人材派遣サービスの傾向と選び方
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人材派遣とは、派遣元会社(派遣会社)と労働契約を結んだ労働者を、一定期間受け入れる雇用形態です。派遣先会社は、即戦力となる人材や専門人材を、業務の状況に合わせて確保することができます。
派遣社員の受け入れにあたっては、労働者派遣法に基づき、賃金や賞与、福利厚生施設の利用、教育訓練期間の提供など、待遇に関する情報を派遣会社に事前に提供することが求められます。IT系など職種に特化した派遣会社もあるので、全国展開している大手と比較しながら選ぶと良いでしょう。
本稿の最後には、派遣会社の一覧を掲載します。
参考:しくみと法律│日本人材派遣協会
人材派遣とは
人材派遣とは、労働者が派遣元会社と労働契約を結び、派遣先の企業で働く雇用形態のことをいいます。派遣は1986年の労働者派遣法施行によって始まった働き方で、労働者派遣事業を行う企業は、厚生労働大臣の許可を得る必要があります。
昨今は多様な業界で人材派遣が活用されていますが、派遣事業の適用が認められていない業界もあります。たとえば、建設業務、警備業務、医師、弁護士などは派遣の禁止業務に該当します。また、派遣された社員が同じ部署で同一の仕事に従事するのは3年が上限という、いわゆる「3年ルール」が設定されています。「同一労働同一賃金」の実現など、派遣社員と正社員の格差是正について企業が取り組むべきこともあるため、人材派遣の法律を理解して、派遣社員を受け入れることが重要です。
人材派遣の三つの形態
人材派遣は、登録型、無期雇用派遣、紹介予定派遣の三つに分けられます。
登録型
「登録型」と呼ばれる人材派遣は、労働者が派遣元会社と雇用契約を結び、派遣先会社で就労します。雇用契約は、労働者の就業先(派遣先)が決まったときのみ発生するのが特徴です。派遣先での就業期間が終了したあとは、派遣元会社との雇用契約も解消されます。
無期雇用派遣
無期雇用派遣では、労働者は派遣元会社の常用雇用の社員として、期間の定めのない(無期雇用)労働契約を結びます。そのため、就業先の有無(派遣先の有無)にかかわらず、労働者と派遣元会社との雇用契約が継続します。福利厚生などの労働条件は、派遣元会社の規定にしたがって適用されます。
紹介予定派遣
紹介予定派遣とは、就業先で雇用されることを前提として、労働者を派遣元会社から派遣する雇用形式をいいます。就業期間中に、企業と派遣社員の双方が合意すれば、直接雇用となります。紹介予定派遣の上限は6ヵ月で、派遣先企業が直接雇用するまでは派遣元企業と有期の労働契約を結びます。また、事前に求人条件の明示や、就業前の面接などが認められています。
人材派遣のメリット
人材派遣を活用すると、以下のようなメリットが考えられます。
繁忙期に合わせて人員を調整できる
繁忙期に労働力が不足する業界では、人材派遣を活用することで人件費の最適化が図れます。宿泊業や観光業のように、忙しい時期が決まっている業態は、派遣社員を活用しやすいといえます。
派遣社員に定型業務を依頼することで、正社員はコアな業務に集中できる
派遣社員がデータ入力などの定型業務を担うことにより、正社員がコア業務に集中することができれば、企業全体の生産性向上につながります。例えば人事業務の場合、求人票の更新や面接の日程調整といったやり取りを派遣社員が担当することで、人事担当者は採用戦略の構築などに集中することができます。
専門スキルを持った人材を確保できる
エンジニアのような専門スキルを持った人材を、人材派遣で受け入れることができます。自社に該当する人材が不足している場合や、人材獲得が急務で育成する時間がない場合に有効です。また、経理のように業務が集中する時期があらかじめ決まっている職種でも、活用が期待できます。
急な欠員が発生しても、事業を滞りなく推進できる
社員の退職などにより急な欠員が発生した場合、新たに人材を採用するまで派遣社員を受け入れることで、業務を滞りなく進めることができます。また、社員が産休、育休を取得して長期間休む場合も、復職するまでの代替要員として活用できます。
人材派遣のデメリット
人材派遣を受け入れる企業は、以下の点に注意する必要があります。
業務内容に制限がある
派遣社員に任せられるのは、契約時に合意した業務内容のみです。たとえば、営業事務を依頼した派遣社員に対して、月次の経費精算業務を任せることはできません。契約内容を超えるものは派遣社員に直接依頼できないため、イレギュラーな状況で派遣社員を活用するのは難しいといえます。
長期的な人材育成計画が難しい
有期雇用の派遣社員の場合、同じ事業所で働けるのは原則として3年が上限です。その点を踏まえて正社員の人材育成計画や採用計画を立てる必要があります。
教育コストはゼロではない
即戦力といっても、自社特有の業務手順やルールを覚えたり、仕事に必要なスキルを身につけたりするための教育コストが発生します。派遣社員を受け入れる際は、研修の体制を整えたり、教育担当者を任命したりする必要があります。
人材派遣を依頼する際の流れ
人材派遣会社に依頼する基本的な流れと、ポイントについて解説します。
【STEP1】
求める人材の要件を定義
まず、人材派遣会社に依頼する際に必要な、派遣社員に求める要件を明確にします。確認すべき点は以下の通りです。
仕事内容 / 労働条件 |
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どのような業務を任せるのかを決めてから、業務の詳細、稼働時間、勤務場所などを明確にします。 |
求めるスキル / 必須要件・歓迎要件 |
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依頼する業務を任せるにあたって必要となるスキルを整理します。スキルをすべて羅列するのではなく、優先順位をつけ、「必須要件」と「歓迎要件」に分けると、人材のマッチングがしやすくなります。 |
求める人物像 |
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「コミュニケーションに優れている方」といった具体的な内面部分のほか、「〇〇業界の経歴がある」など、想定する人物像を具体的にすると、求める人材のイメージを派遣会社と共有しやすくなります。 |
【STEP2】
人材派遣会社に依頼
要件定義に沿って人材派遣会社に依頼します。伝える基本的な情報は以下の通りです。
人材派遣会社に伝える基本情報 |
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自社に適した人材を紹介してもらうには、募集の背景を説明するといいでしょう。繁忙期の人員補充なのか、プロジェクトに適した専門スキルを求めているのかなど、派遣社員が必要となる事情を伝えておくと、スムーズにマッチングが進みます。
業務内容については、業務の範囲のほか、派遣社員が日々行う仕事内容を伝えます。担当業務の領域は、漏れのないように明記しておくことが重要です。職場の雰囲気については、派遣社員が所属するチームメンバーの構成、人数、業務で接する社員や上司などを伝えます。
比較対象者等の情報提供
労働者派遣法により、派遣先会社は、労働派遣契約を結ぶ前に、以下のいずれかの情報を派遣元会社に提供することが定められています。
- 比較対象者の情報提供(派遣元会社が派遣先均等・均衡方式の場合)
- 教育訓練の実施・福利厚生施設の利用機会の付与・情報提供(派遣元会社が労使協定方式の場合)
「比較対象者の情報」とは、受け入れる予定の派遣社員が行う業務と同等の業務に従事している「比較対象労働者」を選定し、その待遇内容の情報を派遣元会社に提供することです。提供する情報には、選定理由、待遇の内容(賞与や昇給の有無)などが含まれます。
また、「教育訓練の実施・福利厚生施設の利用機会の付与・情報提供」については、業務上必要となるスキルを習得するための研修の有無や、食堂や更衣室の利用に関する情報を提供します。
提供すべき情報は、派遣元会社が派遣社員の賃金などの待遇の決定について、「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」のどちらを選択しているかによって異なります。
「派遣先均等・均衡方式」は、派遣社員の待遇について、派遣先会社で職務内容や配置の変更範囲などが同程度の労働者の待遇と均等・均衡を図る方式のことです。「労使協定方式」は、派遣元会社の労使協定によって待遇を決定する方式のことです。どの方式を採用しているかは、派遣会社のウェブサイトなどで確認できます。
【STEP3】
派遣社員決定
派遣会社から紹介されるスタッフを選定し、受け入れる人材を決定します。派遣社員の希望があれば職場見学を実施します。なお派遣社員の選定では、派遣社員と自社が雇用契約を結ぶわけではないため、通常の採用の「面接」「試験」などはできません。
スタッフを決定したら、以下の契約書を派遣元会社と締結します。
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基本契約書(労働者派遣基本契約)
初めて取引する人材派遣会社の場合、締結が必要です。 -
個別契約書(労働者派遣契約)
受け入れる派遣社員が決定した際に、就労期間・業務内容・人数など個別の就業条件を定めます。 -
派遣先管理台帳
基本的には派遣先会社が作成します。派遣スタッフ一人ひとりの就業場所や業務内容、就業日などが記載されています。
【STEP4】
受け入れ開始
契約を締結して就業開始日が決まったら、スムーズに受け入れられるように以下の準備をしておくとよいでしょう。
【受入日まで】 |
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【受入日】 |
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受け入れ体制を整えることで、派遣社員も安心して業務に取り組めます。
人材派遣サービスを選ぶときのポイント
人材派遣サービスを選ぶときのポイントについて解説します。
依頼したい業務に対応できるかどうか
依頼したい業務に対応できる派遣会社かどうかを確認します。まずは「事務」「経理」など大まかな業務分野に対応しているかをチェックします。また、求めるスキルや経歴の人材がどれくらい登録しているのかを確認すると、参考になります。
登録人数が少ない場合や、業界・職種の求人数が多い場合は、人材獲得競争が激しくなるでしょう。また、人材に求める条件が多かったり、高度だったりすると、派遣社員の獲得が難しい場合もあります。社会・業界・職種などの市況感について派遣会社から情報を得ることで、自社の要件定義を見直すこともできます。
業界や職種特化型を探してみる
派遣会社によって、エンジニア、グラフィックデザイナー、経理、軽作業など、さまざまな強みがあります。なかには、業界に特化している派遣会社もあります。大手派遣会社の場合、ニーズが高い業界・業種についてサービス部門が確立されているケースもあるため、問い合わせるといいでしょう。
また、地方の事業所で派遣社員を探す場合、全国展開をしている大手だけではなく、地域に根差した派遣会社を検討する方法もあります。
対応する派遣形態と登録スタッフ数
登録型、無期雇用派遣、紹介予定派遣について、対応する派遣形態を確認します。短期間で大人数の派遣社員が必要となる場合は、派遣会社の規模を参考にするといいでしょう。料金について比較したい場合は、派遣会社が公開している派遣料金の平均額やマージン率を参考にします。2012年の労働者派遣法改正により情報公開が義務付けられており、「厚生労働省職業安定局 人材サービス総合サイト」の「許可・届出事業所の検索」から確認できます。
全国の人材派遣サービス一覧
総合的な人材派遣会社
- アデコ株式会社
- 株式会社ウィルオブ・ワーク
- 株式会社NMPスペシャリスト
- パーソルテンプスタッフ株式会社
- 株式会社パソナ
- ヒューマンリソシア株式会社
- 株式会社マイナビワークス
- マンパワーグループ株式会社
- ランスタッド株式会社
- 株式会社リクルートスタッフィング
技術系・製造系職種中心の人材派遣会社
- 株式会社アウトソーシング
- アクサス株式会社
- 株式会社アルプス技研
- テクノ・サービス株式会社
- 株式会社テクノプロ
- 日研トータルソーシング株式会社
- 日総工産株式会社
- 株式会社フォーラムエンジニアリング
- 株式会社メイテック
- 株式会社ワールドインテック
専門職種特化型の人材派遣会社
人と組織の課題を解決するサービスの潮流や選定の仕方を解説。代表的なサービスの一覧も掲載しています。