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HR業界TOPインタビュー「人・組織」ビジネスを牽引する希代の経営者

キャリアバンク株式会社 代表取締役社長

佐藤 良雄さん

北海道における人材紹介のイノベーター
――地域密着型の人材ビジネスをトータルに横展開 [1/5ページ]

(2015/11/27掲載)
佐藤良雄さん
人材紹介・人材派遣を中心に、北海道に根ざした人材ビジネスを展開しているキャリアバンク株式会社。国内トップの社会保険労務士法人と行政書士法人を傘下に持つSato Groupを率い、顧客のさまざまな課題に応えていく横展開のビジネスモデルによって、他社との差別化を図っています。さらに今年からは、中国から大学生をインターンとして招き、北海道内のリゾートホテルに紹介する事業を始めるなど、海外に目を向けた新たな人材ビジネスにも力を入れています。北海道における起業家の先駆的存在でもあるキャリアバンク社長の佐藤良雄さんに、これまでの事業展開を振り返ってもらうとともに、独自の人材ビジネスへの考え方と方法論について、詳しいお話を伺いました。
プロフィール

佐藤良雄(さとう・よしお)●1953年北海道・札幌市生まれ。1977年佐藤良雄行政書士事務所(現・ SATO行政書士法人)を開設。さらに労働保険事務組合による労務管理サービスで成長した。1987年にキャリアバンクを設立。同社では人材紹介の他、人材派遣、雇用政策の受託、再就職支援、人材開発事業など人材関連ビジネスを北海道に特化して行い、地域とともに発展するビジネスモデルを展開している。北海道のマーケットを熟知し、北海道で働いている人たちを誰よりも大切にし、地域を良くしていきたいと社員全員が思っていることが、他社との大きな差別化になっている。また近年は、中国の大手人材会社と提携するなど、海外とのネットワークの構築にも力を入れている。グループ職員の総数は1,000人を超える。趣味はサッカーと旅行。地域のプロサッカーチーム「コンサドーレ札幌」の筆頭株主である、サポーターズ持株会の理事長を務めている。座右の銘は「順逆一如 」。

まったくモデルケースがない中、北海道で人材紹介をスタート

―― 佐藤さんは大学を卒業後、まず「行政書士」になられたそうですが、その経緯について教えください。

大学時代に、将来独立することを見据えて就職したいと考え、起業に関して調査を始めました。ただ学生ですから資本はないし、スポンサーがいるわけでもありません。お金がなくてできるビジネスはないのかと思って見つけたのが「士業」です。「司法書士」や「税理士」など、たくさんの士業の事務所にアルバイトの面接に行って、どんな仕事なのかをリサーチしました。

いろいろな士業事務所を見た上で私が選んだのが「行政書士」です。行政書士は、「これから会社を作って、さあ頑張るぞ」「これから営業許可を取って、さあ拡大するぞ」など、起業や事業拡大に向けた顧客から仕事の依頼を受ける、前向きな人達を顧客とする士業だったからです。

また、起業したら人も雇うので、許認可の仕事(行政書士)の他に、労務管理(社会保険労務士)の仕事も行うようになりました。中小企業の経営者を相手に、顧客企業の事業の発展に尽くすというスタンスで、行政書士と社会保険労務士の事務所を営んでいました。

―― その後、どのような経緯でキャリアバンクを設立されたのですか。

行政書士の事務所を創業したのが23歳。事業は順調に拡大し、27歳の時には北海道で一番大きな事務所となり、30歳で8階建ての自社ビルも所有することができました。そして35歳の時、1987年にキャリアバンクを設立したのです。

私の顧客には、新しい分野へ事業展開をする企業や、新しく会社を作るような人が多く、「人が欲しい」という声が多かったことがきっかけでした。「こんなことができる人がいないかな。佐藤さん、顔が広そうだから誰か知らないかな」など「人を紹介してほしい」という相談をたびたび受けていたのです。

この頃は、バブル経済の入り口。日本経済の景気は良く、人材不足が叫ばれていました。北海道でも私の顧客である中小企業の間で「人材が欲しい」というニーズが、急速に高くなっていたので、この人材ニーズに対して、何とか役に立てないかと考えました。

しかし当時、人材紹介事業を行っている会社は北海道に1社もありませんでした。札幌の職業安定所(現ハローワーク)に行っても、誰も許可を出した経験がないので、人材紹介のことを知らないのです。「そんなビジネスは北海道では成り立たないでしょう」と言われるほどでした。

これでは埒があかないと思い、労働省(現厚生労働省)の需給調整室を訪ねることにしました。需給調整室は人材紹介と人材派遣、求人広告を所管するセクションで、当時、室長だったのが戸苅利和さん。その後、厚生労働事務次官となり、小泉内閣で坂口力、尾辻秀久、川崎二郎の3大臣の下、厚生労働行政を支えた方です。戸苅さんに、「北海道で人材紹介業を始めたいのですが」と相談すると、人材紹介事業協会会長を務める東京エグゼクティブ・サーチの江島優社長を紹介してくださいました。江島さんは地方から出てきた若者に自身の経験、必要な知識、経営のポイントなどを親切に指導してくれたばかりか、永く私を気遣ってくれました。私がこの仕事を始めることができた恩人です。

ただ江島さんの会社は、人材サーチ(ヘッドハンティング)の会社。北海道という地方を拠点とする私にはピンときませんでした。東京の人材紹介会社へ何度もリサーチに行った結果、地方ではサーチよりも、エントリー(登録)型の方が適していると判断しました。そこで、登録制の人材紹介会社であるイメージを打ち出すために、社名に「バンク」を入れ、「キャリアバンク」としたのです。北海道で最初の人材紹介会社です。

また厚労省の戸苅さんには年2回上京して、キャリアバンクの経営や労働市場に関しての議論に付き合ってもらいました。事務次官になられるのですから忙しいはずですが、長年の間必ず時間をお取りいただいたことに感謝しています。結果、私は随分鍛えられたと思います。

―― そういう経緯があったのですね。それで人材紹介は、うまくいきましたか。

佐藤良雄さん インタビュー photo

うまくいきませんでした。会社を作ってから10年間、ずっと赤字でした。なぜかと言うと、北海道の中小企業経営者は「人を紹介してほしい」と言うものの、人を紹介してもらってお金を払った経験がなかったのです。「人を紹介するのにお金を取るのか」「ハローワークではタダなのに」とおっしゃって、この時点では、少なくとも北海道には人材紹介のマーケットはなかったのです。マーケティングに関して私は大いなる勘違いをしてしまったのです。

実際に人材紹介のニーズが増え始めたのは、BUGやハドソンなどのIT系のベンチャー企業が出てきて、技術者の人材不足が深刻化してきた頃です。IT系企業は、優秀な技術者が自社の生命線を握っていることをよく分かっていて、そのためには人材紹介という方法が合理的であることを理解していました。このような会社が増えてきたことにより、人材紹介事業で売り上げが立つようになってきたのです。

その後、「薬剤師」の人材ニーズが増えました。アインファーマシーズやツルハなどのドラッグストアチェーンが多店舗展開を始めたからです。その頃は今のような「登録販売者」という制度がなく、薬剤師がいないと店舗を出せなかったのです。多店舗展開を進めていくために必要な薬剤師を確保することが難しく、キャリアバンクに人材紹介のオファーを出すようになってきたというわけです。このような専門的な人材分野で、人材紹介の実績が着々と上がっていきました。

人材紹介を生業とするキャリアバンクを設立した後、顧客企業の人材ニーズに応える形で、人材派遣を加え、医療業界からの紹介や派遣ニーズの高まりに対応してメディカル事業を開始し、さらに再就職支援、社員教育、そして行政からの委託事業といった具合に、人材関連事業を横へと広げていきました。

これは、地域における人材会社の基本的なビジネスモデルだと思います。東京や全国で展開するような場合だと、医師や看護師、事務系、技術系などの特定の絞り込んだマーケットに切り分けることができますが、地域特化型で事業を展開する場合は、それぞれのマーケットが小さいので横展開をしなくてはなりません。


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