新卒採用ナビサイトの傾向と選び方
加速するオンライン採用に対応するサービスが続々登場
新卒採用の代表的な手法の一つであるナビサイト。コロナショックにより学生との接点が持ちづらくなった2020年は、オンライン採用が加速するなど、新卒市場にも大きな影響が見られました。こうした状況を受け、新卒採用を支援するサービスではオンラインでの採用活動を支援する機能が追加されるなど、さまざまな工夫がなされました。
そこで『日本の人事部』では、新卒採用の現状を確認するとともに、募集の手法として、とくに「新卒採用ナビサイト」を利用するメリットや選ぶ際のポイントを整理しました。また、おすすめのサービスも紹介します。
新卒採用の現状~コロナ禍で起きた変化とは
売り手市場が続いている新卒採用ですが、コロナショックにより、どのような変化が起きているのでしょうか。まずは現状を見ていきましょう。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けても
有効求人倍率は高いまま
リクルートワークス研究所が行った「ワークス大卒求人倍率調査(2021年卒)」(※2020年6月時点の調査)によると、2021年3月卒業予定の大学生・大学院生の求人倍率は1.53倍という結果となりました。2020年2月時点の同調査では1.72倍だったので、新型コロナウイルス感染症の流行による企業の採用活動への影響は大きいと見られています。
求人総数は減少するも、学生の就職希望者数は増加
企業の状況を見ると、求人総数は前年の80.5万人から68.3万人まで減少。コロナショックによって経営の先行きが見えなくなっていることが影響していると考えられます。従業員規模別に見ると、すべての規模で採用意欲の減退が見られますが、なかでも300~999人の企業での減少率が大きくなっています。一方、学生の就職希望者は前年の44.0万人から44.7万人へと増加しています。
求人倍率は1.53倍と採用難が続く
従業員規模別の求人倍率を見ると、5000人以上の規模を除いて軒並み減少しており、2020年卒の1.83倍から0.3ポイント低下した1.53倍という結果となりました。しかし、この数字はリーマン・ショックのときの低水準までは至っておらず、コロナ禍においても引き続き、採用難が続くとことがうかがえます。
オンライン採用が加速するも、
リアルとの融合を求める声が多い
新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2021年卒採用では、多くの企業が計画を変更・中止せざるを得ませんでした。しかし一方で、オンライン採用を取り入れるという新たな試みが加速しました。
オンライン採用を経験した学生からは、「就職活動が効率的になった」「リラックスして面接を受けることができた」などのポジティブな声が上がっています。一方、すべての工程をWeb化されることに不安を感じる学生も少なからず存在します。
たとえば、学生同士が交流できる場がないなど、情報交換ができないことから不安や孤独を感じ、「本当にこの会社で良いのか」といった迷いが生じているケースが目立ちました。実際に内定辞退率が高くなってしまった企業も少なくありません。
また、企業側からすると、オンラインだけでの採用活動では、たとえば合同説明会のような「偶然の出会い」を広げることができないという課題も生まれています。2022年卒採用以降もオンライン採用のニーズは続き、徐々に定着していくことが予想されますが、一方でリアルでしか実現できないことを重視する傾向は学生側にも企業側にも生まれています。そのため、今後はオンラインとリアルを併用するハイブリット型が主流になるだろうという見方が強くなっています。
直近のトレンドとして、もう一つ注目すべきなのがジョブ型採用の広がりです。コロナ禍でテレワークの導入が急速に進んだことから、仕事を成果で評価するという基準を設ける企業が増加しました。また競争力を強化するために、人材の早期戦力化を目標として、専門分野に関するポテンシャルが高い学生を採用しようとする傾向も強まっています。
新卒採用ナビサイトを利用する4つのメリット
新卒採用の手法では定番となっているナビサイトですが、オンライン採用に便利な機能が付加されるなどサービスは日々進化しています。利用するメリットをあらためて整理しました。
メリット1. 学生登録数が多いため母集団形成に効果的
大手の新卒採用ナビサイトは、登録学生数が数十万と圧倒的な数を誇るため、母集団形成において、その効果を期待できます。サービスによっては卒業年次を問わず登録できるものもあるため、早い段階から自社の認知を広げることが可能という点も、ナビサイトを利用するメリットといえます。
メリット2. 自社の最新情報を多くの学生に届けられる
新卒採用ナビサイトでは、自社の魅力をさまざまな角度からアピールできるページを作成できます。自社のHPに採用情報を掲載している企業も多く存在しますが、都度、情報を更新するのは手間もコストもかかります。
新卒採用ナビサイトを活用すれば、自社のセミナーや学生が気になる情報を、ブログ形式などで簡単に更新することが可能です。数多くの就活生にリーチできる点は大きなメリットです。
メリット3. さまざまなオプション機能で学生との接点を作れる
新卒採用ナビサイトは、学生との接点づくりに役立つ、さまざまなオプション機能を提供しています。主なオプション例は以下の通りです。
新卒採用ナビサイトのオプション例
- 検索時の上位表示
- 掲載情報量のアップ
- 学生へのダイレクトメールやスカウトメール
- 動画でのPR
- Webを使ったOB・OG訪問
- Webを使った説明会・面接
このほかにも、SNSやチャットを活用できるサービスなど、就活生とのコミュニケーションを促進するさまざまなオプションを提供しています。
メリット4. 採用担当者向けのサポートを受けられる
新卒採用ナビサイトでは、採用活動の成功を支援する、さまざまなサービスを提供しています。たとえば専門家によるアドバイスや、調査データの提供など、採用担当者の悩みに寄り添ったサポートが受けられます。新卒採用ナビサイトを利用するメリットの一つといえるでしょう。
新卒採用ナビサイトの傾向と選ぶときのポイント
新卒採用ナビサイトの近年の傾向
2020年以降、オンライン選考の広がりにより、新卒採用ナビサイトにおいても、説明会のURLを自動発行するなど選考過程のWeb化をサポートする対応が目立つようになりました。また、コロナ禍で多くの採用イベントが中止となったため、学生へのアピール方法として、社内の雰囲気や職業観を伝える動画サービスや、OB・OGとのWeb面談予約機能などを提供するサービスも登場しています。
また、企業がジョブ型雇用への関心を高めるに従い、新卒採用ナビサイトの市場でも、あらゆる業界・職種を総合的に網羅する大手サイトだけでなく、掲載できる業界や登録できる学生要件を絞り込んだサイトが多く登場しています。採用の早期化と効率化が課題に挙げられる中で、それぞれの職種へのマッチング確度を上げる取り組みは、ますます加速すると考えられます。
新卒採用ナビサイトの選び方
多様な新卒採用ナビサイトの中から、自社に合ったサービスを選ぶポイントとは何でしょうか。順番に解説していきます。
【自社に合った新卒採用ナビサイトを選ぶポイント】
- 総合型か特化型か
- 登録学生の特性は自社に合っているか
- 自社が求める機能が備わっているか
- 自社の魅力を伝えやすいか
- 採用コンシェルジュサービスを併用できるか
- 料金体系は自社に合っているか
1. 総合型か特化型か
- 総合型…あらゆる業界や職種に対応
- 特化型…特定の分野に絞り込んで対応
特化型は、たとえば「理系学生」や「体育会系」といったように、対象となる学生を絞り込んでいるタイプがあります。また、ベンチャー企業や中小企業の利用に特化していたり、U・Iターンを狙う企業を対象にしていたりするなど、企業側の特色で差別化を図っているタイプもあります。自社や競合の状況を視野に入れながら、効果を得られるナビサイトを検討することは、成功のための重要なポイントです。
2. 登録学生の特性は自社に合っているか
新卒採用ナビサイトでは、学生の登録者を集めるためにさまざまなアプローチを行っています。そのため、ナビサイトごとに登録学生の特性が異なっている点にも注意が必要です。自社が求める人材が多く登録されていることを確認したうえで選定するようにしましょう。
3. 自社が求める機能が備わっているか
多くの新卒採用ナビサイトには、エントリーや説明会の予約、選考予約の機能が付いていますが、サイトによって搭載されている機能に違いがあります。たとえば、サービスによっては学生の行動履歴をデータ化してくれるなど、採用活動のPDCAに役立つ機能を付加しているものもあります。
基本機能とオプション機能は各社で大きく異なるので、自社が欲しい機能が搭載されているかどうかを事前に確認することが必要です。また、説明会を予約するとスケジュールを自動で通知してくれるなど、使い勝手のよい機能があると、学生の活用度が高まります。学生側の利便性に配慮されているかどうかも、確認しておきたいポイントです。
4. 自社の魅力を伝えやすいか
自社の魅力を学生にしっかり届けるには、情報の量と質にくわえて、伝達する方法も重要です。新卒採用ナビサイトの中には、社員インタビューや動画などを活用して就活生の目を引く画面作りができるものや、SNSやダイレクトメールなどで情報を発信できるサービスを提供するものもあります。自社の魅力を訴求しやすい方法を取れるかどうかも、事前に確認しておきましょう。
5. 採用コンシェルジュサービスを併用できるか
人材獲得競争が激しくなっている現在、自社のノウハウだけでは計画通りに採用できないケースも少なくありません。新卒採用ナビサイトによっては、蓄積されたデータと専門的な視点からアドバイスをしてくれる採用コンシェルジュサービスを提供しているところもあります。必要に応じて、プロの視点を取り入れることも検討しましょう。
6. 料金体系は自社に合っているか
新卒採用ナビサイトの料金体系は「基本料+オプション利用料」となっていることがほとんどです。基本料金は各社で大きな幅があり、また、基本料金に含まれるサービス内容も異なっているため、しっかり確認しておくことが重要です。
コスト的には安く抑えられても、自社が求める人材と出会えなければ無駄になってしまいます。採用計画と予算とを照らし合わせて、自社に最適なサービスを慎重に検討することが大切です。
このように、比較ポイントを踏まえ、自社に合ったサービスを見つけることが採用活動の成功につながります。では、実際にどのようなサービスがあるのか紹介していきます。
キャリタス就活(株式会社ディスコ)は、LINEの活用(キャリタスContact)や学校と連携したオンライン求人票配信システム(キャリタスUC)などの独自の機能を実装したサイト運営で企業と学生が互いの理解を深め、ミスマッチ解消につながる出会いを支援しています。
ONE CAREER(株式会社ワンキャリア)は学生の「クチコミ」を主体とした就活サイトです。特にインターンシップや会社説明会に参加した学生の「クチコミ」は累積で30万件以上にのぼり、「普段はなかなか聞くことのできない学生の本音」を知ることができます。
OpenWorkリクルーティング(オープンワーク株式会社)は口コミをベースにした新しいタイプの採用サイトです。口コミを通じて、ポジティブな情報もネガティブな情報も開示されるので、ミスマッチ防止が期待できます。
アカリク(株式会社アカリク)は、登録者を大学院生・ポスドクに特化したサイトで、博士学生の2人に1人以上が利用しています。また理系人材に特化したプロフィール項目や検索条件があり、理系を採用ターゲットとしている企業におすすめです。
秋冬採用ナビ(株式会社ジェイック)は、秋冬選考の求人に特化したサイトで、2021年6月にグランドオープンを予定しています。6月オープンのため、就活が終了した学生は登録しておらず、秋冬に積極的な活動をしている学生に出会えます。
新卒採用ナビサイトを運営する全国のソリューション企業一覧
総合型
- 株式会社Cheer
- 株式会社futurelabo
- 株式会社Techouse
- 株式会社アクセスネクステージ
- 株式会社学情
- 株式会社キャリアデザインセンター
- 株式会社ジェイ・ブロード
- スローガン株式会社
- 株式会社そると
- 株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース
- 株式会社キャリタス
- 株式会社文化放送キャリアパートナーズ
- 株式会社マイナビ
総合型の中でも、学生・企業ともに情報を発信するタイプのサイトです。
特化型
学生の属性や、企業が掲載できる職種に特徴があるサイトです。
- NPO法人ETIC.
- 株式会社JobRainbow
- 株式会社 Life Lab
- paiza株式会社
- 株式会社アカリク
- 株式会社アスリートプランニング
- 株式会社イマジカデジタルスケープ
- 株式会社イングリウッド
- 株式会社エス・エム・エス
- エムスリーキャリア株式会社
- 株式会社ガーディアンシップ
- 株式会社キャリアトレイン
- キャリアフィールド株式会社
- 株式会社クオリティ・オブ・ライフ
- 株式会社グッピーズ
- 株式会社サポーターズ
- 株式会社ジェイオフィス東京
- 株式会社ジェイック
- 株式会社ジェイ・ブロード
- シンクトワイス株式会社
- 株式会社ジンジブ
- 株式会社スプラウト
- 株式会社スポーツフィールド
- 株式会社ドリームキャリア
- 株式会社ハウテレビジョン
- 株式会社ビビビット
- 株式会社フリーシェアードジャパン
- 株式会社 ブレインアカデミー
- 株式会社文化放送キャリアパートナーズ
- 株式会社マスメディアン
- 株式会社ユニヴ
- 株式会社ワークス・ジャパン
新卒採用ナビサイトは社会や学生の変化に合わせて日々進化している
新卒採用ナビサイトは新卒採用手法のスタンダードとして浸透していますが、ビジネス環境や学生動向の変化を反映しながら、年々多様なサービスが追加されています。また、昨今ではユニークな特徴を持った特化型サービスも数多く登場し、企業とのマッチング力を高めています。活用する側は、常に最新情報をキャッチアップしながら、自社に最適なサービスを見極める必要があります。
人と組織の課題を解決するサービスの潮流や選定の仕方を解説。代表的なサービスの一覧も掲載しています。