人事マネジメント「解体新書」

「社内公募制度」「FA制度」で
適材適所の人材管理を実現する【後編 (1/2ページ)

2013/8/26
『前編』では、「社内公募制度」「FA制度」の狙いと、制度を成功させるために人事部が行うべきサポーについて紹介した。『後編』は、大手電機メーカーA社の事例を通して、両制度を運用する際のポイントや工夫すべき点、今後の展開などを見ていく。
A社における「社内公募制度」の変遷と「FA制度」導入の背景
◆人材活用・育成の視点に立ち、社員の意思を契機とする異動の仕組みを用意

大手電機メーカーA社は、「人間こそ当社の最高資産」と考え、人材活用の視点として、以下のようなビジョンを掲げている。

  • かけがえのない人材である社員に対して、その有する無限の可能性を具現化する機会を提供し、個人の能力の伸長を図り、人間としての価値を高めることに努める
  • 人事管理の基本は「人材の活用と育成」であり、当社は常に社員一人ひとりの活用と育成の視点に立ち、適材適所の配置を実現する

これらのビジョンは、人材育成としての人事異動にも貫かれている。通常の「会社の意思」による異動だけでなく、社員の意思を契機とする異動の仕組みとして、以前から「社内公募制度」、そして「FA制度」を併用しているのがA社の大きな特徴である。まず、「社内公募制度」を導入してきた歴史から振り返ってみることにしよう。

◆「社内公募制度」の歴史

A社の「社内公募制度」は古く、1980年にさかのぼる。当初は、「前線部門の強化のための公募」として、営業・サービスといった顧客に直結する部門の人材強化・拡充が目的だった。社員に対して「本人の意欲が適性を作るという信念に基づき、強い意欲・希望を持った人材を広く募る」といった趣旨を掲げたが、この考え方は現在も基本的に変わらない。「応募者と公募部門との両者が合意した場合には、現在の所属部門による異動拒否を認めない」という基本ルールも、この時期に定められている。これ以降、全社的な観点での人材ニーズに応えていくという考え方の下、成長分野や新規事業など、人材強化が必要と判断とされた部門を対象として、必要があればその都度、公募を実施してきた。その後、A社を取り巻く環境が大きく変化していく中で、事業構造も大きく変化。このような状況下、成長分野・強化分野に人材を集中させる施策を展開していく上で、会社の意図としての人事異動(人材シフト)に加え、強い意欲・希望を持った人材を活かす「社内公募制度」は、その役割を果たしていくことになる。

「社内公募制度」が導入されてから10 年余りが経過した1990年代後半、制度の見直しを行った。一つ目は、対象とする部門の拡大である。全社的な観点での人材ニーズの“認定”を受けなくても、各部門で人材ニーズがあれば、いずれの部門でも募集できるように改定したのだ。二つ目は、社員本人が人事部に直接応募できる形にしたこと。社員は、上長を経由して応募する必要がなくなった。これら公募条件に関する規制が緩和されたことにより、適用される範囲は広がり、応募しやすい状況が形成されていった。社員のモチベーションも向上し、自己実現のチャンスが大きく広がることになった。

加えて、ガバナンスのあり方として、連結決算・グループ経営重視の流れが定着していく中で、事業分社や子会社の再編が加速化。人材活用においても、グループ全体での有効活用が重要な課題となっていった。そこで、2000年代に入り、連結子会社への異動や子会社社員のA社への異動を可能とする「グループ内公募制度」へと改定する。これによりA社の「社内公募制度」は、グループベースでの社員のモチベーションアップを図るとともに、グループ内人的資源のより一層の有効活用を図る制度へと、大きくステップアップしていくことになった。

  【社内公募制度の導入】 【制度改定(公募条件の緩和)】 【グループ内公募制度へと拡大】
募集対象 強化分野・成長分野に限定 募集分野の制限を撤廃 国内連結子会社も含め、グループに拡大
募集時期 人材ニーズをとりまとめ、年に1回実施 人材ニーズがあり次第、随時実施 人材ニーズがあり次第、随時実施
告知方法 各部署へ回覧 社内ホームページに掲載 グループのホームページに掲載
応募方法 上長経由で提出 本人が直接、人事部へ提出 本人が直接、事業部門へ提出
◆「FA制度」の新設

ITバブルが崩壊した後、A社に未曽有の経営危機が訪れた。深刻な会社業績の低迷の下、V字回復を実現していくために、社員のモチベーションを回復させ、組織を活性化していくことが、重要な課題として再浮上してきた。そこで、人事部と各事業部門で幾度となく話し合いを行った結果、「社員のスキルと仕事のミスマッチを解消し、社員が新しい仕事にチャレンジできる仕組みを導入すべき」との合意が形成されていく。それを受けてスタートしたのが「FA制度」である。「FA制度」は、社内にあるすべての部門・職種を対象とする。そこで、社員がチャレンジしたい仕事を自ら選択するという形となる。「社内公募制度」が“社内求人”であるのに対して、「FA制度」は“社内求職”ということになるだろう。

このような“想い”で導入された「FA制度」は、社員が自らのキャリア形成へと積極的にチャレンジできる機会を拡大し、個人の意欲のみならず、人材流動化時代における「エンプロイアビリティ」を向上させ、モチベーションアップと成果の拡大を図るという社員活性化の視点を中心としている。それと同時に、人材の適材配置を進めるという人材活用の視点も併せ持つ制度として、評価できるものと言えるだろう。

「社内公募制度」「FA制度」を導入した最大の狙いは、全社の活性化です。自己責任原則の徹底、個の尊重を実現する上で、一人ひとりの強みを十二分に発揮してもらうため、また、個々人が活性化するためには、多様な選択肢を用意する必要があります。これまで、異動・配置は会社の専権事項として行ってきましたが、会社が仕事の内容を決めておきながら「自己責任」や「個の尊重」を掲げても、社員は納得感を得られません。組織・個人のそれぞれのレベルで自己責任原則を徹底させていく以上、自らキャリアを形成できる仕組み、すなわちキャリア形成の自己裁量範囲を拡大することが必要です。そこで、意欲のある人材を自分自身が希望する部署に配することで本人のやる気を引き出し、全社の活性化につながると考えて導入したわけです(人事部)


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1件中 11件を表示

1. *****さん 農林・水産・鉱業 福岡県
前職時代の10数年前にジョブチャレンジ制度として、社内リクルート制・FA制を導入した経験があります。
昨年現在の会社に転職し、新しい人事制度の一つとして現在ジョブチャレンジ制度を検討中ですが、今回の記事は考え方や用語の点でいちいち腑に落ちる内容であり、大変心強く思いました。

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