ハラスメント対策の最前線!
実態調査から見る、ハラスメントの現状と企業に求められる対応
神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科 准教授
津野 香奈美さん
2020年6月1日に施行された「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」。職場におけるパワーハラスメントの防止措置が義務づけられ、2022年4月からは中小企業も義務化の対象となりました。企業はパワハラ、セクハラなどをどのように予防し、実際に起こったハラスメントにどう対応すればいいのでしょうか。厚生労働省「ハラスメント実態調査」検討会委員で職場のハラスメント問題に詳しい、神奈川県立保健福祉大学大学院の津野香奈美さんにお話をうかがいました。
- 津野 香奈美さん
- 神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科 准教授
つの・かなみ/東京大学大学院医学系研究科博士課程修了後、和歌山県立医科大学医学部衛生学教室助教、厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」検討会委員、米国ハーバード大学公衆衛生大学院客員研究員を経て現職。専門は産業精神保健、社会疫学、行動医学。主な研究分野は職場のハラスメント、人間関係のストレス、上司のリーダーシップ・マネジメント、レジリエンス。日本産業ストレス学会理事、日本行動医学会理事、労働時間日本学会理事、株式会社クオレ・シー・キューブ顧問、相模原市参与を務める。
精神的な攻撃・過大な要求など、ハラスメントの内容は多様かつ複雑に
日本企業におけるハラスメントの現状をどのようにご覧になっていますか。
厚生労働省が2020年度に実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間にパワハラを受けた割合は全体の31.4%(男性33.3%・女性29.1%)、セクハラは10.2%(男性7.9%、女性12.8%)となっています。
ハラスメントを受けている人は年々増加している印象がありますが、2016年度に行われた同様の調査結果と比較してみると、パワハラやセクハラを受けた人の割合自体は、実はそう変わっていないんです。
ただ、時代と共にハラスメントの内容は変わっています。たとえばパワハラであれば、昔は殴る・蹴る・物を投げるなどの暴力行為が多かったのに対して、今は精神的な攻撃や過大な要求など、それがハラスメントなのか、行き過ぎた指導なのか、一見判断しにくいようなケースが増えています。
実際に、企業にハラスメント対策における課題を聞くと「ハラスメントかどうかの判断が難しい」と回答する人が多い。被害者の割合はそう大きく変わっていないけれど、ハラスメントの内容が変わっているというのが、私の見立てです。
ハラスメントの内容が変わってきているのは、以前は被害者自身がハラスメントだと認識できていなかったケースでも、時代と共にハラスメントだと自覚できるようになり、問題が顕在化しやすくなったとも言えるのでしょうか。
そうですね。とくにその傾向が大きいのがセクハラです。セクハラは圧倒的に女性の被害者が多いイメージがありますが、実は男性の被害者と女性の被害者の割合の差は「5%」ほどしかありません。2020年の厚労省ハラスメント調査では、女性の「12.8%」、男性の「7.9%」がセクハラを受けたことがあると回答しています。昔は男性側がセクハラだと認識していなかったケースでも、現代ではセクハラだと受けとる人が多いのだと思います。
同調圧力? 失敗が許されない?
日本企業にひそむ構造的ハラスメント
職場でハラスメントが起きる理由について教えてください。
ハラスメントを行っている「個人」が要因になるケースと、「組織の構造」が要因になるケースによって、ハラスメントが起きる理由も変わってきます。「同調圧力」という言葉が近年よく聞かれますが、とくに日本は、構造的なハラスメントが多い印象です。雇用の流動性が低いため、それぞれ職場に独自のカラーがあり、そのカラーになじめない人を排除するという力が、働きやすいのだと思います。
ハラスメントが、組織文化や組織風土と密接な関わりがあることは、さまざまな研究で明らかになっています。職場のハラスメント実態調査では、ハラスメントが起きやすい職場の特徴として、「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」「遵守しなければならない規則が多い/高い規律が求められる」「従業員間の競争が激しい/個人業績と評価の連動が徹底している」「職場の雰囲気がくだけすぎている/上司が寛容すぎる」「従業員間に冗談、おどかし、からかいが日常的にある」が見られました。
「ハラスメントを行う人」「ハラスメントを受けやすい人」の特徴には、どんなものがありますか。
ハラスメントは自身のパワーを利用して行うものですから、ハラスメントを行う人は、「職位が上の人」が圧倒的に多いです。一般的には行為者のおよそ7割が上司であるといわれています。
反対にハラスメントを受けやすい人は、社会全体で見ると「若年者(29歳以下)」「高卒未満」「世帯収入250万円未満」に多く、雇用形態別で見ると職場でパワーを持ちにくい、あるいは疎外感を抱きやすい「派遣社員」がハラスメントを受けやすいことがわかっています。
ハラスメントを行うリーダーに共通する特徴はあるのでしょうか。
感情知能(エモーショナル・インテリジェンス)といわれる「自分の感情をきちんと認知して、適切に対処したり調整したりする能力」が低い人というのが、まずあります。欧米では管理職登用の際に、感情知能をスクリーニングしたりするのですが、日本企業ではそれほど加味されず、感情のコントロールが下手な人が上司となり、パワハラの原因になっています。
また、上司のリーダーシップの形態も、組織のハラスメントと深く関わっています。「専制型」、いわば専制君主のように人を支配して、恐怖で動かすタイプのリーダーがいる組織はやはりハラスメントが生まれやすい。ただ、反対にまったく何もしない「放任型」の上司がいる組織も、ハラスメントが発生するリスクが高いんです。
上司が「放任型」だとなぜハラスメントが起きやすいのかと言うと、適切な指示がないことで職場が不安定になったり、従業員同士の葛藤やぶつかり合いが増えたりすることが要因です。また、部下が「上司は自分に関心がないのではないか?」「期待されていないのではないか?」といった不安や不満を抱きやすくなり、結果的に「ハラスメントを受けている」と感じやすくなるということもあるでしょう。
放任型のリーダーがいる組織でハラスメントが生まれやすいというのは意外でした。
今はハラスメントに対する目が厳しくなっていますから、「部下と関わるのを躊躇する」という上司も少なくありません。積極的に関わると、ハラスメントだと受けとられてしまうかもしれない。そんな恐れから、放任になってしまっている方もいます。
実際、ハラスメント研修後に「最近、何をしてもパワハラと言われてしまうので、僕はもう部下と関わらないことにしたんです」と満面の笑みで言われたこともあります。リーダーがハラスメントを恐れるあまり、マネジメントを放棄してしまっているわけです。
ただ、これはハラスメント研修などの教育を行う側にも問題があると思っています。研修のほとんどは、「こういう行為はハラスメントに当たります」「こんな発言は避けましょう」など、禁止事項ばかりを教えているからです。これはダメ、あれはダメと言われ、上司は追いつめられています。自分が上司から教わった方法は通じず、どうすればいいかわからないという人も多い。
「この行為や発言は、ハラスメントにあたるのでやめましょう」と言うのであれば、同じような状況になったときに、どう声をかけ、どう行動すればいいかという「代替案」まで教える必要があります。禁止事項と代替案をセットで提示することを、研修担当者は肝に銘じてほしい。また、伝えるだけではなく、実際にやってもらうことも重要。実際にできるようになるには、ある程度の練習も必要だからです。
「管理職」もハラスメントを受けている
津野先生は「ハラスメントは職場の誰もが受け得る問題だ」とおっしゃっています。
通常、ハラスメントは権力やパワーを持つ者は受けにくいと言われています。たとえば「管理職はハラスメントを受けにくい」というのは世界のスタンダードです。しかし日本だけが例外で、実は管理職自身もハラスメントを受けています。
先ほど、雇用形態別に見ると、職場では「派遣社員」がハラスメントを受けやすいとお話ししました。しかし同じ調査で、パワハラを受けている管理職の割合を見てみてください。パワハラ経験者の割合は男性管理職が35.1%、女性管理職が38.1%となっています。派遣社員と同じレベルで管理職も被害を受けているんです。
誰からパワハラを受けているのかというと、自分よりも職位の高い管理職や役員、つまり自身よりさらにパワーを持つ人からハラスメントを受けていることがわかっています。
社内研修などで「ハラスメントをしないように気をつけましょう」と言われている管理職自身が、実は被害者にもなっているわけですね。
そうなんです。ハラスメント研修の受講対象者は新任管理職だけで、経営幹部や役員クラスには実施しない企業もあります。すると若手管理職はまさに板挟みです。下にはパワハラをしないよう求められるのに、上からはパワハラをされるという、非常につらい状況に置かれてしまいます。
上層部も含めたハラスメント教育が必須ですし、ハラスメントは職場の誰もが受け得る問題であることを、全社で認識する必要があります。
また、管理職はカスタマーハラスメント(カスハラ)の被害を受けやすいこともわかっています。管理職向けの研修では「ハラスメントをしないために」というのはもちろん、「自分の身をどうやって守っていくか」も学べるといいでしょう。
カスハラにより社員にどんな問題が発生するのか、カスハラを受けた社員を上司や人事はどのようにサポートすべきかをお聞かせください。
カスハラはここ数年で出てきた概念で、調査結果が豊富にあるわけではありません。ただ、2020年度の厚生労働省の調査によると「パワハラやセクハラと同様の心身への影響がある」という結果が出ています。顧客などからの著しい迷惑行為を受けた際の心身への影響としては、「怒りや不満、不安などを感じた」の割合が最も高く、次いで「仕事に対する意欲が減退した」となっています。
カスハラが起きたときの対応としては、複数人で駆けつけるというのが原則です。カスハラを受けている人を一人にしないことが大切です。他のハラスメントと同じで、カスハラもパワーがある人がない人に対して行うものですから、対応する側のパワーを増強する、例えば複数人の男性で対応するのが効果的だと言われています。
カスハラを受けたあとも、適切なケアやサポートが受けられるように健康管理部門と連携したり、すぐに産業医や保健師などの産業保健専門職につなげられる体制をつくったりと、会社として従業員を守る姿勢を打ち出すことが重要だと思います。
日常のささいなストレスをなくしていく業務改善がカギに
職場でハラスメントを発生させないためには、どんな対策が有効でしょうか。
組織として取り組むのであれば、二つの対策が有効です。一つ目は「ハラスメントを絶対に許さない」という断固たる姿勢を打ち出すこと。トップからメッセージを発信することも重要ですし、なによりも大きなメッセージとなるのは、ハラスメント加害者に対して適切な処分をすることです。
「職場にハラスメントをやめない人がいます。どうすれば変わってもらえますか?」という質問を受けることがよくあります。そんなとき私は、「適切な処分をしてください」とお伝えするようにしています。処分もせずに変わってもらうことは、やはり難しい。社内でハラスメント規定を定めて、周知し、ハラスメント行為をした人には懲戒処分をする。まずは、ここからだと思います。
二つ目は、ハラスメントを生み出す職場環境要因をなくす努力をすること。先ほどハラスメントが起きやすい職場の特徴を挙げましたが、たとえば業績至上主義の社風で、売上だけで評価が決まるとなれば、上司は手段を選ばずに達成しようとします。ある意味、当然の結果です。パワハラを許すような人事評価をしないと決めることも、ハラスメントの発生要因をなくすための努力だといえます。
ハラスメントを生まない組織風土に改革していくということでしょうか。
組織風土を改革できれば一番良いのですが、風土は、そう簡単に変わるものではありません。そのため、まずは「業務改善」から取り組むことをお勧めします。というのも、さまざまな研究結果から、ストレスが高い職場ではハラスメントが起きやすいことがわかっているからです。
たとえばあまりに業務量が多かったり、情報の共有がスムーズにされない職場だったり、お互いの役割が曖昧だったり、個人の負担が大きかったり。このような職場では従業員の余裕が失われるので、他者に対しても余裕のある対応ができません。日常のささいなストレス、一つひとつの業務のイライラを解消していくことが、職場全体のストレス度を下げ、ハラスメント予防に役立ちます。
2020年6月に施行されたパワハラ防止法で、企業に対してパワハラ対策のための相談窓口設置が義務化されました。相談窓口をうまく運用するにはどうすればいいのでしょうか。
相談窓口は運用が難しく、相談窓口を設置したが相談者がまったくこない、というケースも少なくありません。厚生労働省の調査によると、パワハラ被害を受けた人のうち、社内の相談窓口を利用した割合はわずか5%でした。
なぜ、パワハラ被害者は相談窓口を利用しないのでしょうか。それは、企業で設置している相談窓口の多くが、相談するにはハードルが高い仕組みになっているからです。たとえば相談窓口の電話番号が書かれているけれど、どこにつながるのかが不明確なケース。人事部の代表番号が書かれていて、誰が電話をとるかはかけてみなければわからないといった企業も多いですね。
言うまでもありませんが、誰が電話に出るかもわからない状態では、安心して相談できません。相談窓口は対応者を明確にし、対応者の顔や名前、所有資格などを周知するといいでしょう。
また、安心して相談できる環境の整った部屋を用意していないケースもNGです。その都度、会議室をとるという方法ではなく、従業員の往来が少ない奥まった部屋や、ハラスメント以外の相談者も使用する部屋など、安心して入室でき、プライバシーが守られる場所を確保する必要があります。
ハラスメント相談窓口という名称についても、ハラスメントに限定することで相談のハードルが上がってしまう可能性がありますから、「職場のお悩み相談室」などに名称を変更するのも一案です。
そして何より相談窓口をはじめ職場のハラスメント防止対策を、従業員に周知することが重要です。職場で行われている対策について従業員の7割以上が知っていると答えた企業では、ハラスメントの発生率が低いという調査結果もあります。「当社ではこのような対策をしています」「相談窓口を担当しているのは○○です」「これまでにこのような相談があり、こんなふうに解決しました」などと情報発信を続けていくと、相談窓口への信頼度や会社への信頼度があがり、「ハラスメント」になる前の段階で相談が寄せられて問題を解決できるようになります。
実際にハラスメントが起こってしまったときの四原則
人事や上司が、ハラスメント被害者から相談を受ける際、ハラスメントかどうかを判断するのが難しい場合もあるかと思います。どのような心構えで対応すればいいのでしょうか。
ハラスメント相談を受ける側になったときには「決めつけない」「2次ハラスメントをしない」など、知っておくべき原則があります。ただ、最も大切なのは「ハラスメントに該当するかどうかに捉われないこと」です。
パワハラ防止法が施行され、パワハラの定義が周知されたことで、企業における対策のモチベーションは高まりました。しかし、国が定めた定義にあてはまらないと無罪放免になってしまう危うさも、同時に生まれてしまったように思います。
たとえ法律の定義に当てはまらなかったとしても、あきらかに相手を傷つけている行為であったり、職場環境を悪化させている言動があったりした場合は、社内ルールに則って適正に処分されるべきです。そのためにもパワハラ防止法とは別に、社内において何が許されて、何が許されないのかを明確にしておく必要があります。
そもそも、何のためにハラスメントを防止するかというと、皆がいきいきと安心して働ける職場をつくるためです。ある行為がハラスメントか否か、白黒つけるのがゴールではありません。「従業員が生産性高く安心して働ける職場の実現」にとってOKな言動なのかNGな言動なのかの基準で考えることが大切であり、懲戒処分対象とならなくても文書で注意したり、行為者の行動変容に時間をかけたりする必要があります。最終的な目的を忘れず、対応することが大事です。
実際にハラスメントが起こってしまった場合、企業に求められることとは何でしょうか。
私が考えるハラスメント対応の原則は四つあります。一つ目は、「被害者にメンタルヘルス不調が認められる場合は治療を優先すること」。ハラスメントが報告されると事実確認調査が行われます。この事実確認調査を心のダメージが大きい時期に行うのは、被害者にとって負担です。また、精神的に不安定だったり、被害妄想が出ていたりする時期にとられた調書は信用性が低いと見なされるケースがあり、被害者にとって不利益になります。メンタル不調が見られる場合は治療を優先し、体調が回復してから本人への聞き取りを行うようにしましょう。
二つ目は「ハラスメントの行為者と被害者を物理的に離すこと」。ハラスメント被害者の多くに、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に関連した症状が見られることがわかっています。ハラスメント被害が発覚した場合は一刻も早く、行為者と被害者を引き離すことが大原則です。指揮命令系統を変更し、事実確認調査が終わるまで行為者を自宅待機とすることをお勧めします。
三つ目は、ハラスメントが認定されたら「行為者を異動・処分すること」。行為者は管理職であることが多く、「行為者の代わりはいない」などと言って、被害者を異動させてしまうことがよくあります。しかし、これは「この会社では、管理職はハラスメントで処分されない」「この会社はハラスメント対策に本気ではない」という強烈なメッセージを発信していることと同義です。「行為者」を異動させることで、ハラスメント防止に対する組織の本気度を示すことができ、従業員に落胆や絶望感が広がるのを防ぐことができます。
四つ目は、「管理職に対して、いつ録音・録画されても良い状態で指導するように周知すること」。録音・録画・メールは、ハラスメントがあったかどうかを判定する最強の証拠です。逆に、ハラスメントをしていなければ、やっていないことを明確に証明するツールでもあるのです。これは管理職自身の身を守ることにもつながります。指示事項は口頭ではなくメールで行うなど、普段から記録を残す習慣をつけるといいでしょう。
リーダーに促すべきは、「自己理解と他己理解」
職場でハラスメントを起こさないために、職場のリーダーが注意すべきこと、行うべきことは何でしょうか。
リーダーに促すべきは、自己理解と他己理解に尽きると思っています。日本で起きている熱血上司型や専制型のパワハラは、上司の「こうすべき」という価値観に端を発しています。「こうすべき」という価値観が強ければ強いほど、それに合致しない部下にイライラしてしまう。それがハラスメントにつながっていくわけです。
まずは、リーダー自身が「自分はどんな価値観を持っているのか」「他人に対してどのような期待を持っているのか」を理解する必要があります。そして次に重要なのが、自分が大切にしている価値観を他人も同じように大切にしているわけではない、他人は別の価値観を大切にしていると学ぶことです。
たとえば上司層だけを集めて、自分が大切にしていることや、どんなときに怒りを感じるのかを考え、シェアします。すると意外なことに、近い世代でも「こんなに価値観が違うんだ」と驚くはず。この気づきが、とても重要です。ハラスメント研修では、自己理解・他己理解に焦点をあてたプログラムをぜひ実施してほしいですね。
職場でハラスメントを起こさないため、また、職場のリーダーを支援するため、人事部にできることは何でしょうか。
管理職に対して「パワハラをしないでください」と言うだけでは、パワハラは防止できません。組織の体制や評価基準がハラスメントを直接的・間接的に奨励していないかどうかをまず調べ、ハラスメントの発生要因をなくすために組織としてできることを一つずつ実行することをお勧めします。
加えて、ハラスメントをせずに、きちんと部下のモチベーションを高めながら成果を出している上司を適正に評価してほしいと思います。特に、部下の長所をのばす個別配慮型リーダーシップの上司のもとでは、パワハラが発生しにくく部下がメンタルヘルス不調になりにくいことが研究でわかっています。組織としてもこういった「良い上司」を奨励する仕組みを作ることが大切です。
パワハラ上司が働き続けられているということは、裏を返せば、会社がそのパワハラ上司を評価してきたということ。これからは、ハラスメントをする上司を一切評価しないようにするという方向転換が必要とされています。組織のルールが変わり、評価されるリーダー像が変わったとなれば、一人ひとりの意識も変わり、自然とハラスメントが起きにくい職場へと変われるはずです。
(取材:2022年5月16日)
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