人事マネジメント「解体新書」第53回
2013年 新卒採用の動向と対策(前編)
~どうなる?2013年新卒採用の見通し
2013年の新卒採用は、日本経団連の倫理憲章によって、例年より2ヵ月遅れて2011年12月にスタートした。これにより、多くの企業が採用戦略の見直しを迫られることになった。まずは、2013年新卒採用の見通しはどうなっているのか、データを中心にその動向を見ていくことにしよう。
※『日本の人事部』では本記事を皮切りに、講演、勉強会、メルマガ、記事など、さまざまな形で「新卒採用」に関する情報を継続して発信して参ります。今後の展開にどうぞご期待ください。
景気動向に左右される可能性も、10.4%が「増える」見通しを示す
2013年に入って、株価は回復基調になってきたものの、依然として企業の経営を取り巻く環境には不透明感がつきまとっている。そのような状況下、企業は新卒採用についてどのような見通しを持っているのだろうか。
◆2年連続で「増える-減る」がプラスに
リクルートのワークス研究所では5年前から、「ワークス採用見通し調査」を発表している。以下、2013年の新卒採用に関する主要な結果について、見ていくことにしよう。
まず、2013年卒者の採用見通し(大学生・大学院生)については、2012年卒より「増える」が10.4%となり、「減る」6.4%を4.0ポイント上回る結果となった(図表1)。この傾向は2年連続で、調査を開始した5年前から見ていくと、2010年からは上向き傾向となっている(図表2)。しかしながら、「変わらない」が50.0%と半数、また「わからない」も25.1%と4社に1社を占めており、新卒採用市場は今後の景気動向に大きく左右される可能性も少なくない。
◆大企業ほど、新卒採用に意欲的
次に、従業員規模別に採用見通しを見ると、いずれの規模でも「増える」が「減る」を上回っている。この「増える-減る」のポイントは、規模が大きくなるに従って大きくなっており、2000~4999人で8.4ポイント、5000人以上では12.9ポイントに達している(図表3)。大企業ほど、新卒に対して強い採用意欲を持っていることが分かる。
では、業種別ではどうだろうか。四つの大分類で見ると、全ての業種で「増える」が「減る」を上回っている。特に、流通業では「増える」14.4%と、他の業界と比べてその割合の高いことが目立つ(図表4)。また、「増える」の割合を細かな業種分類でみると、飲食サービス業(20.8%)や小売業(17.9%)では2割近い企業が「増える」と回答している。
ちなみに、「増える-減る」のポイントが大きいのは、飲食サービス業(16.9%ポイント)や情報通信業(9.8ポイント)など一部のサービス・情報業や、小売業(12.3ポイント)、卸売業(6.6ポイント)といった流通業であった。
◆2012年卒と比べ、明るさが見えてきた…
ここまで見てきた採用見通しの概況から言えることは、まず、景況感が回復してきたことで、大企業の新卒採用活動に積極的な動きが出てきたことである。また、サービス業や小売業などは現場での人材不足や、他業界と比べて「採用力」が劣ることなどから、以前から新卒採用数を増やす傾向にあった。また、最近好調のスマートフォン関連の企業などで、採用数を増やす傾向があることを付け加えておこう。
結論から言えば、依然として景気の先行きは不透明だが、2013年の新卒採用の全体的な見通しは、まだら模様の部分はあるものの、2012年卒と比べて明るさが見えてきているように思われる。
バブル経済が崩壊した後、新卒採用を停止・抑制したことにより、人材構成に歪みが生じ、その後の事業展開で支障をきたしたり、マネジメントを担う人材が不足したりするなど、組織上の問題が表面化してきた。その教訓があるからこそ、たとえ人数を絞ったとしても、大企業を中心に、新卒採用を定期的に行うことの重要性を強く感じていのであろう。
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