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裁判員制度実施に向けた企業の対応調査──休暇付与の場合は「有給」が9割占める

労務行政研究所では、2009年5月からの裁判員制度スタートに向けて、従業員が裁判に参加する場合の企業の対応に関する調査を実施しました。関係機関で の制度準備が着々と進む一方、企業では裁判に参加する社員の休務に備えた社内ルールの検討・整備が急務となっています。注目される点は、裁判員の選任手続 きや審理参加のために休務せざるを得ない場合、何らか特別休暇を付与する方法をとるのか、その場合給与の取り扱いはどのようにするのか――などです。これ らに関し、今回の調査では次のような実態が明らかになりました。

※『労政時報』は1930年に創刊。70余年の歴史を重ねた人事・労務全般を網羅した専門情報誌です。ここでは、同誌記事の一部抜粋を掲載しています。

「裁判員に選任された社員の休務時の取り扱い」について「すでに決めている」46.5%、「今後検討する」30.5%

裁判員の選任手続きや、実際に裁判に参加するために社員が休務する場合に備え、休務時の休暇付与や賃金の取り扱い等のルールを決定しているかどうかを尋ねました。

回答が得られた243社の集計結果では、「すでに決定している」(「ほぼ決定している」場合も含む。以下略)が46.5%と半数近くに上り、以下「今後検討する」30.5%、「現在検討している」21.8%の順となっています。規模別にみると、「すでに決定している」企業の割合は、300~999人規模で50.0%と最も高い一方、300人未満規模ではほぼ3社に1社が「今後検討する」と答えています。

また、「いまのところ検討する予定はない」と答えた企業は、全体でも1.2%(3社)と少数にとどまり、その理由については「該当者が出たときに検討する」「制度開始時の他社の動向により判断する」などの回答がみられました。

図表1「社員が裁判員に選任され、休務することとなった場合の取り扱い」の決定状況

図表1「社員が裁判員に選任され、休務することとなった場合の取り扱い」の決定状況

[注]裁判員への選任、裁判参加に伴って休務が生じる場合の休暇付与や賃金の取り扱いについて尋ねたもの。

「休務時の取り扱い」をすでに決めている企業「従来からの公務に就く場合のルールを適用」が多数を占める

[図表2]は休務時の取り扱いを「すでに決めている」と答えた企業(113社)をピックアップし、決定済みの取り扱い内容を示したものです。

内訳をみると、最も多いのは「(3)従来から公職に就く場合の休務ルールを就業規則で定めており、そのルールを適用」62.8%で、これに「(1)裁判員に選任された社員のみを対象とする『裁判員休暇』制度を新設」23.9%が続いています。

こうした取り扱いの決定内容は、企業規模によって異なる傾向がみられます。(1)の裁判員休暇新設は、300~999人規模では35.6%と3社に1社を占める一方、300人未満規模では7.9%と少数にとどまっています。また、(3)の従来からの公務による休務時のルールを適用する企業は、いずれの規模でも最多となっているものの、300人未満規模では73.7%と突出した割合を示しています。

図表2 休務時の取り扱い(休暇付与等)をすでに決めている企業の取り扱い内容

図表2 休務時の取り扱い(休暇付与等)をすでに決めている企業の取り扱い内容

休暇付与する場合の賃金の取り扱いは「通常勤務時と同じ」が大半を占める

以下では、[図表2]に示した(1)~(5)の選択肢のうち、(1)~(3)と答えた企業、すなわち“何らかの休暇を付与する”ことが明らかな企業を対象として、休暇当日の賃金をはじめとする諸取り扱いの回答を集計しました。

【1】休暇を付与した当日の賃金の取り扱い

【参考】で触れた、労働基準法7条に基づいて、労働者に公民権行使に要する時間を与えた場合、その時間の給与を有給にするか無給にするかは、当事者の自由にゆだねられています。この点を踏まえて、休暇を付与した当日の賃金の取り扱いについて尋ねてみました[図表3]。

休暇を付与した当日の賃金については、「通常勤務時とまったく同じ(有給)扱いとする」が89.2%と多数を占めています。対して「休務した分は無給とする」企業は全体で8.4%と少数派ながら、企業規模によって異なる傾向がみられ、300人未満規模では13.6%が無給扱いと回答しています。

また選任された裁判員(補充裁判員を含む)と選任される前の選任予定裁判員および裁判員候補者には、その職務に就いた日数または選任手続き等で出頭した日数に基づいて日当が支給されます。この日当分を通常勤務時の賃金から控除して支給する企業は1.2%(1社)のみにとどまっています。

図表3 休暇を付与した当日の賃金の取り扱い

図表3 休暇を付与した当日の賃金の取り扱い

[注] [図表2]に示した「取り扱いをすでに決めている」企業のうち、「(4)特にルールは定めず、ケースバイケースで対応」「(5)(1)~(4)以外の取り扱いとする」とした企業は本表集計からは除外している。

【2】有期雇用社員(パート・契約社員)の取り扱い

これまで触れた休暇付与や休務時の賃金の取り扱いについて、パートタイマーや契約社員など有期雇用契約の非正規社員に対する適用の有無を併せて尋ねてみました。

集計結果をみてみると、「パート・契約社員も正社員と同様に適用」する企業は75.4%と、全体の4分の3を占めています。このほか、「パート・契約社員は正社員と取り扱いが異なる」(=パート・契約社員のいずれも異なる)とする企業が15.4%、その他の取り扱いが9.2%という内訳になっています。

ちなみに[図表2]に掲げた休務時の取り扱い内容と、有期雇用社員の取り扱いの関係をみてみると、「(3)従来から公職に就く場合の休務ルールを就業規則で決めており、そのルールを適用する」とする企業では、正社員とは異なる取り扱いとする割合がやや高くなっています。

具体的な取り扱いについての回答(自由記入)をみると、「パート・契約社員は正社員と取り扱いが異なる」と答えた企業では、“正社員は有給休暇を付与するが、パート・アルバイトの休暇は無給扱い”とする例がほとんどでした。また、「その他」と答えた企業はパートと契約社員とで取り扱いが異なる(またはいずれかの取り扱いが未定)ところが大半を占め、具体的には“契約社員は正社員と同様に有給扱いとするが、パートは無給”とする例が多くみられました。

注) 注)* ここでは、労務行政研究所編集の人事資料誌『労政時報』の購読企業のうち、会員ホームページに登録していただいている人事・総務担当者から抽出した2484人(1社当たり1名。役職別内訳は以下のとおり/ 経営幹部層:257人、部長クラス:638人、課長クラス:1087人、係長クラス:502人)を対象として(回答があったのは243社<1名=1社としてカウント>)行った調査をもとに、『日本の人事部』編集部が一部をピックアップし記事を作成しました。調査は「裁判員制度実施に向けた企業の対応調査」と題されたもので、詳細は『労政時報 第3734号』(2008年9月26日発行)に掲載されています。
◆労政時報の詳細は、こちらをご覧ください→ 「WEB労政時報」体験版

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