社員の評価者となる管理職はどれくらい訓練されている?成果主義を導入した企業の「考課者研修」の実態とは?
年功ではなく、仕事の成果を重視する処遇制度では、現場の管理職が部下の社員を公正・透明に評価することが、基本中の基本です。もし、成果をあげていると思われていた人が低い評価になったり、意外な人が高い評価になったりすると、職場に違和感が広がって、社員の士気は下がり、会社全体の生産性も下がってしまうでしょう。成果主義的な処遇制度がうまくいくかどうかは、制度を実際に運用する管理職しだい、と言うことができますが、では、管理職はそのための訓練をどれくらい受けているでしょうか? 企業の「考課者研修」の事情について、労務行政研究所が行った調査から探ってみます。
1000人以上の企業では9割近くが実施、300人未満では半数以下
まず、図表(1)をごらんください。これは、現場管理職(考課者)の研修を実施しているかどうかについて、企業の規模別に調べた結果です(ここで言う「考課者研修」とは、考課者たる管理監督者層などに対して、評価制度の仕組みや考え方を十分理解させるとともに、評価の精度や納得性を高め、あるいは評価・面談などを通して部下の育成・モラールアップにつなげるなど、評価関連スキルの向上を目的に実施する研修、と定義します)。
規模が大きいほど考課者研修を実施している割合が高くなっています。1000人以上の企業では88.1%と9割近くに達し、300~999人の企業でも61.5%と6割を超えていますが、300人未満の企業では45.8%と半数を下回っています。全体では、実施している企業が68.6%、という結果です。
考課者研修を実施している企業の中で、その際に外部の専門機関・コンサルタントなどを利用しているかどうか、を尋ねたところ、各規模の企業とも、利用「している」「していない」の間にさほど大きな開きはみられませんでした。図表(2)をごらんください。
1000人以上の企業では「利用していない」、300~999人の企業と300人未満の企業では「利用している」がそれぞれ半数程度を占めています。全体では、「利用している」は47.9%、「まったく利用していない」は46.5%で、ほぼ拮抗する結果です。ある程度外部のノウハウを取り入れて行うのか、自社の問題点を最も効果的に抽出できる社内リソースのみ活用して運営するのか、各社の考え方によって判断の分かれるところでしょう。
「評価のノウハウ」をつける前に「制度自体の確認・把握」の研修
では、考課者研修を実施している企業では、1回の研修にどれくらいの時間をかけているのでしょうか。
図表(3)をごらんください。1000人以上の企業では「1日」(38.9%)、300~999人の企業と300人未満の企業では「1日未満」(各41.7%、45.5%)がそれぞれ多くなっています。全体では、「1日未満」が約4割(39.4%)と最も多い結果になりました。「1日」(33.8%)と合わせると、7割以上の企業が「1日以下」で実施していることになります。
図表(4)は、考課者研修のプログラムなどにどのような内容を盛り込んでいるかを尋ねた結果です(複数回答)。全体の企業の94.4%と大多数が「評価制度の仕組み」を取り上げています。評価のノウハウやテクニックといったスキルの習得も重要と考えられますが、まずは制度自体の確認・把握が大前提ということでしょうか。以下、「評価エラーの基礎知識」「ケーススタディによる演習」(ともに71.8%)、「フィードバックの方法」(63.4%)、「評価面談の実習(ロールプレイング)」(39.4%)など、評価スキルの向上に関するものが続きます。
研修が「大いに役立っている」企業は1000人以上の規模で約17%
では、考課者研修を実施している企業では、それが制度の運用において役立っているのでしょうか。それとも役立っていないのでしょうか。図表(5)をごらんください。
各規模の企業とも、「ある程度役立っている」が最も多く、とくに300人未満の企業では100%を占めています。「大いに役立っている」は1000人以上の企業(16.7%)だけ。また、300~999人の企業で「あまり役立っていない」が20.8%と、2割を超えている点が目を引きます。
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