新規事業を50以上立ち上げたフリーランサーが語る
企業と「“解像度の高い”仕事のプロ」とのいい関係づくり
株式会社守屋実事務所
守屋実さん
解像度の高いプロは量稽古を積んでいる証拠
とはいえ現時点では、フリーランスの登用に不安を抱える企業が少なくありません。
単純に、前例がないだけだと思います。例えば私の事務所は法人化していますが、メンバーは私一人だけです。法人と言えば法人ですが、個人と言えば個人、そんな感じです。しかし、「株式会社守屋実事務所」と「守屋実」では、発揮するパフォーマンスはまったく同じでも、「取引を開始するにあたっての手続き、形式要件」としては、扱いが全く違うのです。あるいは昨日まで赤の他人だったはずなのに、自社の従業員になった途端に信用のある存在になる。この違いはいったいどこから生まれるのでしょうか。まったくもって不思議です。
新しく企業と取引するにしろ、従業員を雇うにしろ、打ち合わせや面接をして、すり合わせをして、お互いの合意のもとに契約を交わしますよね。それと同じことを、フリーランスを相手にした場合も行えばいいだけのことです。その人ができること、得意とすることと、今会社が求めている能力を照らし合わせて、お願いしたいと思ったら発注する。それでいいのです。フリーランスだからと特別視する必要はなく、企業側の先入観を外せば状況は変わると思います。
「仕事のプロ」を目利きするのに、コツはありますか。
何ができるかを自分から打ち出せている人は、その部分の量稽古を積んでいると考えていいのではないでしょうか。たとえば私の場合、「新規事業士」などといった資格や職業名がないのでわかりにくいかもしれませんが、「新規事業」という一本の軸の通った経験を積んでいます。
そしてその経験値を、わかりやすく伝えられるように表現を工夫し、そして知っていただきたい方に知っていただけるように発信をしています。例えば私は、私の職業人人生を、「50=17+19+14」という一つの数式に凝縮して表現しています。年齢と立ち上げた事業の数を可視化した数式なのです。これは、数式を覚えてほしいわけではありません。でも「××をやりました」「○○をやっています」など、長々と羅列するより、パッと見てインパクトを残すことができる、と考えたのです。
フリーランスにとって大事なのは、第一想起されること。「××なら○○さん」と思い出して指名されるくらいでないと、ダンピングに巻き込まれてしまいます。フリーランスは、ピン芸人と同じだと思うんです。わかりやすい芸風だと、番組での立ち位置などをイメージしやすい。解像度を高めて、クリアなメッセージを届けることがポイントなのです。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。