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人事マネジメント「解体新書」第95回
職場の「ハラスメント」(パワハラ・モラハラ)の予防・対処法
~基礎知識から、予防・再発防止策までのポイントを解説(前編)~

近年、職場における「いじめ」や「嫌がらせ」などをはじめとするさまざまな「ハラスメント」が急増し、企業の人事管理上、深刻な問題になっている。典型的なケースとしては、「セクハラ(セクシャルハラスメント)」「パワハラ(パワーハラスメント)」「モラハラ(モラルハラスメント)」が挙げられるが、ハラスメントが起きた時に迅速かつ適切な対応を怠ると、企業としてさまざまなリスクを抱えることになる。また、対応を誤った場合(裁判で敗訴した場合など)のダメージは、非常に大きなものになることも予測される。そこで今回は、最近特にクローズアップされることの多い「パワハラ」「モラハラ」に焦点を当て、「前編」では基礎知識として、ハラスメントの現状と企業が負うリスクについて紹介する。

「ハラスメント」とは何か?

◆「ハラスメント社会」の到来

ハラスメントとは、広義には「人に対するいじめ・嫌がらせ」のことである。ストレス社会を背景に、ハラスメントは社会生活のさまざまな場面で見られる現象である。例えば、学校における「いじめ」、大学の研究室などでの「アカデミックハラスメント(アカハラ)」、新卒学生の就職活動場面での「オワハラ」、家庭内の「ドメスティック・バイオレンス(DV)」、受動喫煙問題としての「スモーク・ハラスメント」などはその代表例だ。その他にも、子どもへの虐待、近隣住民への嫌がらせ、モンスター・ペアレンツ、ストーカー行為、インターネット上の誹謗・中傷など、ハラスメント行為はいろいろな形で社会生活の中に現れている。まさに現代は、「ハラスメント社会」であるといっても過言ではないだろう。

職場で問題となるハラスメントとしては、「セクハラ(セクシャルハラスメント)」「パワハラ(パワーハラスメント)」「モラハラ(モラルハラスメント)」の三つが代表的である。

【職場における「ハラスメント」】

セクハラ 相手を不愉快にさせる性的な色彩を帯びた言動によるもの
【具体例】
・性的な事実関係を尋ねること
・性的な内容の情報を意図的に流布すること
・性的な関係を強要すること
・必要なく身体に触れること
・わいせつ画面を配布すること など
パワハラ 職権などのパワーを背景に、上司が部下に対してその権限を濫用するなどして引き起こされるもの
【具体例】
・暴行・障害(身体的な攻撃)
・脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
・隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
・業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
・業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
・私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害) など
モラハラ 上司・部下、男女間にかかわらず、言葉・態度・文書などにより、陰湿に(静かに、じわじわと)繰り返される行為・嫌がらせ全般のこと(精神的ないじめ)
【具体例】
・継続的に無視した行動を取る(仲間外れにする)
・見下した態度を取る
・必要な情報を与えない
・聞こえるように嫌味・悪口を言う
・本人が気にしていることを揶揄する
・わざとらしい行為をする
・文句でもあるかのような行為をする
・言われたことをしない など

一般的に、セクハラは分かりやすい行為であるが、パワハラとモラハラは、その違いがやや分かりにくいかもしれない。そもそもパワハラは和製英語であり、法律の条文において「パワーハラスメント」という概念を整理したものは存在しない。一方、モラハラは海外で生まれた言葉で、1990年代の後半にフランス人の精神科医であるマリー=フランス・イルゴイエンヌによって提唱された概念である。パワハラとは力関係や優位性を利用して、身体的・精神的に苦痛を与えること。それに対して、モラハラは力関係や優位性を特に利用することなく、道徳(モラル)的に言葉や態度、身振りや文書などによって相手に精神的な苦痛を与えることである。例えば、継続的に無視したり、見下す態度を取るといった、言わば“精神的暴力”であることがモラハラの特徴である。

また、ハラスメントは発生に関して“密室性”を帯びることが多く、人事がその実態をつかむのはなかなか容易ではない。しかし、問題が大きくなってからでは手遅れになってしまう。その意味でも、職場で日々発生するハラスメントの問題をいかに早期に発見し、適切に対応できるかが「ハラスメント社会」を迎えた現在、企業の大きな課題となっている。

なお、セクハラについては「男女雇用機会均等法」およびその指針上で、企業が取るべき措置について、かなり明確なガイドラインが確立している。そのため、今回はセクハラ以外のハラスメント、すなわちパワハラ、モラハラに焦点を当てて、解説していくことにする。

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この記事ジャンル ハラスメント

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企業が実施すべきパワハラ防止対策
パワハラが起こりやすい職場環境とは
パワハラ防止法における企業義務
プレ・マタハラ
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ケアハラスメント(ケアハラ)
カスハラ
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