職場のモヤモヤ解決図鑑【第81回】
上司に振り回されないための「ボスマネジメント」とは?
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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児玉 夏樹(こだま なつき)
社会人3年目の25才。志田の部下。ネットとサブカルが好き。
やつれた様子の同期を心配する児玉さん。話を聞いてみると、新しい上司の仕事の進め方になにやら問題がありそうです。「納期直前でダメ出しをされる」「指示内容が聞いていたものから変わる」といった状況を経験したことがある人も多いのではないでしょうか。上司に振り回される状況を改善するのに有効な「ボスマネジメント」についてまとめます。
ボスマネジメントとは
マネジメントは上司が部下に対して行うものですが、「ボスマネジメント」はその名の通り、「ボス=上司」をマネジメントする手法。仕事の目標を達成するために、部下の立場から上司に能動的に働きかけることを指します。
ボスマネジメントの目的
職場の人間関係は、多くの人にとって悩みの種の一つです。とくに上司は仕事を進める上で無視できない存在であるため、関係性に悩むケースは少なくありません。無理難題を上司から押し付けられたり、納得の行かない指示をだされたりすると、「この上司とは合わないな……」と疲れてしまう人もいるでしょう。
ボスマネジメントの目的は、上司との協業をスムーズにしたり、コミュニケーションを円滑にしたりすることです。部下は、上司に戦略的に働きかけるボスマネジメントを行うことで、上司との関係性や状況を良好なものにできます。たとえば、自分の苦手業務や不得意な分野を上司にあらかじめ共有し、必要なサポートを分かりやすくしておくことは、ボスマネジメントの一例といえます。
ボスマネジメントの目的
- 上司との協業をスムーズにする
- 仕事をすすめやすくする
- コミュニケーションを円滑にする
- 上司からの積極的な支援を引き出す
- 上司との信頼関係を強固なものにする
ボス=上司の役割
「上司が自分をサポートしてくれない」「部下の意見に耳を傾けない」などの不満を抱えたままでは、上司が仕事上の「障害」に思えてしまいます。しかし、本来上司は部下の力を引き出し、チームや組織の成果を最大化させるべき存在です。
上司には、以下の七つの役割があります。この役割は、部下にとっては便利な「機能」です。仕事ができる人ほど、上司との関係性が良好であり、上手にサポートを引き出しています。
【上司の機能 その1】
キャリア・コーチ
上司は、部下の「こうなりたい!」を実現するための相談相手です。会社で働いていると、「いつか開発の仕事をしたい」「現場の仕事に携わりたい」など、仕事の目標が見えてきます。キャリアプランについて、一番の相談相手となるのは上司です。上司にキャリアプランを理解してもらうことで、研修・育成・人事配置などにおいて支援を期待できます。
【上司の機能 その2】
アセッサー
部下を評価するのは、上司の重要な役割です。アセッサー(評価者)としての機能を上手に活用すれば、部下が納得のいく評価を行ってくれます。アセッサーの機能を活用するには、仕事で出した成果をきちんと上司に報告する必要があります。
【上司の機能 その3】
トラブルシューター
仕事のトラブルで上司の助けが必要になるときもあります。例えば先方に謝らなければならないとき、上司が同行してくれるかどうかで事態は変わります。トラブルシューターとして上司に気持ちよく働いてもらうには、日頃からの関係作りが重要です。
【上司の機能 その4】
スタンパー
上司の承認や同意は、仕事を効率的に進めることを助けてくれます。「〇〇部長にもうOKをもらっている」という一言は、チームやメンバーを納得させるのに有効です。
【上司の機能 その5】
ハイパー・プロフェッショナル
上司は業務経験や知識など、部下に足りない多くのものを持っています。また、その役割は、持っているものを部下に伝授し育てること。部下には上司から積極的に学ぶ姿勢が求められます。
【上司の機能 その6】
コ・ワーカー
プレイングマネージャーの多い日本企業では、上司が共に仕事をする同僚(コ・ワーカー)であることが少なくありません。上司は、できない仕事を代わりにやってくれるパートナーといえます。
【上司の機能 その7】
ネットワーカー
仕事でなにかを成し遂げる上で、人脈は大きなポイントです。上司の役割を活用すれば、仕事上必要な人脈を広げることができます。
マネジメントのメリット、デメリット
ボスマネジメントは、仕事をスムーズに進める上で、部下・上司ともにメリットがあります。一方、ボスマネジメントにこだわるあまり、生じるデメリットに注意が必要です。
メリット
部下側のメリット
ボスマネジメントによって、部下は上司の七つの機能を上手に活用し、仕事で必要なサポートを引き出すことができます。迅速な決裁やトラブル時のフォローなどにより業務が進めやすくなるほか、成果を公正に評価してもらえるようになり、望むキャリアプランへのサポートも得られます。
上司側のメリット
メリットを得るのは、ボスマネジメントを行う部下だけではありません。マネジメントを行う上司は、しばしば孤独に悩まされています。共通の目標に向かって仕事に取り組み、成果を出す部下は、上司からすると頼もしい存在でしょう。
ボスマネジメントを行い上司と良好なコミュニケーションをとっている部下は、上司が現場の状況を把握する上でも効果的な存在です。部下のサポートが必要な分野やフォローが求められる点について、部下自身が積極的に開示してくれるため、マネジメントに活用できます。結果として、上司のマネージャーとしての評価が上がります。
デメリット
では、ボスマネジメントのデメリットはなんでしょうか。
部下側のデメリット
部下にとってのデメリットは、そもそもボスマネジメントを行うのが大変という点です。上司と戦略的にコミュニケーションをとるうえで、部下本人にもスキルが求められます。経験が浅い人、年次が若い人は、ボスマネジメントの重要性はわかっていても、行うこと自体が大変で、うまく効果が得られないかもしれません。
上司側のデメリット
上司側のデメリットとして、上手にボスマネジメントを行う部下は先回りして上司に必要な情報を提供してしまうため、マネジメント能力が育たなくなる可能性があります。
また、部下がボスマネジメントを「ボスを操る手段」と捉えてしまうと、上司と部下の信頼関係がこじれてしまうリスクもあります。
【まとめ】
- ボスマネジメントは、部下が行う上司との戦略的な関係作り
- ボスの機能をうまく活用することで、部下は仕事をスムーズに進められる
- ボスマネジメントには、コミュニケーションスキルなど部下本人の力量が必要
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!