武田薬品工業株式会社:
人事はビジネスに貢献する戦略的パートナー
タケダのHR改革に学ぶグローバルマインドセットとは(前編)
武田薬品工業株式会社 グローバルHR グローバルHRBP コーポレートヘッド
藤間 美樹さん
戦略人事のカギを握る「HRビジネスパートナー」の役割とは
外国人のヘッドを迎えてHR部門が一気に変わったとおっしゃいましたが、具体的にどのような改革が行われたのですか。
改革といっても、デイブにとっては当り前のことで、やるべきことをやる、それだけだったと思います。まず、組織の構成が変わりました。現在、当社のグローバルHRの体制は、評価・報酬・人材開発・採用など会社全体の制度設計やしくみをつくるCoE(Center of Expertise)というセクションと、戦略的に部門をサポートするHRビジネスパートナー(以下、HRBP)の両輪から構成されています。従来の日本企業の人事部には、基本的にCoE の機能しかありませんでした。新しく導入されたHRBPの役割は、独創的なソリューションを提案して部門をサポートすることで、日本でいう「部門人事」に近いようですが、部門での人事施策の運用面を支援するだけの部門人事とは異なります。
HRBPは、ほかでもない、藤間さんご自身が務めていらっしゃるポジションです。しかし日本ではまだ、その役割や重要性が充分に認識されていません。ぜひご教示ください。
HRBPとは、各部門の事業責任者に対するビジネス上の“戦略的パートナー”として、人と組織の面からサポートし、事業成果の創出を実現するプロフェッショナルのことです。人事部に限らず、会社を構成するすべての部署は、会社の成長に貢献しなければなりません。では、人事はどういう形で貢献していくべきか。これからは従来のような管理・労務中心ではなく、やはり「戦略人事」です。各部門の人事面の課題を捉え、独自のソリューションを提供して貢献する。それがHRBPに求められる役割です。
これまで日本企業の人事部には、どちらかというと現場を知らない人が多かったのではないでしょうか。本社にドンと構えたままで、ワークライフバランスが流行していると聞けば、実態に合わない制度を作ってみたり、独善的で難しい研修を押し付けて現場の貴重な時間を奪ってみたり……。それではダメなんです。われわれHRBPは、もっと各部門にしっかりと入り込んで、現場も気づいていないような潜在的な課題まで掘り起こし、解決策を示す。まさに部門トップのパートナーでなければなりません。
人事は、日々変化に対応しなければならない現場から、“足を引っ張る存在”と疎まれることも少なくありません。HRBPは、逆にそこをつなぐ存在なんですね。
そもそも欧米と日本では、企業内における人事の位置づけや期待されている役割がかなり違いますよね。私自身、それを痛感する出来事がありました。15年秋にHRBPのグローバルヘッドに着任する際、事前にデイブが他部門のヘッドに連絡していたらしく、着任の1ヵ月も前に、ある外国人のエグゼクティブが「電話会議をしよう」と言ってきたのです。理由は「すぐにでも戦力になってほしいから」。それだけ人事をビジネスパートナーとして重要視し、同じリーダーとしても認めているということですね。一方、日本人はどうかというと、着任後、あるエグゼクティブに挨拶に出向いたところ、こう言われたんです。「人事が、何の用があるの?」と。HRBPの役割を認識してもらえていなかったんですね。こうした事業部門の認識をかえるためにも、我々人事はビジネスに貢献して、成果を出さなければならないのです。