人事制度の実施・改定状況調査
48.3%の企業で過去5年以内に人事・等級制度の改定を実施(労務行政研究所)
1 正社員に対して適用している等級制度と改定状況
正社員に対して適用している等級制度[図表1、事例1]
54.3%の企業が職能資格制度を適用。1000人以上では、役割等級制度を運用する企業が34.0%
まず、正社員に対して適用している等級制度について尋ねた。なお、各等級制度については、以下のように定義している。
職能資格制度:「社員の能力水準」によって処遇を決定。社員の能力の発展段階を「職能資格等級」として区分し、社員をいずれかの資格等級に格付ける
役割等級制度:「会社が付与する期待役割の大きさ」によって処遇を決定。期待役割の大きさに応じて「役割等級」を設定する(詳細な職務分析等は行わない)
職務等級制度:「職責の大きさ(ジョブサイズ)」によって処遇を決定。職務分析・職務評価を実施し、社内のあらゆる職務・ポストを「職務等級」として序列づける
全体では、「職能資格制度」が54.3%と過半数に達し、次いで「役割等級制度」29.3%、「職務等級制度」5.2%となった[図表1]。規模別の特徴を見ると、1000人以上では「役割等級制度」は34.0%となり、他の規模と比較して高い導入率となった。また、産業別では、「職能資格制度」について製造業は65.1%だが、非製造業では47.9%となり、製造業のほうが「職能資格制度」を採用する傾向が見られた。
なお、「その他」と回答した割合も1割強に上っており、その内容を[事例1(省略)]にまとめている。主な回答としては、「管理職は職務等級制度、非管理職は職能資格制度」「職能資格制度と役割等級制度のハイブリッド」などが挙げられる。
過去5年以内の人事・等級制度の改定状況[図表2、事例2]
48.3%の企業が過去5年以内に人事・等級制度について改定を行う
過去5年以内の人事・等級制度の改定状況について尋ねたところ、「改定を行った」とした企業は全体で48.3%となった[図表2]。
「改定を行った」と回答があった企業の主な内容は、以下のとおり[事例2(省略)]。
- 「6階層の職能等級を5階層に再編成し、資格等級基準書を作成。役職(ポスト)や基本給と等級との関連づけを明確にした」(製造業、300~999人、2015年改定)
- 「役割等級制度と職能資格制度のハイブリッドだったが、役割等級制度へ一本化し、管理職層においては業績連動部分(賞与)の比率を高め、固定部分(月給)の比率を下げた」(非製造業、1000人以上、2015年改定)
- 「職能資格制度から役割等級制度へ転換。併せて、人事評価制度、報酬制度を改定」(非製造業、300~999人、2016年改定)
2 基本給の決定項目と賃金制度の改定状況
正社員の基本給の決定項目[図表3~5]
一般社員には67.2%の企業で能力給/職能給を適用。管理職には57.8%の企業で役割給を適用
正社員の基本給がどのような賃金項目によって決定しているか(複数回答)に関して、一般社員と管理職に分けて尋ねた[図表3~4]。なお、賃金項目に関しては、名称のいかんにかかわらず、支給の対象となる実態に即して回答してもらった。また、年俸制の場合は、年俸を構成する主たる賃金項目として回答を得た。
一般社員では、「能力給/職能給」が67.2%で最も高かった。次いで、「年齢給」と「役割給」が同率32.8%で並んだ。一方、管理職では、「役割給」が57.8%で最も高く、その後、「能力給/職能給」が47.4%、「職務給」が28.4%、「成果給/業績給」が26.7%と続いた。
なお、[図表3]の複数回答における基本給の主な構成パターンを[図表5]に示している。一般社員で最も多かった組み合わせは、「能力給/職能給のみ」16.4%、次いで「役割給のみ」12.1%、「年齢給+能力給/職能給」11.2%となっている。一方、管理職で最も多かった組み合わせは、「能力給/職能給+役割給」が15.5%。2位の「能力給/職能給のみ」は9.5%となった。
賃金制度の改定状況[図表6、事例3]
50.4%の企業が過去5年以内に賃金制度について改定を実施
過去5年以内の賃金制度の改定状況について尋ねたところ、「改定を行った」とした企業は全体で50.4%となった[図表6]。
「改定を行った」と回答があった企業の主な内容は、以下のとおり[事例3(省略)]。
- 「年齢給の廃止、手当の統廃合」(製造業、1000人以上、2015年改定)
- 「一般職上位で生活関連手当を廃止、家族手当の対象から配偶者を除外、住宅手当の支給レベルの見直しなど」(製造業、1000人以上、2012年改定)
- 「一般職・管理職ともに等級ごとにレンジを設定し、上限下限を設定」(製造業、1000人以上、2012年改定)
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