HR業界TOPインタビュー「人・組織」ビジネスを牽引する希代の経営者

株式会社インテリジェンス 代表取締役兼社長執行役員

高橋 広敏さん

激しい浮き沈みを経験した人材総合サービスの雄
「社会インフラ」として、価値あるサービスを企業と個人に提供する [1/4ページ]

(2015/10/22掲載)
高橋広敏さん
人材サービスのインテリジェンスは1989年の創業以来、社会構造や労働市場の変化に合わせながら、自己変革を繰り返し、顧客が求めるサービスを追求してきました。また、人々の生活に欠かすことのできない「社会インフラを目指す」ことを創業の頃からずっと経営理念として掲げてきました。そして、2013年にはテンプグループとの経営統合を実現。総合人材サービス業から、個人や企業の課題を解決に導く、ソリューションサービス業へと進化を遂げつつあります。インテリジェンスの代表取締役兼社長執行役員である高橋広敏さんに、創業時の苦労話も含め、同社の事業内容・サービスの展開と、これからの人材サービス業界の課題などについて、詳しいお話を伺いました。
プロフィール

高橋広敏(たかはし・ひろとし)●1969年大分県生まれ。1995年早稲田大学第一文学部卒業、同年インテリジェンスへ入社。1999年取締役、2001年常務取締役に就任。人材紹介サービスディビジョン(現キャリアディビジョン)、人材派遣サービスディディビジョン(現派遣ディビジョン)、サポート本部(現全社機能)管掌、メディアディビジョン管掌を経て、2008年12月、代表取締役社長執行役員に就任、現在に至る。また、2013年6月からテンプホールディングス株式会社取締役副社長へ就任。人材業界関連団体では、一般社団法人人材サービス産業協議会副理事長、公益社団法人全国求人情報協会理事、一般社団法人日本人材紹介事業協会副会長などの要職を務めている。

早稲田大学の学生時代、創業間もないインテリジェンスの事業に参画

―― 高橋さんは早稲田大学を卒業後、インテリジェンスに入社されましたが、その経緯についてお教えください。

インテリジェンスは1989年に創業したのですが、私はその当時、まだ学生で、さまざまな大学の有志とベンチャー企業を結成していました。後にDeNAの創業メンバーとなる川田尚吾さん、KLabを創業した真田哲弥さん、ザッパラスを創業した玉置真理さんといった方々と一緒に渋谷にオフィスを借り、マーケティングに関するビジネスを行っていたのです。実はインテリジェンスは営業先の一つで、たまたま私が担当することになりました。

当時のインテリジェンスは創業間もない頃で、社長の宇野康秀さんと、鎌田和彦さん、島田亨さん、前田徹也さんの4人からなる、まだ小さな会社でした。後に、その名を残す人たちばかりですが、当時は「会社を作るからには、社会に価値のあることを残そう」という若々しい思いに皆が満ちあふれ、とにかく面白い会社だと感じました。私も若く感受性が強かったからでしょう、彼らの描く理想に強く魅力を感じ、学生ベンチャーからインテリジェンスへと軸足を移したのです。

インテリジェンスが創業したのは1989年6月、私が参画したのはその年の年末です。学生の立場ではありましたが、一員として加わることができました。ただ、朝から晩まで働いていたので、大学を卒業するのには時間がかかりました。結局、7年間かけて卒業し、正式にインテリジェンスに社員として入社したのは1995年です。

―― 学生でありながら、なぜインテリジェンスという会社にそこまで思い入れることができたのでしょうか。

創業メンバーが、「社会インフラになる」と熱く語っていたことが一番大きかったですね。ただ当初は、4人しかいない会社なのに「社会インフラになる」とは、いったいこの人たちは何を考えているのだろうと思いました。いつも「社会インフラになる」ことの定義、そのためにやらなければならないことなどについて、夜中まで熱く議論しているのです。荒唐無稽な話も多かったように記憶していますが、創業メンバーは皆、20代半ばでしたし、私は20歳そこそこの学生です。だからでしょう、いつしか気が付いた時には私自身も他のメンバーと一緒に、社会インフラになることを真剣に考えるようになっていました。

―― 正社員としてインテリジェンスのメンバーになった時、会社はどのような状況でしたか。

創業した1989年は、まさにバブル経済の絶頂期でしたが、その後、バブルが崩壊し、日本経済は大きな転換期を迎え、その波に人材サービス業界も飲み込まれることになります。私が入社した1995年は、まさにそのような時でした。

インテリジェンスは創業してからの3年間、順調に業績を伸ばしていました。1992年の決算では、売上高は10億円を超えていました。ただこの頃から日本経済が「バブル崩壊後」の世界に突入していくことになります。不動産、株はもちろん、人材サービス業界における単価などあらゆるものがデフレ化。派遣業界では1993年~94年にかけ需要が底を打ちました。「就職氷河期」と言われ、求人広告も極めて苦しい状況にありました。会社の売上は1995年当時、20億円ほどだったと思います。1992年くらいまでは倍々で伸びて来たのが、それからの3年間は年間で2~3億円くらいしか売上を伸ばすことができなかったのです。バブルのころから急激に変化し、人材の採用に対して、企業が特に費用対効果の面で極めて慎重になっていました。我々のビジネスも、日を追うごとに厳しくなっていったのです。

私自身は、かなりのハードワークをしていて、何とか会社も伸びていました。しかし、このような働き方をしていては、この先ビジネスとしてやっていけるのだろうかと、疑問に思ったのも事実です。このような状況でしたから、大学を卒業するためという名目で、一旦1994年の年末まで、会社から離れた時期がありました。この時は大学7年生でしたが、卒業するには語学や体育など、出席しないと単位を取得できない科目が残っていたからです。

そして、年末になって卒業の目途が立った時、社長の宇野さんから呼び出されました。「現在のビジネスの延長線上では、社会インフラになることは難しい。そこで、社会インフラになるために人材派遣業を手がけたいと思う」という話を切り出されたのです。

―― それまでのインテリジェンスは、広告代理店業が中心でしたね。

高橋広敏さん インタビュー photo

まさにマルチベンダーのようなもので、顧客第一を目的に、顧客の役に立つことだったら、リクルートに限らず、学生援護会、日本経済新聞社、アイデムなど、あらゆる商材を販売していました。当時、特定のメディアと直結している広告代理店が多かった中、このようなスタンスを取る会社は珍しかったと思います。当時のビジネスモデルの理屈は簡単で、社員一人が5000万円から1億円の売上を上げることを前提とし、社員が1000人いれば500億から1000億円の会社になる、ということでした。しかし、これが私たちの目指す社会インフラなのかと疑問も感じていました。

バブル崩壊後の不景気の中で、1人5000万円から1億円の売上を上げることは、極めて難易度の高い目標です。しかも、我々のビジネスのやり方は仕組み化が難しく、再現性が低いものでした。個人商店の集まりのようなものでしたので、これではビジネスとして成長するのは難しいと思いました。

当時、創業メンバーたちが話していたのは、これまでのビジネスのやり方を変えて、拡大再生産ができるビジネスを始めないといけない、ということでした。もちろん経営陣が志を本気で語るのはいいのですが、それを実現するためには、各自が気持ちを高く持って本気で働くといった精神論の世界でした。志を実現するためのステップが、全く見えない状態なのです。志と実際の行動の距離があまりにも遠すぎたわけですが、それでもメンバーをリードできる魅力のある人たちでした。「夢」だけを追いかけて、働くことのできた時代と言えるかもしれません。


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