社風や仕事内容は、本当に合っている?
時期尚早な転職先の決断が、後悔へとつながった求職者のケース
仕事人生に大きな影響が出る可能性も… 転職時に焦って決断してはいけない理由
これまでの経験を活かすにしても、新しいキャリアに挑戦するにしても、転職を成功させる上で重要なのが、転職先の社風や仕事内容と自分との相性をじっくり見極めることだろう。しかし、実際に転職活動を行っていると、早い決断を迫られることがある。企業側が採用を急いでいる場合や、求職者側が経済的な事情で早く働きたいと焦っている場合などだ。特に後者の場合は、「まあこの程度なら…」と本当は自分に合っていない仕事や会社であっても妥協してしまいがちだ。しかし、それがのちのちの後悔へとつながることも珍しくない。
バタバタした状況での決断が失敗に…
「今から考えると、前回の転職では、早く働きたいという思いだけで会社を決めてしまいました」
転職相談で、これまでのキャリアを振り返りながらCさんはそう話してくれた。
「当時、会社の業績が停滞していて早期退職者の募集があったんです。なんとなく将来への不安を感じていたので、これはいい機会だと思って応募しました。そこから急いで転職活動を始めたのですが、引き継ぎなどで忙しく、面接を受ける時間もなかなか作れない状態でした」
幸いすぐに来てほしいという企業が見つかり、Cさんは退職した翌日から新しい職場に出勤することになった。表向きには転職は成功で、家族も安心してくれた。しかし、あまりにもバタバタした中で決断したため、自分の本当にやりたい仕事かどうかをきちんと考える余裕がなかったという。
「確かにそれまでの経験を活かせる仕事ではありました。でも、会社の規模が小さくなったこともあって、やっていくうちに仕事のスケール感や、やりがいなどの面で物足りなさを感じ始めたんです」
飲み会で同じ時期に早期退職した元同僚と再会して話を聞いているうちに、規模の大きい同業他社に転職した方がよかったのではないかと思うようになったそうだ。
「そこで、半年ほど前から転職活動を再開したのですが…」
Cさんは前回転職してから2年も経っていない。再転職までの期間が短いことと、小規模な企業に勤務したことも影響しているのか、大手はことごとく不採用になってしまっているのだという。確かに大手企業は、前回の転職からのスパンが短い人を好まない傾向がある。何より、中堅・中小から大手への転職が難しいのは、国内の転職事情を知っていれば常識だろう。
「別の人材紹介会社のコンサルタントの方からも、同じ話を聞きました。前の会社は一応は大手でしたから、早期退職した時にじっくり時間をかけてでも同業の大手各社を当たっていれば、何とかなったのかもしれません」
Cさんのようなケースはそう珍しいことではない。早期退職やリストラなどで急に転職しなくてはならなくなった場合、限られた時間で自分本来の志向や適性などを冷静に分析して、転職活動に活かせる人は少ないからだ。
「次は、じっくりと企業と自分との相性を見極めたいと思っています」
そこまでのCさんの考え方は、非常に正しいものだった。