人材も東京一極集中
「即戦力人材を採用したい」地方企業の悩み
政治、経済、文化など、さまざまな場面で見られる「東京一極集中」は、人材市場においても例外ではない。東京を拠点とする大企業や外資系企業には、高い技術や専門知識を持つ優秀な人材が多いが、そういった人材を採用したいと思った場合、転居が必要な地方企業よりも首都圏の企業のほうが圧倒的に有利だ。地方企業が良い人材を採用するには、どのような工夫が必要なのだろうか――。
役員みずから人材紹介会社を訪問
「お忙しい中お時間をいただき、本当にありがとうございます」
その日、私たちのオフィスを訪ねてきたのは、日本海沿いの大都市・N市に本社を置くB社の常務と人事課長だった。「採用したい人材のイメージを直接説明したい」と、わざわざN市から都内まで来てくれたのである。採用する企業側が紹介会社のオフィスまで来るケースは、かなり珍しい。
「本来はこちらからおうかがいするべきなのに、大変恐縮です」
「実は昨日から、東京の人材紹介会社さんを訪問しているんです。私どもは今回の採用に大変力を入れているので、失礼かとは思いますが、十数社に募集をお願いする予定です」
「いえいえ、紹介会社は併用されるのが一般的ですので、お気になさらないでください」
B社が欲しいのは、事業企画などができる即戦力人材だという。役員まで同行し、その本気度が伝わってくる。年齢は問わないなど、条件も緩和してあった。
しかし、地方の企業への人材紹介はそう簡単ではない。首都圏の転職希望者のほとんどは同じ首都圏にある企業を望んでいるからだ。転居や単身赴任が前提となる地方企業の場合、それだけで候補からはずれてしまうこともある。転居を希望していない人に無理に勧めると信頼を失ってしまう恐れもあるので、あまり熱心に紹介しない紹介会社も多い。
しかし、B社のように真剣に取り組む様子を見せられると、「なんとかしてあげたい」という気持ちが強くなってくる。