北海道における人材紹介のイノベーター――
地域密着型の人材ビジネスをトータルに横展開
キャリアバンク株式会社
佐藤良雄さん
これからは、人材サービス業界と人事部門が二人三脚で歩むべきだ
現在の日本企業の人事部門について、どのようなことをお感じになっていらっしゃいますか。
人事部門の方々の特徴として、固定観念が強いことが挙げられます。企画部門や営業部門は新しいことに挑戦しますが、人事部門は守りの部隊という意識が強く、なかなか新しいことに挑戦できない風土があります。
10年ほど前のことですが、給与計算のアウトソーシングを提案した時に、「自分の給料を、他社の人には見せられないでしょう」と言われました。その背景には、「自分が担当している給与計算の仕事を外部の人間にやらせるなんて、とんでもないことだ」という意識があったと思います。今から考えると、随分と時代遅れの感じがしますが、このような固定観念が人事部門を長く支配しています。
例えば、「高齢者は使いづらい」という固定観念。事実、70歳の高齢者を新規で雇う会社は少ないでしょう。しかし、高齢者でも短期で雇用して、現業の仕事をしてもらうことは十分可能です。そういうことを考えられる能力が、これからの人事部門には必要です。労働力人口が減っていく中、高齢者は使いづらいと拒否しないで、どうしたら活用できるかを考え、積極的に挑戦していくことが大切です。
ところで、私のキャリアプランは、67歳でネクタイ売り場の販売員になることです。なぜかと言うと、「社長や管理職だった人が、年を取って現場に戻り、モノを売ったり、作ったりすること」が、労働市場のあるべき姿だと思うからです。私が67歳になって、ブルックス・ブラザーズに面接に行き、「ネクタイ売り場で雇ってください」と主張した時に、人事部門の人にはぜひ、採用する勇気を持ってほしい(笑)。このような今までにないチャレンジを創出することによって、これからの労働市場を変えていってほしいのです。
ネクタイは若い女性が売るのに適した商品ではありません。一度もネクタイをしたことのない人が、ネクタイを売るべきではないでしょう。一方、私は40数年間ネクタイを使い続けており、ネクタイに関してはプロフェッショナルです。また、今の高齢者のセンスはそんなに悪くありません。そういう人が、ネクタイを売るべきだと思っています。また、ネクタイは軽く、高齢者にとって負担にならない。携帯電話のように、複雑な機能を説明する必要もありませんから、まさに高齢者向きの商品なのです。このように人材活用のあり方を考え、変えていかないと、高齢化社会の時代に合った労働市場が作れません。
高齢者を例に挙げたのは、これからの日本の主要な労働政策は高齢者に向くからです。年金の支給年齢を引き上げなくてはならないし、減額も必要となってくるからです。健康な限り、高齢者に働いてもらわないといけない社会で、日本で最大の未活用資源は高齢者なのです。
そして、高齢者活用をコーディネートするのは、我々人材サービス会社と企業の人事部門の仕事です。新しい労働市場を創るためには、人材サービス業界と企業の人事部門が二人三脚で歩んでいかないことには成立しないのです。その意味でも、将来の労働市場のあるべき姿を一緒になって描いていく必要があります。
本当にそう思います。では、今後の展望をお聞かせください。
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)をベースに考えると、今後、アジアでも人材の移動はEU(欧州連合)のように自由化されていくことでしょう。ですから、アジアにおける人材流動のグローバル化に、日本の人材サービス会社は対応していかなくてはなりません。我々も、中国はもちろんカンボジア、ミャンマー、ベトナムなど東南アジア各国とのネットワークを強化し、日本国内の労働移動だけではなく、アジア全体の労働移動をコーディネートしたいと思っています。人材サービス業界のリーダーシップを、アジアで日本企業がたくさん取れたらいいと思っています。
最後に、人材サービス業界に携わっている皆さまや、これから携わろうとしている、あるいは起業しようとしている若い方々、後に続く方々にメッセージをお願いします。
日本は、非常にコンプライアンスの効いている国です。人材紹介、人材派遣といった時に、必ず法令遵守のことが頭に浮かびます。しかし、本来、人材サービス業界に関わる人が先に思い浮かべるべきことは、マーケットニーズではないでしょうか。
法律は、時代の変化にそぐわなくなる場合があります。目の前にマーケットニーズがあるのに、法律が邪魔をすることが多々あります。「技能実習制度」や「日雇い派遣」がまさにそうです。このような場合、規制を壊して、新しいマーケットを創り、人材ビジネスを発展させなければなりません。言うまでもなく日本は法治国家で、法律によってマーケットが制限されていますが、その法律をあえて超えていってほしいのです。そして、これができるのは若い経営者。ぜひ、そういう人が出てくることを期待しています。
そもそも人材紹介や人材派遣も、それまでの法律を変えたり、あるいは法律を作って、新しくできた業界です。マーケットニーズがあり、それに何とか応えようとしたからです。このように人々の生活を豊かにするために、我々の存在価値があるのです。既成の法律を恐れてはいけません。
社名 | キャリアバンク株式会社 |
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本社所在地 | 札幌市中央区北 5条西 5丁目 7 sapporo55ビル |
事業内容 | 労働者派遣・有料職業紹介・再就職支援・販売アウトソーシング・社員教育事業・雇用政策受託 他 |
設立 | 1987年11月 |
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。