職場のモヤモヤ解決図鑑
【第12回】資格取得やスキルアップ研修……社員のキャリア開発支援、どんなものがある?[前編を読む]
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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吉田 りな(よしだ りな)
食品系の会社に勤める人事2年目の24才。主に経理・労務を担当。最近は担当を越えて人事の色々な仕事に興味が出てきた。仲間思いでたまに熱血!
キャリア開発支援の導入について、部長から前向きな反応をもらった吉田さん。同期からは、「部署移動」や「資格補助」などさまざまな要望が出てきますが、すぐに手を付けられるとは限りません。会社が行うキャリア開発支援には、どんな方法があるのでしょうか。
キャリア開発の手法、どんなものがあるの?
キャリア開発支援では、社員個人のスキルアップだけではなく、本人のキャリアに対する考えを深掘りしたり、職場と望むキャリアの方向をすり合わせたりして、キャリアデザインを社員自身が持つことが大切です。そのために会社ができる支援は、研修・面談、そして異動や配置転換があります。
1 )キャリア研修
キャリア研修は、対象となる受講者の階層・年代・職種に合わせて目的を設定しましょう。
例えば、若手社員向けの研修を行う場合、早期離職防止を目的に、成果のフィードバックや人事制度の説明を行い、これからのキャリア設計を手助けします。近年需要が高まる中高年を対象とした研修では、シニア世代のセカンドキャリアを見据えた支援が必要でしょう。
女性社員が対象のキャリア研修は、仕事を継続してスキルアップするための社員の経験談・会社が用意する支援策・キャリアの選択肢の情報提供が役立ちます。
このように個人の状況に応じた研修があることで、社員はキャリアの選択肢を具体的に描けるようになります。
また、育休・時短といった子育て期に関連する制度・施策はキャリアプランの設計に大きくかかわります。こうした情報は、属性を限定せず社員に伝えることで、多様な働き方を広める契機になります。
このように個人の状況に応じた研修があることで、社員はキャリアの選択肢を具体的に描けるようになります。
また、育休・時短といった子育て期に関連する制度・施策はキャリアプランの設計に大きくかかわります。こうした情報は、属性を限定せず社員に伝えることで、多様な働き方を広める契機になります。
2 )キャリア面談
キャリア面談では、上司や人事とともに、社員がキャリアプランについてすり合わせを行います。自らのキャリアについて話すことで、考えを整理する機会にもなります。
キャリア面談では、会社が情報を提供する場としても重要です。キャリア形成に必要なスキルや経験、各職種や階層で期待されている働き方など、社員が希望するキャリアプランをかなえるためにクリアしなければいけない課題や、求められている経験を具体的に掲示できるとよいでしょう。
3 )異動や配置転換
研修と面談のほか、社員が思い描くキャリアプランを実現させるのが異動や配置転換です。
異動や配置転換には、人事が人事権を行使する通常の異動だけではなく、社員から希望を掲示する社内公募制度や社内FA制度があります。こうした公募は、プロジェクトや部署ごとに人員募集をオープンにし、挑戦する機会を社員に公平に与えます。
人事側で異動を決定する場合でも、自己申告制度で社員の希望を集めていると、配置転換の参考にできます。人事育成計画に基づいて定期的に部門間・部門外に異動するジョブローテーションでは、社員が自らの適材適所を知り、キャリアプランを立てる際に役立つ効果もあります。
キャリア開発で申請できる助成金
キャリア開発で研修などを実施する際、条件を満たせば助成金の活用も可能です。
正社員のキャリア開発で活用できる『人材開発支援助成金』
厚生労働省の人材開発支援助成金は、人材育成の訓練をサポートする助成金です。正社員に対する職業訓練等のOFF-JT(研修・訓練)とOFF-JT&OJT(実地訓練)が支給対象です。資格試験の受験料や外部の講演会参加は助成金の対象にはなりません。
非正規雇用の社員のキャリア開発は『キャリアアップ助成金』
有期契約労働者など、非正規雇用従業員のキャリアアップを促進するため、正社員化・処遇改善の取り組みをした事業主に対して助成される制度です。
- 【参考】
- 厚生労働省:キャリアアップ助成金
キャリア開発で頼りになるキャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントとは、職業能力開発に関する知識を有し、ライフステージにあわせた支援や企業内のキャリア形成支援制度の整備などを専門とする人物です。2016年より、国家資格に認定され、人事のキャリアアップとして、資格を取得するケースもあります。
近年では、職業能力開発促進法において社内でキャリア開発を促進するための『職業能力開発促進者』の設置が努力義務となるなど、制度としてもキャリア開発の機会を企業が用意する流れが高まっています。
キャリアコンサルタントは、こうした職業開発促進者に適任です。また、前述した人材開発支援助成金の利用の際も職業能力者の選任が求められるなど、キャリア開発の専門的知識を有した人物は、今後も企業内で求められるでしょう。
【まとめ】
- 企業のキャリア開発には、職種・階層ごとの研修制度や異動・配置制度を検討
- 従業員がキャリアステップを描く材料になる情報提供が重要
- キャリア面談を実施する管理職には、部下の育成に必要な能力開発研修を
- 助成金やキャリアコンサルタントをうまく活用しよう
参考書籍
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働くひとのためのキャリア・デザイン
著者 : 金井壽宏
出版社 : PHP新書
編集部コメント : 自分自身のキャリアを考えるうえでおすすめの一冊。
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企業内キャリアコンサルティング入門
個人の気づきを促し、組織を変える
著者 : 浅川 正健
出版社 :ダイヤモンド社
編集部コメント : キャリアコンサルティングの導入を考える企業の人事担当者はもちろん、部下とのコミュニケーションに悩む管理職、組織を活性化させたい企業経営者に多くのヒントを与える一冊。「HRアワード2020」書籍部門入賞。
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「働く居場所」の作り方
あなたのキャリア相談室
著者 : 花田光世
出版社 : 日本経済新聞出版
編集部コメント : キャリア開発の第一人者である花田光世氏が、職に不安を抱くすべての人にアドバイス!
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キャリア開発論―自律性と多様性に向き合う
著者 : 武石 恵美子
出版社: 中央経済社
編集部コメント : 自律性と多様性をキーワードに、キャリア開発の基礎的な理論を解説した学術書。雇用形態、子育てや介護といったテーマ別の課題や傾向も記されています。一歩踏み込んでキャリア開発支援を学びたい人に。
「キャリア開発」は対象範囲が広く、その手法もさまざま。「大切なことだとは認識しているが、何から取り組めばいいのかわからない」という声は少なくありません。他社の具体的な施策や、実践のポイントを学ぶことで、自社の今後のキャリア開発支援に活かせます
キャリア開発 ヒントがみつかる 企業事例6選│無料ダウンロード - 『日本の人事部』
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!