労使および専門家の計478人に聞く
2024年賃上げの見通し
~定昇込みで3.66%と予測、23年実績並みの水準となる~
労務行政研究所
民間調査機関の労務行政研究所(理事長:猪股 宏)では、1974年から毎年、来る賃金交渉の動向を把握するための参考資料として、労・使の当事者および労働経済分野の専門家を対象に、「賃上げ等に関するアンケート調査」を実施しています。
このほど、2024年の調査結果がまとまりましたので紹介いたします。
-
2024年の賃上げ見通し(東証プライム上場クラス)
全回答者478人の平均で「1万1399円・3.66%」(定期昇給分を含む)となった。賃上げ率は23年実績並みの水準となる予測である。労使別に見た平均値は、労働側1万1941円・3.85%、経営側1万1052円・3.54%で、労働側が経営側を889円・0.31ポイント上回る[図表1])。 -
自社における2024年定昇・ベアの実施
24年の定期昇給(定昇)については、労使とも「実施すべき」「実施する予定」が約9割と大半を占める。ベースアップ(ベア)について、労働側は「実施すべき」が91.8%で9割を超え、経営側は「実施する予定」が48.4%で、「実施しない予定」の21.9%を大きく上回る[図表2]。
1.2024年の賃上げ見通し(東証プライム上場クラス)
- 賃上げ額・率は東証プライム上場クラスの一般的な水準を目安に回答いただいたもので、定期昇給込みのものである
- 賃上げ額・率を回答する際の目安として、調査票上に以下のデータを示している
①厚生労働省調査による主要企業の23年賃上げ実績は1万1245円・3.60%
②上記から推測される大企業の賃上げ前ベースは31万2640円程度
③定期昇給のみの場合は1.8%(5630円)程度
実際の賃上げ見通し [図表1]
24年の賃上げ見通しは、全回答者の平均で1万1399円・3.66%となった[図表1]。厚生労働省調査における主要企業の23年賃上げ実績(1万1245円・3.60%)から154円・0.06ポイントの微増となり、23年実績並みの水準となる見通しである(<調査結果のポイント>参照)。
賃上げ率の分布を見ると、労働側は「4.0~4.1%」が19.7%で最も多く、「3.0~3.1%」が18.9%で続く。経営側は「3.0~3.1%」が22.7%で最も多く、次いで「4.0~4.1%」が12.5%である。
労使別の額・率の平均は、労働側が1万1941円・3.85%、経営側が1万1052円・3.54%となっており、労働側が経営側を889円・0.31ポイント上回っている。
2.自社における2024年定昇・ベアの実施
定昇の実施 [図表2]
労働側と経営側の回答者に対し、自社における24年の賃金制度上の定期昇給(定昇。賃金カーブ維持分を含む)およびベースアップ(ベア。賃金改善分を含む)の実施意向・検討状況を尋ねた[図表2]。なお、労働側・経営側の回答者は、それぞれ異なる企業に属しているケースが多い点に留意いただきたい。
定昇については、労働側で88.5%が「実施すべき」、経営側で89.8%が「実施する予定」と回答し、労使とも大半が実施に前向きな意向を示している。
ベアの実施 [図表2~3]
ベアに関して、労働側では「実施すべき」が91.8%で大半を占めた[図表2]。経営側では「実施する予定」が48.4%と約半数を占め、「実施しない予定」(21.9%)を大きく上回っている。
[図表3]には、各年におけるベアを「実施すべき」(労働側)、「実施する予定」(経営側)との回答割合の推移を示している。
経営側では、企業業績の伸びや官製春闘などの影響を受け、ベアを「実施する予定」の割合が15年に35.7%と増加。16~19年は“20~30%台”で推移していたが、20年に16.9%と2割を下回り、21年は4.8%とさらに低下。22年に17.0%と若干上昇した後、23年は41.6%と大幅に上昇し、24年はさらに上昇して48.4%となり過去10年で最高となった。
なお、20年調査から経営側の設問項目に「検討中」を追加しており、19年以前とは回答傾向が異なる可能性があるため、比較の際は留意いただきたい。
ベアの23年の実績と24年の予定(経営側) [図表4]
経営側について、自社におけるベアの“23年の実績”と“24年の予定”を示したのが[図表4]である。23年の実績は、「実施した」が71.1%と、「実施しなかった」の25.8%を大幅に上回っている。
23年の実績と24年の予定を併せて見ると、両年とも“実施”が42.2%で最も多く、両年とも“実施しない”は13.3%にとどまっている。
3.24年春季交渉で課題・焦点となる人事施策
交渉で話し合う予定の人事施策[図表5]
賃上げ以外で24年春季交渉において課題・焦点になると思われる人事施策6項目を挙げ、それぞれについて交渉で話し合う予定があるかを労働側・経営側に尋ねた[図表5]。
「交渉で話し合う予定」の割合を見ると、労働側では「②人材の採用・確保」が41.3%で最も多く、「⑤諸手当の見直し」が34.7%、「①時間外労働の削減・抑制」が31.0%で続いている。一方、経営側では全項目において「交渉で話し合う予定」の割合が労働側より少ないものの、労働側と同様に「②人材の採用・確保」が19.1%と最多である。以降は、「①時間外労働の削減・抑制」が15.4%、「⑤諸手当の見直し」が14.0%と続いている。
-
調査時期
023年12月1日~2024年1月15日 -
調査対象
7357人。内訳は下記のとおり
①労働側
東証プライムおよびスタンダード上場企業の労組委員長等1433人(労組がない企業は除く)
②経営側
全国証券市場の上場企業と、上場企業に匹敵する非上場企業の人事・労務担当部長等4473人
③労働経済分野の専門家
主要報道機関の論説委員・解説委員、大学教授、労働経済関係の専門家、コンサルタントなど1451人 -
回答者数および集計対象
労働側244人、経営側128人、専門家106人の合計478人。ただし、6ページの3.については、労働側271人、経営側136人
労政時報は、WEBや定期刊行誌を通して、人事部門の実務対応や課題解決をサポートする会員制のデータベースサービスです。1930年に定期刊行誌を創刊して以来、常に時代の変化に合わせて、人事・労務の最新情報を提供し続けています。忙しい人事パーソンの実務をWEB労政時報がサポートします。
(運営・発行:株式会社労務行政、編集:一般財団法人労務行政研究所)
http://www.rosei.jp/
人事の専門メディアやシンクタンクが発表した調査・研究の中から、いま人事として知っておきたい情報をピックアップしました。