職場のメンタルヘルス最前線 増加する“新型うつ病社員”への対処法
オフィスプリズム/臨床心理士・社会保険労務士
涌井美和子
2.「うつ病」は1つのタイプだけではない
そもそもうつ病とは、どのような病気なのでしょうか。米国精神医学会のDSM-IV-TR(精神疾患の分類と診断の手引)によると、うつ病は「感情障害」の中に分類され、資料のようなカテゴリーに分けられています。
前述のように典型的なうつ病のケースは、主に「大うつ病性障害」などにあるような、大うつ病エピソード――ほとんど毎日の抑うつ気分、ほとんどすべての活動における興味、喜びの著しい減退、疲労感または気力の減退、無価値観や罪悪感など――が見られるケースと思われます。
ところが、うつ病の中には、「気分変調性障害」や「気分循環性障害」など、大うつ病エピソードの基準を満たさない症状が少なくとも2年以上続くなど、典型的なうつ症状があまり多く見られないケースもあります。
また最近、臨床の場で注目を集めつつあるのは、「非定型うつ病」と呼ばれるケースです。これは、資料のようなカテゴリーにすっきり当てはまらないケースです。そもそも心の病気は、「ここまでが健康」「ここからが病気」と線引きすることができません。便宜上、線を引いた枠の中に当てはまらないケースが存在するのも、当然といえば当然でしょう。「非定型うつ病」も、そのような状態の1つといえるかもしれません。もちろん、今後の研究によって1つの病気として診断基準が明確になる可能性はあるでしょう。
「非定型うつ病」の特徴は、主に次の通りとされています。
【 「非定型型うつ病」の特徴 】
- 自分にとって好ましいことがあると気分が良くなる。
- 人間関係において過敏な傾向があり、特にプライドを傷つけられるような言葉には激しく反応する。
- 過食や過眠が見られる。
- 身体的重圧感や疲労感がある。
「非定型うつ病」と呼ばれるくらいですから、症状改善のためには投薬治療が必要ですが、もともと家族関係や生い立ちに恵まれなかった人も少なくないと言われていますので、カウンセリングと並行することもあります。
うつ病に限らず、発症前の本人の性格も症状に影響を与えます。最近は、自己中心的でわがまま、依存心が強い、自己顕示欲・自尊心が強く傷つきやすい、思ったことをハッキリ口にする、などの特徴が目立つ人が増えてきたこともあり、そのような従前の性格傾向を反映して、一筋縄でいかないケースが増えた面もあるでしょう。
もちろん、ここで紹介した分類や定義は、時代とともに書き換えられ、絶対的なものではありませんが、一口に「うつ病」と言ってもさまざまなタイプがあることが理解できるでしょう。
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