「組織定着に関する研究調査レポート」を発表
採用前に行うオンボーディング施策として有効なのは求職者にリアルな情報を開示する「リアリスティック・ジョブ・プレビュー」オンボーディングを行うタイミングでもっとも重要な期間は入社直後~3カ月の段階
株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:土屋芳明)は、「マイナビ 組織定着に関する研究調査レポート」を発表しました。本調査レポートは、雇用の流動化が進む昨今で、企業にとって重要な課題となっている人材の“定着”と“活躍”について、「オンボーディング※」に着目し分析をしたものです。
「オンボーディング」とは
リアリティ・ショックを緩和し、組織定着を促進するための施策のことを指す。
採用後の初期段階において、個人が組織にスムーズに適応できるように支援する一連のプロセスであり、業務理解の促進、関係構築の支援、組織文化の浸透、心理的安全性の確保などが含まれる。
【TOPICS】
■ 採用前のオンボーディング施策として有効なのは、求職者にリアルな情報を開示する「リアリスティック・ジョブ・プレビュー(RJP)」
■ オンボーディングを行うタイミングでもっとも重要な期間は入社直後~3カ月の段階
■ 入社直後から重点的に実施するオンボーディング施策として有効なのは、「OJT実施施策」>「コミュニティ施策」>「メンターとの面談施策」
【調査概要】
■ 採用前段階のオンボーディング施策として有効なのは、採用活動時にリアルな情報を開示する「リアリスティック・ジョブ・プレビュー」
人材定着においては、入社前に抱く期待感と入社後のギャップ(=リアリティ・ショック)が課題とされている。オンボーディング施策としてどのような施策が有効かを調査するため、企業が採用活動を行う際に、求職者にリアルな情報を開示すること(いわゆる、「リアリスティック・ジョブ・プレビュー<RJP>」)に着目し調査をおこなった。今回は企業が採用活動時にRJPを実施した社員(新卒入社および中途入社者)と、実施してない社員で、入社後のリアリティ・ショックの状態を比較した。
リアリティ・ショックには「自己成長ショック(自身の成長につながる職場かどうかのギャップ)」「職場環境ショック(職場環境の快適さに関するギャップ)」「組織人材能力ショック(組織の能力に関するギャップ)」の3つがあるが、すべてにおいて、採用時にRJPをした層の方が、入社前に抱いていた会社や職務への期待・理想に対してのギャップが少ないという結果が得られた。
採用時に職務内容・評価制度などの実態を正確に伝えることが、入社後の理想と現実との悪いギャップを抑制することができることが分かった。
■ オンボーディングを行うタイミングでもっとも重要な期間は入社直後~3カ月の段階
入社後の1年間の中で、入社者へ最も「リアリティ・ショック」を与える期間はいつなのかを調査した。今回は入社後1年間の期間を3つに分け(「ターム1:入社直後~3カ月未満」、「ターム2:3カ月~6カ月未満」、「ターム3:6カ月~12カ月未満」)、各タームごとに、入社先に定着したグループと早期に離職したグループに対して、「リアリティ・ショック」の状態の変化を分析した。
その結果、組織に定着するグループと早期離職するグループともに、時間経過によって、「リアリティ・ショック」の状態には顕著な変化が見られず、時間が経過することで「リアリティ・ショック」が自然と良い状態へと好転することは期待できない可能性が示唆された。このことから、入社初期の「リアリティ・ショック」をいかに抑制するかが、定着率向上の鍵となる可能性があることがわかった。
■ 入社直後から重点的に実施するオンボーディング施策として有効な可能性が高いのは「OJT施策」>「コミュニティ施策」>「メンターとの面談施策」
オンボーディング施策として何が有効かを分析するため、代表的なオンボーディング施策である「OJT※1施策」、「メンター面談施策」、「コミュニティ施策(飲み会やランチ会など定期的に開催される社内の集まり)」を対象に、各タームのリアリティ・ショック(自己成長ショック/職場環境ショック/組織人材能力ショック)に与える影響の度合いを重回帰分析※2を用いて調査した。
※1 On the Job Trainingの略称。上司や先輩にあたる社員が部下や後輩に、実務を通して技術や知識を指導する教育手法を指す
※2 複数の要因(=独立変数)が、ある結果(=従属変数)にどのように影響しているか」を分析する統計手法。今回は組織の施策を独立変数、リアリティ・ショックを従属変数とした重回帰分析を実施した
調査の結果、「OJT施策」は全期間を通してリアリティ・ショックの抑制に一定の効果が見られ、抑制効果がもっとも大きいことが示唆された。ただし、ごくわずかではあるが、「職場環境ショック」「組織人材ショック」を抑制する効果が時間経過とともに減少する傾向が認められた。
「コミュニティ施策」は、各タームを通して抑制の影響が伺え、時間経過による差が認められなかった。
一方、「メンターとの面談施策」もおおよそ全期間を通じてリアリティ・ショックの抑制に寄与していたが、わずかではあるが、「自己成長ショック」を抑制する効果が時間経過とともに減少する傾向が伺えた。
【調査担当者コメント】
今回の調査では、新入社員が職場に定着するために影響する要因を明らかにするため、「組織社会化のプロセス」と「リアリティ・ショック抑制施策と時間的変遷」の2つの視点で分析しました。
特に注目すべき結果として、入社前後の情報ギャップがリアリティ・ショックの発生に強く関係していることが分かりました。このギャップを埋める手段として有効なのがRJP(Realistic Job Preview)です。業務内容や職場文化、期待される役割などを事前に明示することで、新入社員の「期待と現実のズレ」を減らすことが可能になることが示唆されました。
また、入社後3カ月間の支援がオンボーディングにおいて極めて重要であることも明らかになりました。初期段階での継続的なサポートが、新入社員の職場適応を促進する大きな要因となります。
さらに、OJTの実施がリアリティ・ショックの抑制において効果的であることも確認され、OJTを通じて、実務を通じた学びと上司・同僚との関係性構築が同時に進むことで、定着につながる可能性が高いと考えられます。
今後のオンボーディング施策の設計においては、RJPの活用、入社後3カ月間の支援体制の強化、そしてOJTの体系的な運用が、組織定着を促す重要な要素になると考えられます。
株式会社マイナビ 就職情報事業本部 キャリアデザイン総合研究所準備室 室長 小笠原 洋平
【調査概要】
・調査内容:労働者に関する定着・離職の要素および属性の差
・調査手法:調査会社モニターを用いたインターネット調査
・調査機関:2025年7月
・調査対象者:1,713名
◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(マイナビ /2025年10月10日発表・同社プレスリリースより転載)
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