雇用契約書の締結について
雇用契約書を従業員の自宅に郵送し、署名のうえ返送していただく運用を行っておりますが、返送がない従業員に対して、封筒や同封の案内文に「指定期間内に返送がない場合は契約を締結したものとみなす」と通知した場合、実際にその期限を過ぎた時点で、雇用契約が成立したと法的に認められるのか確認させていただきたく存じます。
ご多忙のところ恐縮ですが、ご教授いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/07/02 17:46 ID:QA-0154805
- 200さん
- 東京都/運輸・倉庫・輸送(企業規模 101~300人)
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.結論
「返送がなければ契約成立とみなす」という一方的な通知だけでは、雇用契約が法的に成立したとはみなされません。
契約成立には、申込みに対する承諾の明示(または黙示)が必要であり、「沈黙は承諾とならない」というのが法原則です(民法第521条2項)。
2.法的根拠・考え方
▼ 民法第521条(契約の成立)
第1項:契約は、申込みに対して相手方が承諾をしたときに成立する。
第2項:承諾の意思表示は、明示または黙示によらなければならず、単に返事をしないことをもって承諾とはみなされない。
つまり、
相手方の「承諾の意思表示」が必要で、
単に返送しない(沈黙)ことをもって、「承諾した=契約成立」とみなすことはできません。
3.雇用契約の特殊性(労働契約法との関係)
雇用契約(労働契約)は、合意によって成立する契約(諾成契約)です。
実務上、契約書に署名押印がなくても、当事者間の合意(就業開始、給与支払、命令従属など)が認められれば、契約は成立していると評価されることもあります。
しかし、一方的な「みなし規定」だけで成立するとは評価されにくいのが原則です。
4.実務的な問題点
「返送がなければ契約成立とみなす」と記載していた場合:
状況→法的リスク・解釈
実際に労務提供・給与支払いがある→ 契約成立とみなされる(黙示の合意)
一切連絡・返送もなく、労務提供もない→ 契約成立と評価されない可能性が高い(民法上も労基法上も)
後日トラブル(例:条件相違など)発生→「一方的に成立とした」とみなされ、会社側が不利になる可能性あり
5. 実務対応のポイント
「返送がなければ成立とみなす」ではなく、以下のような対応が望ましいです。
案内文の文言を調整(例)
○月○日までに署名・返送がない場合には、契約条件をご承諾いただいたものとみなし、
改めて確認のご連絡を差し上げる場合がございます。
なお、署名をもって契約成立とさせていただくため、必ずご返送をお願いいたします。
※「みなす」としつつも、再確認の可能性や署名の必要性を明示することで、トラブル回避になります。
6.返送がない場合の対応案
電話やメール等で確認の意思表示を得る(録音・記録推奨)
出勤初日に署名をさせる(勤務開始日=契約成立日とみなす)
「労働条件通知書」だけでも郵送する(労基法第15条の義務を最低限果たす)
7.まとめ
項目→回答
「返送がない場合は契約成立とみなす」通知は有効か?→ 原則として無効(民法上、黙示の承諾とならない)
実際に労務が始まった場合は?→ 黙示の合意により契約成立と評価されうる
推奨対応→返送依頼の文言調整+本人確認の徹底
以上です。よろしくお願い申し上げます。
投稿日:2025/07/02 19:08 ID:QA-0154825
相談者より
ご回答ありがとうございました。
投稿日:2025/07/03 12:35 ID:QA-0154868大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
雇用契約は双方の確かな合意をもってのみ、成立いたします。
従って「締結したものとみなす」のようなみなし効力を持つことはできません。
郵送は受取記録が残る郵送方法で郵送し、期日までの対応がなければ、
電話対応へ切替え状況確認を行うのがよろしいでしょう。
その際、改めて提出期日設定を行い、提出なければ採用取り消しの可能性もある
旨をお伝えいただければ、これから入社される方であれば通常であれば、
対応するものかと思案いたします。
投稿日:2025/07/03 07:29 ID:QA-0154832
相談者より
ご回答ありがとうございました。
投稿日:2025/07/03 12:35 ID:QA-0154869大変参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
「雇用契約書」は、使用者と労働者の間に成立した雇用契約の内容を記したものであり、「労務の提供」と「報酬の支払い」につき労働者と使用者の間に合意がなされたことを証する書面として機能するものです。
ただし、雇用契約は、「労務の提供」と「報酬の支払い」に関して労使双方で意思の合致があれば口頭でも成立するものであって、必ずしも書面行為が必要とはされておらず、雇用契約書の作成は法律上も義務づけられてはおりません。
ただし、「言った」、「言わない」といった類のトラブルを防止するという意味においては、「書面」を交わした方が良いというのは言うまでもないことです。
労使間ですでに口頭での意思の合致があるのであれば、法律上、それで契約は成立しておりますので、「指定期間内に返送がない場合は契約を締結したものとみなす」とするのは、御社の自由です。
投稿日:2025/07/03 07:35 ID:QA-0154833
相談者より
ご回答ありがとうございました。
投稿日:2025/07/03 12:35 ID:QA-0154870大変参考になった
プロフェッショナルからの回答

- 渡井 保仁
- 渡井マネジメントオフィス 代表
内定の法的性質は、始期付解約権留保付労働契約とされており、雇用契約の成立という観点からすれば、就業開始日前であっても条件付きの雇用契約が成立しているといえます。しかし、雇用契約締結の段階で、雇用契約書の返送がないというのは、その契約内容について従業員の合意を得ていない状態であり、「指定期間内に返送がない場合は契約を締結したものとみなす」と一方的に通知し、その期限が過ぎた場合、それをもって雇用契約が法的に有効に成立したとみなすことはできないものと解されます。
(参考)労働契約法第6条(労働契約の成立)「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。」
投稿日:2025/07/03 12:59 ID:QA-0154871
相談者より
ご回答ありがとうございました。
投稿日:2025/07/04 10:06 ID:QA-0154905大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、雇用契約書を送付されるまでの状況によるものといえます。
つまり、送付以前に当人と契約内容について話をされ同意済みという事でしたら、その時点で実質的に契約は成立しており、契約書送付については最終的な確認に過ぎないものといえますので、そうした通知をされる事で有効になるものといえるでしょう。
そうではなく、契約内容について明確な同意を得られていないという事でしたら、一方的な通知のみで契約は成立しませんので注意が必要です。
投稿日:2025/07/03 22:56 ID:QA-0154891
相談者より
ご回答ありがとうございました。
投稿日:2025/07/04 10:06 ID:QA-0154906大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
法律面での確認は必ず専門家、弁護士にお願いいたします。人事的には、トラブルや混乱を回避するのが最優先課題と考えられます。
「返送が無ければ契約とみなす」としても、仮に口頭で契約成立だとしても証拠が無く、トラブル原因になります。
逆に「年月日までに返送無ければ契約しない」とするのは証拠も固められ、現実的対応だと思います。
投稿日:2025/07/04 00:56 ID:QA-0154896
相談者より
ご回答ありがとうございました。
投稿日:2025/07/04 10:07 ID:QA-0154907大変参考になった
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