コストコ ホールセール ジャパン株式会社:
正社員とパートタイムを同じ「時給制」の下で処遇
「社内公募制度」でキャリアアップを図り、
管理職の早期育成を実現(前編)
コストコ ホールセール ジャパン株式会社 人事・総務 マーケティング 部長
中川 裕子さん
コストコでキャリアを形成し、会社と個人が“Win-Win”の関係を構築する
採用に当たり、「全国同一の時給1250円~」という高待遇にする理由は何でしょうか。
近隣に競合他社が多い中で、能力が高く意欲のある人材を採用するためです。「良い賃金を払うことで、良い人を雇用し、良い仕事を提供すれば、良い結果が得られる」と、シンプルに考えています。また、高待遇を用意することで、単に仕事をするだけではなく、コストコに長く勤め続けて欲しいという思いが根底にあります。実際、アメリカのコストコでは、三世代に渡って勤めてくれる家族もたくさんいます。コストコで働くことで自分のキャリア形成を図り、家族を養い、安心して生活を送ることができた、という人が非常に多いのです。家族も含めて、その人のキャリアを支える存在でありたいと思っているからこそ、安定した形で高い賃金や福利厚生を提供していきたいと考えています。
実際、このような形で仕事とポジションを提供していれば人材が定着し、離職率は低下します。また、長く勤めることは、一人ひとりの生産性向上にもつながります。離職率の高い会社では、人の採用や教育、さらには宣伝・広告などに大きなコストと時間をかけていますが、そのために要するコスト・時間を今いる人に還元していけば、その人たちは成長し、長く居続けてくれます。また、モチベーションを持って、高い生産性を発揮するようにもなります。その結果、会社と個人との間に“Win-Win”の関係が構築できるのです。この考え方は、創業時からのもので、コストコの創業者であるジム・シネガルは、「50年、100年と続く企業を目指し、ロングタームで物事を考え、長期雇用を実現する」と明言しています。人を大切にするという考えの下、コストコでは世界各国で会社と個人が“Win-Win”となる関係を構築できるよう、人材マネジメントを実践しているのです。
全国同一の高時給で従業員を募集することで、応募者に見られる傾向はありますか。
最近は地方でオープンするケースが多いのですが、採用母集団を形成しやすくなりました。昨年11月に岐阜羽島倉庫店をオープンした時に、コストコの時給相場が近辺の採用マーケットを変えたと、多くのメディアに取り上げられました。その結果、「コストコ=時給が良い」というイメージが定着し、採用に関してはかなりアドバンテージが出てきたように思います。面接で応募理由を聞いても、「時給が高かったから」とストレートに答える応募者が多く見られます。人材不足が謳われる中、たくさんの意欲の高い応募者が来てくれるのは、非常にありがたいことだと思っています。
また、他の小売業ではパートタイムの比率が高く、扶養家族のままでいたい、あるいは社会保険に加入したくないという人が少なくありません。そのため、就業時間を週20時間未満にセーブするケースが多いようです。しかしコストコの場合、パートタイムは週20時間以上勤務と規程しているので、扶養家族となる年収106万円の壁は軽く超えてしまいます。そのため採用の段階で、そのことをはっきりと伝えています。例えば、パートタイムの最低ライン。時給1250円で週20時間、52週働くと年収は130万円となります。さらに休日にも働いてもらうと、超過勤務手当が上乗せされます。ですから、学生アルバイト以外、パートタイム全員が社会保険に加入することになります。そういった背景もあり、応募者には働くことに対して意欲の高い人が多いように感じます。
「時給制」の場合、勤労時間で自動的に昇給するということですが、成長が少なく、時給に見合う働きをしていないと感じられる従業員などはいませんか。
多様な人が数多く集まって働く会社組織ですから、当然、人によって「差」は生じます。差があるのに、同じ時給であることが納得できない人もいるでしょう。しかし、コストコが考えているのは、常に管理職を目指して頑張って働いてほしいという、一人ひとりの成長です。仮に今は同じ時給でも、パフォーマンスが違うのであれば、パフォーマンスの高い人が管理職に登用される確率は高く、より早くプロモートされます。逆に言うと、時給に見合う仕事をしていない人は、勤務時間数で昇給しても最終的には“頭打ち”になります。長い目で見れば、このような差が生じてくるわけで、キャリア形成の可能性が大きく違ってくるのです。