん自分をコントロールできるようになり、安定していろいろなものを吸収できる状態を作っていくのです。

なので、まずは新人が自分自身の状態を知る。そして、周囲がその状態をしっかりキャッチアップして、適切なタイミングで声をかけて関わっていく。現場に配属されると、人事からは新人の様子が見えにくくなります。だから、コンディションが落ちたタイミングがわからず、気づいたときには手遅れになるということが起きやすい。しかし、このタイミングを外してしまうと、新人はモヤモヤを抱え込んで孤立していくのです。

【図3】相談できない実態と、相談の効果
相談できない実態と、相談の効果

新人のめまぐるしく変わるコンディションを
タイムリーに見ることができる『ReCoBook』

―― そのような心の状態の変化を、本人も周囲もタイムリーに理解し、タイミングよく関わっていくキッカケを作れるのが、昨年7月にリリースされた『ReCoBook』ですね。

はい。新人のめまぐるしく変わるコンディションをタイムリーに見ることができる。周囲や人事が把握でき、タイミングを外さずにフォローしやすくなっているというのが、一番大事にしたところです。5分くらいで簡単に心の状態を測ることのできるサーベイに、月1回くらいのペースで定期的に回答し、それによって自分の状態や、その変化がわかります。その結果を人事、場合によっては上司にも共有できます。また、日記を書くように、その日の出来事、学んだこと、業務状況や今の気持ちなどを書き込める機能もついています。
昨年7月にリリースして、現在約100社に導入していただいています。だいたい従業員規模が300名以下の中堅中小企業のご利用が多いですね。実際に、とても元気に見えた新入社員が、『ReCoBook』ではとても落ち込んでいるマークがついて驚き、面談をしたというケースもあるようです。

『ReCoBook』によって現場にいる新人とのパイプができると、職場が忙しくフォローが難しいときでも、人事から声をかけることができ、早めに対応することが可能です。また、直接人事が新人に関わらなくとも、上長にまず状況を伝えることで、上長の対応が変化し、状態が改善されたというケースもあります。

また、10人しか社員がいない企業でも活用してくださっていて、数年前に大卒を採用した時にはうまくいかなかったけれど、今回、『ReCoBook』を活用することで、関わり方自体が完璧なものでなくても、タイミングを外さずにフォローができるようになっただけで新入社員の反応が変わった、と喜んでいただいています。規模がどのような職場でも、新人に「何でも相談してね」では相談してきません。新人を本気で心配している、関心を持っているという姿勢が、本音を引き出すのだと思います。『ReCoBook』は、そういう姿勢を示すツールだと考えています。

【ReCoBook 画面イメージ】
相談できない実態と、相談の効果

―― 上長も人事もみんな見るものに、新入社員がどこまで本音を書き込むことができるのか、懸念の声はありませんか?

その点は私たちも気になっていたので、UI(ユーザーインターフェイス)にこだわって開発しました。周りにチェックされている「報告」ではなく、「マイ日記」というような全体に優しい印象を持ってもらうように、かわいらしいアイコンなどで工夫しています。

また、多くの会社では新人に日誌を書かせていると思うのですが、せっかく書いたのに誰も見てくれないとか、紙の状態なので見る人が限られているなど、かえって新人のモチベーションを下げているケースもあるということが、サービス開発段階のインタビューから明らかになりました。その点、WEBであればタイムリーな反応が可能です。先輩や周囲からの「いいね」などのフィードバックが楽しみになるようなツールを目指しました。結果的に、利用している新入社員からは「アウェイな場所に自分のことを報告しているという感覚ではなく、自分の部屋に来てもらっているみたいで、安心して本音を書ける」という感想もいただいています。

石田幸子さん Photo

SNS世代なので、むしろ間接的なコミュニケーションのほうが自然体でできるようです。ある企業では、社長もご覧になっていて、「めちゃくちゃざっくばらんに書いていて驚く」と社長さんもおっしゃっていたほど。むしろ、自分の居場所があるという感じで、素直に、率直に書いているようです。

いろいろな人からのフィードバックというのが、予想以上に新人にとっては大きな喜びになるようです。例えば、実際に私の部署でも利用したのですが、18人のメンバーの中でさまざまなプロジェクトが動くため、新人が直接言葉を交わしているのは数人に限られてしまうわけです。でも、彼女が書き込んでいる仕事のことや考えを全員がWEBで共有しているので、時折声をかけている。近い人ではない人が見てくれているのがとても嬉しいと言っていて、「ああ、そういう効果があるんだ」と改めて気づきました。

―― 社内の人材育成では、直線的な上下関係とは別に、斜めの関係も大事だといいますね。

その通りです。職場の中で相談できないときに、状況を理解している第三者に頼れるということは、とても大事だと思います。事前のヒアリングで、全国行脚している人事の方にこのサービスの構想をお話した際、「自分もいつまでも人事にいられるかどうかわからない。でも、そういう仕組みがあれば、まさに自分がやっていることと同じなのでいいと思う」と言っていただき、必要性を確信できました。

また、導入してくださっている企業さんからの、嬉しい声もいただきました。「これを職場に使ってもらうのはパワーがかかるから嫌がられるのでは」とおっしゃっていた人事の方から、使ってみたら現場がとても楽しんでいて、職場で他のものと組み合わせて工夫して独自に活用しているというものです。『ReCoBook』が人事と現場がつながる支援になれば、とても嬉しいですね。

甘やかすのではなく、あくまでも
一人立ちしていくための支援ツール

―― 「そこまでしなくてもいいのでは」という反応はありませんか?

もちろんあります。このような説明をすると、手取り足取りでなければいけないのかという印象を持たれることがあります。でも、このサービスは決して甘やかすことが目的ではなく、あくまでも新人が自立していくための段階を追った支援を行うためのものです。

ある企業からは「ReCoBookを卒業したときが、新人が自立した証拠だね」と言われましたが、その通りだと思います。最初は落ち込んでいるときに、声をかけてくれた。そこで「相談する」ということの大切さに気づき、次は自分が落ち込んだ状況になると自分から相談しようとする姿勢を持つはずです。そして、どのような状況になると自分が落ち込むのか、またそれをどうコントロールすればいいかをわかるようになり、自立していくのです。ずっと関わっていかなくてはいけないものではありません。

今年1月にはSPIの結果もリンクさせ、より個人の特性と状況を俯瞰できるようなサービスに改善しています。今後はさらに、この記録を人事が分析し、自社の新人育成に役立つ情報源として活用していただけるようなサービスとして、進化させていきたいと考えています。

石田幸子さん Photo
(2015年1月 東京都千代田区 株式会社 リクルートキャリア本社にて)
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株式会社リクルートキャリア ロゴ
株式会社リクルートキャリアは、株式会社リクルートの人材採用系事業であるHRカンパニーと日本最大級の転職エージェントである株式会社リクルートエージェントとの統合により、2012年10月1日に誕生しました。事業の柱は、個人のキャリアと企業の人材戦略に向けた支援サービスです。私たちはこの事業を通じて、グローバル化、少子高齢化と構造が大きく変化する日本社会に、新しい活力や成長を生み出していくことを目指します。
ReCoBookとは
ReCoBookは、人事と新人、現場と新人をつなぎ、新人の立ち上がりを支援するための
関わるべきタイミングと適切な関わり方を教えてくれるサービスです。
ReCoBook ロゴ
配属後の新人がいつのまにかストレスを溜め込み、意欲を失ってしまうケースが増えています。モチベーションの低下が深刻になる前に、新人の「こころ」のコンディションを把握し、タイミングを逃さず適切なフォローを行えたら。そんな人事や現場の上司の想いを叶えるツールが、ReCoBookです。

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