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となりの人事部人事制度掲載日:2017/08/10

株式会社クレディセゾン:
がんとともに生きていく時代 
社員が治療と仕事を両立するために人事ができることとは(前編)

株式会社クレディセゾン 取締役 営業推進事業部長 兼 戦略人事部 キャリア開発室長 武田 雅子さん

株式会社クレディセゾン 取締役 営業推進事業部長 兼 戦略人事部 キャリア開発室長 武田 雅子さん

国立がん研究センターの発表したデータによると、2012年時点でがん患者の約三人に一人が生産年齢(15〜64歳)で罹患(りかん)しており、働き盛り世代でがんにかかる人は少なくありません。一方でがん経験者の就労を支援する団体「一般社団法人CSRプロジェクト」が行った調査(2010)によれば、がんと診断された後、21%が依願退職や解雇、廃業となり、平均年収が約36%減少するなど、がんの治療を行いながら働きつづけることの難しさが浮き彫りになっています。社員ががんの診断を受けた場合、人事はどのようにして仕事とがん治療の両立を支援していけばいいのでしょうか。クレジットカード会社の株式会社クレディセゾンで取締役を務める武田雅子さんは、36歳の時に乳がんと診断され、手術を受けた後、職場に復帰された経験の持ち主。復職後には、人事部内に健康管理室を設置し、休職者がスムーズに職場復帰できるよう、「復職プログラム」を導入しました。前編では武田さんご自身の体験をうかがいながら、がんと診断された社員に対する職場や人事のサポート体制について探っていきます。

Profile

武田 雅子さん
株式会社クレディセゾン 取締役 営業推進事業部長 兼 戦略人事部 キャリア開発室長
たけだ・まさこ●1989年クレディセゾン入社。セゾンカウンターに配属後、全国5拠点にてショップマスターを経験。2002年営業推進部業務統括課、2003年営業計画部トレーニング課と人事部人材開発課にて課長職。2008年女性初の人事部長を経て2014年より現職。また、「一般社団法人CSRプロジェクト」の理事として、講演やカウンセリングなどにも取り組んでいる。

がん告知から復帰に至るまでの心の動き

 武田さんがクレディセゾンに入社されたのは、1989年ですね。

バブルの空気感のようなものが、まだ残っていた頃です。男女雇用機会均等法の施行後でしたが、女性は数年働いたら寿退社、という雰囲気もまだありましたね。私はセゾンカウンターに配属されたのですが、上司にも改善策をどんどん提案するタイプで、2年目からショップマスターを任せられることになりました。9名のメンバーのうち半数以上は年上でしたが、今のようにマネジメントの参考になるような書籍も少なく、戸惑うことばかりで、毎日のように泣いていました。

西東京エリアと大阪、栃木の5拠点でショップマスターを経験した後、2003年に営業計画部トレーニング課と人事部人材開発課の課長を兼務することになりました。この時も、当初は営業計画部に着任して、「もう少し予算をどうにかしてくれないか」などと人事部に意見していたところ、「そんなに言うなら、やってみなさい」と言われ、人事部も兼務することになったんです。人材開発課で全社の人材開発計画を組んで、トレーニング課でその実施を受け持って……望遠鏡と虫眼鏡を使い分けながら、時には自分で投げた球を打ち返すようなこともありました。

 ちょうどその頃、武田さんご自身が乳がんを患われたのですね。

はい。ただ1年くらいは、がんだとはっきりわからなかったんです。疑いがあって、2、3ヵ月に一度病院へ検査に訪れていたのですが、2004年の4月、36歳のときにようやく乳がんと判明しました。朝の通勤途中に主治医の先生から「武田さん、がんだったよ! 一緒にがんばろう!」と連絡があったんです。「がんの告知って、こんなにカジュアルなものなの?」と思いましたね(笑)。先生も私が仕事好きだと知っていたので、ようやく病巣がわかって積極的な治療を始められる、というのが率直な気持ちだったのでしょう。ちょうどその頃は新卒採用が始まっていたので、両親よりも先に、まずは上司に相談しました。

その日の午前中は予定通りに面接をこなし、午後の面接は部長にお願いしました。あの日、部長は二人分の面接を、書記を入れながら一人で回してくれました。その後も部長や同僚に少しずつ負担してもらいながら、やれることはすべて前倒しし、第1クールの最終面接まで終わらせたんです。その後、5月の終わりに手術をしたのですが、通常なら術後1週間ほどで退院できるところ、私の場合はなかなかリンパ液が止まらず、ドレーン(誘導菅)を外すことができなくて、18日間入院しました。傷病休職は3週間だったので、入院の前後に1、2日ほど猶予を取って、職場に復帰したことになります。

 かなり早い復帰ですね。

そうですね。でも比較的、病院でも元気だったんですよ。ある日には、部下が病室に書類を抱えてやってきて、3時間くらい一緒に仕事をしていたほどです。私の負担にならないよう、代表して二人だけが来てくれました。

 同じ職場の仲間ががんにかかったら、どんな対応をすればいいのかわからなかったり、心配するあまり、はれ物に触るような態度を取ってしまったりする人も多そうです。

「がん」とわかった途端に、周囲と薄皮1枚を隔てているような感覚になったんですね。告知を受けたときには爆弾を受けたような衝撃があって、思考停止のような状況になりましたが、それでもなんとか気を取り直して「がんと向き合っていこう」と、治療や手術など無数にあるTO DOをこなしていくわけです。しかし、無事に手術が終わって治療も一段落し、日常が戻ってくると、ふとした瞬間に実感するんです。「あぁ、私、がんだったんだ」と。周囲と微妙な距離感があって、これまで仕事で実績を出してきたはずなのに、「私=がん」と見られて、必要以上に配慮され、仕事を「取られてしまう」ような感覚。「かわいそう」と思われたくないけれど、みんなそう思ってるんだろうな……と、ポツンとひとりぼっちになってしまったような気がしたんです。

もちろん、体調と相談しながらではあるのですが、がん治療をする社員が出てきたら、どう仕事量や時間のバランスを取るのか、本人の納得感も得られるようにして、しっかりとコミュニケーションを取っていくべきですね。勝手に仕事を調整されてしまうと、「私をきちんと見てもらえていない」と感じてしまいますから。本人だって、好きでがんになったわけではないし、あらがえないことのうちの一つだと思うんです。子育て中に時短勤務で働く社員と同様、何ができて何ができないのか、本人はどうしたいのかについてしっかりと対話することが必要です。

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この記事ジャンル 健康経営

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