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「プロ野球監督」に見る人材マネジメント術

スポーツジャーナリスト

二宮 清純さん

史上初のストライキや球界再編騒動に揺れた2004年の日本プロ野球。パ・リーグでは、近鉄バファローズとオリックスブルーウェーブが合併、東北楽天ゴールデンイーグルスという新しい球団も誕生することになりました。オリックス・仰木新監督や楽天・田尾新監督がどんな采配を振るうのか楽しみですが、スポーツジャーナリストの二宮清純さんによれば、米メジャーリーグの監督には「格付け」があると言います。たとえば、30億円の予算規模のチームが勝率6割の成績を残せば名監督、80億円のチームで最下位なら腕が悪い監督、という具合です。となると、さしずめ今年の日本のワースト監督は、大物選手獲得にあれだけ大金をはたいたのに3位に終わった巨人の堀内監督?それはともかく、プロ野球の監督は選手を適材・適所・適時に配置しなければならないという点で、一般企業の人事とよく似ています。二宮さんが語る野球監督の選手起用についての話は、企業の人材マネジメントの話に置き換えられるはずです。

Profile

にのみや・せいじゅん●1960年愛媛県生まれ。日本大学卒業。フリーランスのスポーツジャーナリストとしてオリンピック、米メジャーリーグ、プロ野球、サッカーワールドカップ、ボクシング世界戦などを取材し、新聞、雑誌、テレビなどで幅広く活躍。地域や住民を中心としたスポーツクラブづくりにも取り組む。主な著書に『スポーツ名勝負物語』『最強のプロ野球論』(ともに講談社現代新書)、『「超」一流の自己再生術』(PHP新書)、『野球と銀行』(木村 剛氏との共著、東洋経済新報社)、『勝者の組織改革』(PHP新書)など。ウェブマガジン「SPORTS COMMUNICATIONS」(http://www.ninomiyasports.com/)も発信。

「ヘッド・コーチ」ではなく「フィールド・マネジャー」

アメリカのメジャーリーグでは、監督のことを「フィールド・マネジャー」と呼ぶそうですが、他はサッカーもバスケットボールもアメリカン・フットボールも、監督はすべて「ヘッド・コーチ」です。この違いはどこから来るのでしょうか。

野球では、試合における戦術や戦略よりも、むしろ選手起用の巧拙に勝敗の大部分が委ねられているからだと思います。監督は、試合の中での選手の起用方法、すなわち「人材マネジメント」の技量が問われる。サッカーやアメリカン・フットボールの場合、監督は対戦相手に応じた戦術や戦略を練ることに時間をかけますし、試合中の選手交代の回数も限られています。野球では、ベンチ入りした20数人の選手全員が試合に出るケースもありますからね。

野球の試合の中でも「バントか強行か」「敬遠か勝負か」といった、監督の戦術が問われる場面はあります。でも、そんな場面は一試合でそう何度もあるわけではありません。それよりも先発ピッチャーを誰にするかとか、打線をどう組むか、リリーフは誰、代打は誰にするのか……そういった選手のマネジメントのほうに仕事の重きが置かれるんですね。他のスポーツの監督とは違って、野球の監督がフィールド・マネジャーと呼ばれるのは、そのような理由からだと私は理解しています。

野球の監督は選手起用の全権を握っているわけですね。

そうです。グラウンド内での選手の「人事権」については、監督の専権事項です。メジャーリーグの各球団にはゼネラル・マネジャー(GM)がいて、チームの総責任者ということになっていますが、そのGMもグラウンドの中のことには原則として口出しできません。ただ、GMはチームの予算の編成権や執行権を握っていて、監督を選ぶのもGMの仕事ですね。グラウンドの中と外に責任者がいて、その仕事の範囲がきっちり分かれているわけです。

日本のプロ野球で言うと、たとえば1995年のオリックスの仰木監督は、相手の先発ピッチャーに応じて打線を組み替える「猫の目打線」でパ・リーグ優勝を果たしました。フィールド・マネジャーの面目躍如と言えますね。

二宮 清純さん Photo

当時のオリックスで不動のレギュラーを張れるほど実力のある選手は、イチロー(現シアトルマリナーズ)と田口壮(現セントルイスカージナルス)ぐらいでした。となると、速球派の右ピッチャーと対戦するときはイチローと田口以外の誰を起用すれば打てるだろうかとか、技巧派の左ピッチャーならどうするかなどと、監督はあれこれ考えることになりますよね。仰木監督は、昨日大活躍した4番打者でも、相手の先発が替わった今日は平気でベンチに置いて代打に備えさせる、そんな選手起用をしてみせました。

固定メンバーを組めなかったという意味ではオリックスは戦力が整っていなかったわけですから、そういうチームが戦力の整った相手と同じやり方で戦っても勝てないでしょう。仰木監督の「猫の目打線」というのは、自分のチームの戦力を冷静に分析した結果のやり方であって、最初からやろうとしてやったのではないと私は思います。

「三原監督」と「落合監督」の人材マネジメント

「私はこういうチームをつくりたい」と就任会見などで言って、指揮を執る監督もいます。

そういう監督はだいたい失敗しますね。いまチームにどんな選手がいるか、それぞれの選手の特性は何か――ということも考えずに、「私はこれをやる!」と言い出す監督はフィールド・マネージャーとしては失格です。選手がいて監督がいるのであって、監督がいるから選手がいるのではない、ということです。

譬えるなら、野球の監督の仕事というのは、与えられた食材でどのような料理を作るか、という表現行為だと思います。監督が「こういう料理を作るんだ!」と決めたところで、食材がそろっていなければダメです。手元にレタスとピーマンとトマトとパセリしかないときだったら、野菜料理しかできません。その材料で肉じゃがを作ろうとしても無理。監督がいくら「こういうチームにしたい」と思っても、今いる選手の特性に合ったチームしかできないということです。

その意味ですごいと思うのは、三原脩(故人)さんですね。私は、日本プロ野球史上で最高の監督だと思います。どうしてかと言うと、たとえば西鉄ライオンズを率いて1956年~58年に3年連続日本一を達成したとき、チームは「野武士軍団」と言われました。大下弘さん、中西太さん、豊田泰光さん、稲尾和久さんといった個性派がそろっていて、自由奔放な野球で勝ち続けた。でも、その2年後、60年に大洋ホエールズを率いて日本一になったときは、秋山登さん、土井淳さんのバッテリーを中心に、近藤和彦さんとか近藤昭仁さんなど東京6大学出身の選手が多い、ソフィストケートされた守りのチームをつくった。西鉄と大洋は、チームカラーがまるで違っていました。

三原さんは「これだ!」というチーム作りをしなかったんですね。こっちのチームは肉料理に仕上げ、あっちは和定食というふうに、食材=選手に合ったチームをつくり上げて、最高の結果を残した。「打撃のチームをつくりたい」と思っても、強打者がいなかったらそれはできません。だけどもいいピッチャーがたくさんいたら、投手力を中心とした守りのチームを目指すべきでしょう。三原さんはそれが自在にできる監督でした。選手に合わせて特色あるチームをつくれる、そんな監督が「名将」だと私は思いますね。

2004年の監督の中では、就任1年目にしてセ・リーグ優勝の中日ドラゴンズ・落合監督が高く評価されています。故障のため3年間ほとんどマウンドに登っていなかった川崎憲次郎投手を開幕投手に起用したり、外国人選手の獲得やトレード補強などをしなかったり、これまでの監督だったらしないような手を打ちました。

二宮 清純さん Photo

失礼な言い方になるかもしれませんが、落合監督は私が考えていた以上にレベルの高いフィールドマネージャーでした。監督に就任早々、「戦力の補強はしない」と言い切ったでしょう。私は単に選手のモチベーションを高くするために言っているのかな、いずれ補強するんじゃないか、と見ていたのですが、そうではなかったんですね。落合監督は「今いる選手一人ひとりががんばることがチームを強くする近道であり、みんなが10%ずつでも成績アップしたら優勝できる」というふうに考えたのではないでしょうか。「補強はしない」「がんばったものにはチャンスを平等に与える」と監督が本気で言っていると知れば、一軍に定着できなかった若手も、出番が少なくなっていたベテランも発奮しますよね。前年のレギュラー選手だってうかうかできません。

現役時代に名を馳せた選手が監督になると、自分のやっていた野球を選手に押しつけることが多いんです。「オレがこうやって成功したんだから、お前たちも同じようにやれ!」と。するとほとんど失敗しますが、落合監督はそれもしなかった。「野球は監督ではなく選手がやるものだ」と言って。そんなこと当たり前なんですけど、その原則を踏み外さずに指揮が執れる、選手の特性を基にマネジメントができる人はそういませんね。三原監督や落合監督のように、いつも選手の側に立ってものを考えるのは、簡単そうでむずかしいことなのです。

2軍落ちを命じた選手を納得させられるか

落合・中日は西武との日本シリーズで先に王手をかけましたが、逆転され、結局50年ぶりの日本一のタイトルを逃しました。

西武ドームでのシリーズ第5戦、6対1で勝って王手をかけたとき、その後の第6戦、7戦は本拠地のナゴヤドームに戻ることもあって、中日が「絶対有利」と思ったファンも多かったでしょうね。でも、私はそう思わなかった。その第5戦直後の勝利監督インタビューで、落合監督が「らしからぬ」ことをしたからです。これが勝負の分かれ目になるかもしれない――そう直感した。

お立ち台の上で、大声援を受けて落合監督は、涙ぐんでいました。中日は王手をかけただけ、まだ日本シリーズを制したわけでもないのに……。落合監督の心に「ようやくここまできた」「こんなに多くのファンが応援してくれている」という感無量の思いがよぎったのでしょう。だが、まだ勝負はついたわけではない。あの場面で監督が感情をほどくのは早すぎる、ほどいてはいけなかったと私は思いました。

涙ぐんだ落合監督にスキが生じたというのは、厳しすぎる見方かもしれません。でも選手は監督を見ているものです。その場面を直接見ていなくても、監督の感情は何となく伝わります。逆に、西武の選手は「このまま負けてたまるか」と発奮したはずです。これで流れが大きく変わりました。50年ぶりの日本一に届かなかった大きな理由、それが第5戦で勝った後のインタビューにあったと私は考えています。

監督が変わることで選手は成績が上がったり下がったり、力を発揮したりできなかったりということもありますね。選手にとって「いい監督」とは、どのような監督でしょうか。

「いい監督とは?」と訊ねたら、どの選手も「自分を使ってくれる監督だ」と答えますね。選手はとにかく試合に出ないことには成績を残せないし、給料だって上がらないから、これは当然ですよね。

でも、なかなか出番を与えられない選手からも「この人はすごい」と思わせるのが、本当に「いい監督」でしょう。2軍落ちを命じる選手とかレギュラーを外す選手を納得させられる――そういう監督が率いるチームは勝てます。選手の納得の前提には監督の公平性があります。2軍でもがんばればそれを監督が見ていてくれて、またチャンスを与えてくれるという信頼の糸がつながっていなければならない。そういうチームは新陳代謝が激しく、不満がくすぶるようなことがありません。

二宮 清純さん Photo

それに、「いい監督」は「先見力」がありますね。将棋でも、1手先より2手先、2手先よりも3手先まで読める棋士が強いでしょう。来年のペナントレースがどうなるか、それを細かく具体的に読める監督は強い。これは私の推測なのですが、イエス・キリストだって、あれほど崇められたのは、何か科学的な根拠をもとに先を読む力があり、それに人々が驚いたからではないでしょうか。

企業経営についても同じことが言えるでしょう。業績が悪くなると、一部の経営者はただやみくもにリストラしようとしますが、それだけでは何の意味もないし、職場の士気は下がることはあっても上がることはない。人は何で動くかというと「夢」を見て動くのではないでしょうか。経営者は先を読んで、夢とかビジョンを社員に具体的に提示できるかどうか。落合監督は就任早々から「優勝する」と繰り返して選手をその気にさせていきましたが、会社も「ウチの社長のビジョンを信じてやっていこう」ということになれば、生まれ変わることができるはずです。監督は必ず解決方法を持っているはずだ――そう思わせることが改革の第一歩ですね。

野茂とイチローを開花させた「仰木マジック」

選手の素材を発掘し、磨き上げ、一流に育てる――プロ野球の監督は選手の起用だけでなく育成の技量も求められますね。

たしかに選手の個性を見つけ、伸ばすことも大事な仕事です。ただ、メジャーで活躍中の野茂英雄(前ロサンゼルスドジャース)やイチローはそれぞれ近鉄時代とオリックス時代に当時の仰木監督に育てられたと言われますが、私はそれは少し違うと思うんですね。野茂とイチローの他にも、長谷川滋利、吉井理人、木田優夫、野村貴仁……など、仰木門下からは日本で一番多くメジャーリーガーが生まれている。なぜだろうかと考えると、それは仰木監督が彼らの才能を「認めた」からだと思います。あの野茂の「トルネード投法」にしても、オリックス時代のイチローの「振り子打法」にしても、誰かが教えてできるものではありません。イチローの特異な打法は前の監督からは「あんなもん、ダメだ」と言われたわけですが、仰木監督は何も言わず、ただその才能を認めて彼らにやり方を任せていた。野茂やイチローに限らず、一流になる選手ほど自分の信念を曲げませんからね。

さっきも言いましたが、トップに立つ人というのは自分の成功体験を下の人に押しつけたがるものです。「オレはこれで成功したんだ、お前もやれ。そうすれば必ず成功する」と。でも、それは錯覚です。そのやり方がたまたま自分に合っていたから成功した、ということであって、それで他人も成功するとは限りません。仰木監督はそれがわかっていたから、野茂にもイチローにもほとんど教えることをしなかったのでしょう。教えたらあるレベルまではスーッと伸びるだろうけど、その先で壁にぶち当たったら、それでおしまいです。その壁を乗り越えて超一流になるためには、選手は自分ひとりで突破していく力を身につけないとダメなんですね。

二宮 清純さん Photo

「ウチのチームの選手は能力がない」と嘆くのではなく、粘り強く選手の力量を見きわめる。才能のある選手のことを認めて、できる限りチャンスを与えてやる。適材、適所だけでは、まだ足りない。適時――すなわち、いつ使ってやるかということが大切です。人材にも旬の時期があって、それを見抜くのが目利きの上司ということになるのでしょう。

(取材・構成=天野隆介、写真=中岡秀人)


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