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大介護時代、到来!日本の“働き方”を変えるためにICTはここまで進化した

HRアワード2014 受賞記念対談
いわゆる団塊世代が75歳以上の後期高齢者になると、日本は「大介護時代」を迎えると言われます。現在、働きながら家族の介護を担っている人は全国で約291万人。また、年間約10万人が介護のためにキャリアを諦めざるをえない“介護離職”に追い込まれています。離職者の中には、企業で重要なポジションを占める40、50代の人材も少なくありません。仕事と介護の両立支援は喫緊の社会的課題と言われていますが、とりわけ火急の対応を迫られているのが、ワークスタイルの変革。ビジネスの成長を担保しながら、時間と場所に囚われない柔軟な働き方を推進するために、企業には何が求められているのでしょうか。働き方改善の達人で、企業が介護問題に向き合う必要性をいちはやく指摘したワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室叔恵さんと、自らも家族の介護を担いながら、グローバルビジネスの最先端で活躍する日本マイクロソフト業務執行役員の越川慎司さんに、“いつでもどこでも成果を上げる働き方”について、大いに語り合っていただきました。
本対談は、ビデオでご覧いただけます
プロフィール
小室淑恵氏 photo
小室 淑恵氏(こむろ・よしえ)
株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長
900社以上へのコンサルティング実績を持ち、残業を減らして業績を上げる「働き方見直しコンサルティング」に定評がある。2児の母として子育てをしながら効率の良い働き方を実践。『6時に帰るチーム術』など著書多数。消費増税集中点検会合、内閣府「子ども・子育て会議」他複数公務を兼務。金沢工業大学客員教授。
内閣府 参事官(子ども・子育て支援新制度担当)

越川慎司氏 photo
越川 慎司氏(こしかわ・しんじ)
日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員
国内通信会社、米系通信会社を経て、ITベンチャーを起業、CEOとして活躍した後、米・マイクロソフトに入社。昨年まで約3年間、製品の品質向上プロジェクトの責任者である“CQO”(Chief Quality Officer)を務める。1年間に地球を5,6周回るほどの海外渡航をこなしながら、プライベートでは母親の介護を抱える日々。時間と場所に制約されない働き方を実践し、ビジネスの成果を挙げながら仕事とプライベートとの両立を実現。

“男の職場”が働き方の見直しを迫られている理由とは

小室: ワーク・ライフバランスを起業して以来、私は一貫して企業を対象に、働き方の見直しコンサルティングを手がけてきました。弊社では、企業から依頼を受けると、8ヵ月程度を1タームとしてそのクライアントに入り、労働時間の削減推進を支援します。なぜそうするのか、結論から申し上げると、働き方を見直し、労働時間を短縮することに成功した企業は多くの場合、利益率が非常に伸びるんですね。最近は民間企業だけでなく、たとえば経済産業省のように、長時間労働の問題が深刻化している公的な機関からのニーズも増えています。ワーク・ライフバランス推進の機運が、日本のさまざまな職場に広がりつつある手応えを感じているところです。

越川慎司氏 Photo

越川: 私も、新卒で最初に就職したのが国内の某大手通信会社だったので、当時は長時間労働があたりまえという環境で格闘していました。その後、外資系企業に移ったり、自らベンチャー企業を立ち上げたりといった紆余曲折のキャリアを経て、10年前に日本マイクロソフトに入社し、弊社では過去3年間、製品の品質向上プロジェクトの責任者である“CQO”(Chief Quality Officer)というポジションを担当しました。CQOは、何か問題が起こるたびに米国本社へ飛んで行き、その問題を解決して帰ってくるというような職務ですから、仕事柄、日本国内で過ごせる期間は海外へ出ている期間より、どうしても短くなってしまいます。移動もものすごく多く、1年間に地球を5周も6周もすることがあります。ただ一方で、プライベートでは母親の介護という事情を抱えていまして。ここ数年は、ビジネスパーソンとしての自分と主たる介護者としての自分とのバランスを保つために、時間と場所に制約されない働き方を模索、実践する毎日です。

小室: なるほど。実際に越川さんご自身が、仕事と介護の両立に取り組んでいらっしゃるわけですね。実はいま、日本企業全体においても、重要な役割を担う世代がこの家族の介護問題に直面していて、企業としてはどう対応すべきか、経営層の問題意識もにわかに高まってきています。もともとどの企業も、仕事と育児の両立支援や長時間労働の弊害の緩和といった観点から、働き方の変革が必要という認識自体はすでに持っていましたが、なかなか決定打がなく、何年経っても実際の取り組みが進まないという印象は否めませんでした。ところが、ここ数年でしょうか。他業種に比べ男性従業員の比率が高い建設業や商社など、一見ワーク・ライフバランスとは縁遠いような意外な業界からも、急にお問い合わせをいただくようになったのです。越川さんと同じように、家族の介護を抱える男性管理職の存在がその理由でした。

社員の2割が主たる介護者、その8割が男性という例も

小室: ある大手商社の例をあげると、当初、人事部の認識では、家族の介護を担う立場の従業員は社内でせいぜい数人程度だろうと見込んでいたのですが、いざアンケート調査を実施してみると、なんと全体の18%がすでに主たる介護者で、しかもその80%は男性社員でした。人事部は、現状を把握しているつもりでも、実際はまったく把握できていなかったわけです。この介護という切実な問題が浮上してきたことで、働く個人はもちろん会社側も、働く時間や場所の“制約”を、いよいよ強く意識せざるをえなくなりました。ワークスタイルを本気で変えなくてはいけないという危機感が急速に広がっているのを、私たちも実感しています。

越川: 全社員の2割近くが主たる介護者で、その8割が男性というデータは驚きですね。私と同じような立場の方が、そんなにたくさんいらっしゃるとは。私の母は要介護2で、人工透析を頻繁に受けなければなりません。病院の送り迎えや付き添いも必要です。また病状が急変しやすいという事情もあり、実際のところ、仕事より母の健康を優先せざるをえない場面は少なくありません。ただ私自身は、介護を負担だとか苦労だとか、あまりネガティブには考えていないのです。母のケアに万全を期すことで仕事に集中できるし、介護を担う責任が働きがいを高めてもくれますから。また、仕事で成果が出れば、介護も頑張ろうというモチベーションが生まれます。私の中では、仕事と介護がお互いに相乗効果をもたらしているような感覚なんです。とはいえ、現実的には介護を第一に考えないと、両立どころか、共倒れにもなりかねません。仕事の都合に介護を合わせるという選択肢はありえないので、働き方のほうで工夫するしかないのが現状です。時間と場所を限定した従来のワークスタイルは、介護を担う私の実情に合わないわけですから。

小室: 越川さんのような事情を抱える社員に向けて、御社では実際、どういう両立支援が行なわれているのでしょう。取り組みの基本姿勢やポイントをお聞かせください。

越川: 弊社では「いつでもどこでも成果を出せるしくみとカルチャー」によって、時間と場所に制約されない柔軟な働き方を実現しています。具体的なポイントは次の三つです。まず一つ目は、女性社員の育休はもちろん、男性である私が介護のために休みを取ったり、働き方そのものを変えたりすることも理解され、認められる価値観を組織全体で共有していること。これが非常に重要です。ただし企業である以上、利益を上げることが至上命題ですから、働き方の変革もそのための手段でなければなりません。逆に言うと、働き方を変えても、成果が出ていればきちんと評価されるべきであり、弊社の場合、そういう評価制度や服務制度を含めた制度面が整っていることが二つ目のポイントです。三つ目には、いつでもどこでも同じように働ける環境を実現するための、ICTのツール面が充実していることが挙げられるでしょう。

いつ、どこでも働けるICT環境で2ケタ成長を実現

小室: 御社の場合、ICTの環境についてはとくに先進的なイメージがあります。時間や場所に囚われずに成果を出すためのソリューションとして、具体的にどのようなツールが社員に提供されているのでしょうか。

越川: 考え方はきわめてシンプルで、すべての社員が、いつ、どこにいても、自席にいるのとまったく同じコミュニケーション環境や作業環境を使って、業務を進められるようになっています。たとえば電話でコミュニケーションがとりたければ、パソコンでもタブレットでもスマートフォンでも、あらゆる端末から受発信ができますし、ExcelやWord、PowerPoint の作業も時間と場所を選びません。データはすべてクラウド上で保存・管理されるため、どのデバイスからでも迅速かつ安全にアクセスできるのです。また、私のチームのメンバーは世界中に散らばっているので、弊社製品のオンライン会議システム「Lync」が欠かせません。このソリューションを使えば、彼らとの意思疎通に不便や不自由を感じることなく、さまざまな重要事項の決定もスムーズに下すことができるわけです。

小室淑恵氏 越川慎司氏 対談の様子

小室: 実は私たちも日常的にLyncを使っているのですが、本当に便利ですね。もともと弊社のメンバーは二児、三児の母ばかり。最近は初めて育児を経験する社員も増えてきて、もはやLyncなしでは業務が成り立ちません。時間と場所にとらわれない働き方ができるかどうかは、私たちにとってそれほどに重大な“死活問題”なのです。弊社では、一つのクライアントを2、3人で担当する「複数担当制」を敷いていますが、その複数の担当者にもそれぞれ家庭の事情があるため、なかなか予定が合いません。たとえばクライアントへの提案書をつくるのに、全員で直接顔をあわせて案を練り上げようと思っても、期限までにその時間がまったく取れない、というようなことがよくあります。そんなときこそ、Lyncをフル活用。お互い別々の場所にいても、移動中のすき間時間にオンライン会議で話を詰めたり、提案資料を同時編集したりして、効率よく次のアクションに繋いでいます。また、重要な会議を夕方近くに行わざるをえない場合でも、育児や介護の都合で短時間勤務を選択している社員は、自宅などからLyncで参加できるので便利です。このシステムを使いこなせば、それぞれ事情はあっても、仕事の成果で困ることはありません。職場で誰ひとり肩身の狭い思いをしなくて済むという意味でも、本当に助かっています。御社ではいかがですか。関連制度やICT環境を整備し、働き方の変革を進めたことで、実際のビジネスの成果に結びついたという具体例があれば、お聞かせください。

越川: 弊社では、いつでもどこでも成果が出せる柔軟な働き方を実践するために、5年前からテレワークを本格的に導入しました。結果としてそれ以降、売上は毎年2ケタ成長を続けています。しかもその間、従業員数は変わらず、労働時間も増えていません。非常に健全な状態で、2ケタ成長を持続しているわけです。それはもっぱら、社員一人ひとりの生産性の向上によるものと見て、間違いないでしょう。

テレワーク導入を成功させるポイントは“時間自律性”

小室: 日本ではものすごい勢いで労働力人口の減少が進み、近年は好業績の企業でさえ、人材を確保することが容易ではなくなってきました。一方で毎年、労働市場から退出していく定年退職者の数は大量です。それが何を意味するかというと、以前より少ない人数で、以前より増えた仕事を、各人が事情を抱えながら担っていかなくてはいけないということでしょう。振り返ると、1960~90年代の日本は、若い労働力が豊富で、社会保障のかかる高齢者層が比較的薄い、非常に恵まれた社会構造の時期にありました。「人口ボーナス期」と呼ばれる現象で、実際、日本経済はこの時期に急拡大しましたし、個人レベルでも「当時の日本は強かった」という成功体験の記憶が強く、それをいまだに引きずっているふしがあります。人口ボーナス期の社会は若者が多いので、長時間労働モデルで勝負できるんですね。中国、韓国、タイなどの国々がいま、その時期にあたっています。

越川: わが国の人口ボーナス期は終わってしまった、と。

小室: とっくに終わって、二度とやってきません。にもかかわらず、企業も個人も過去の成功が忘れられないのか、放っておくと、従業員が自ら働き過ぎ、長時間労働に陥る傾向さえ見受けられます。現在の日本は人口ボーナス期から、少ない労働力で多くの高齢者を支えなければならない「人口オーナス期」と呼ばれる時期に移りました。国家としても、きわめてハンドリングの難しい分岐点にさしかかったといっていいでしょう。この難局を乗り越えられるか否か、大きなカギを握るのが他でもない、「働き方の転換」なのです。私が見る限り、御社のように、この転換に成功した企業は短時間で生産性や利益率が向上しますが、逆に人口ボーナス期の就労観を捨てきれない企業は、負のスパイラルから逃れられません。利益が上がらず労働環境が悪化すると、人材確保もままならない。すると、ますます業績が低迷するという悪循環にはまってしまうわけです。

越川: 人材難の時代にあっては、優秀な人材を採るのと同じくらい、いえ、それ以上に、優秀な人材を組織にひきつけ、辞めさせないことが重要になるでしょう。弊社が、社員の柔軟なワークスタイルを支援するのは、まさにそのための施策であり、実際、さまざまな境遇の社員に受け入れられている手応えも感じています。たとえば、女性社員の退職率。5年前にテレワークを導入して以降、これが顕著に減少し、IT業界の平均的な退職率を相当程度下回っていることも、ワークスタイル変革の成果の一つだと考えています。

小室: ある試算によると、日本企業は女性社員に対し、結婚・出産のタイミングと重なりやすい入社7、8年目までに、研修などで約1000万円の投資をしているといわれます。本来、会社としてそれがペイするのは、女性社員がマネジメントに昇進してからでしょう。にもかかわらず、実際には多くの企業が、結婚・出産のタイミングで、彼女たちに次々と辞められてしまっているのです。そうしたなか、御社では、女性社員の定着も進んでいるということですから、本当に素晴らしいですね。

越川: 従業員一人ひとりの生産性が上がっていることと、退職率が低下して優秀な人材が辞めなくなったこと――私たちはこの二つの結果から、テレワークによるワークスタイル変革にはやはり効果がある、価値があると、あらためて確信を深めています。それを実証するために、昨年10月、「テレワーク推奨強化週間」を実施しました。これは、趣旨にご賛同いただいた関連会社やパートナー企業を含む32の法人、計約3000名の参加を得て、5日間いっせいにテレワークを行うという取り組みです。弊社だけだと、IT企業だからできるだろう、といわれかねませんから。実施後のアンケート調査によると、テレワークの必要性については、参加者のおよそ8割から「現在の仕事や生活において必要」「将来の社会で必要」といった前向きなフィードバックがありました。一方で、4分の1程度の人が「テレワークに対してさぼり誘発などのマイナスイメージがある」と回答したほか、そもそも「テレワークの制度がない」「オンライン会議のしくみがない」といった声も寄せられています。必要性は感じているものの、いざ実行するとなると、カルチャー、制度、ICT環境のそれぞれに課題があり、まだまだハードルは高いという印象ですね。小室さんが支援に入られている企業での状況はいかがですか。

小室淑恵氏 Photo

小室: テレワークを成功させるために抑えるべきポイントの一つは、働く人自身の「時間自律性」です。オフィスで働いていても、時間を自律的に使えていない人は意外と少なくありません。どうしても好きな仕事から手を出して、やりたくないことは先延ばしにするとか、同僚たちが退社してからでないと乗ってこないとか。そういう人たちは、会社でもそんな調子なのに、管理の届かない場所で仕事をさせたらどうなるか、上司が不安に思うのも無理はありません。私たちが企業の支援に入る場合は、まずオフィスにいるときから時間自律性のトレーニングをして、それがきちんとできるようになって初めて在宅勤務に移すようにします。在宅で働ける“権利”といっては変ですが、テレワークのメリットと時間自律性は表裏一体、いわば権利と義務のような関係にあることを強調し、社員の時間自律性を育成するプログラムを導入したりします。また、仕事の「見える化・共有化」が徹底されていないと、いつでもどこでもオフィスにいるのと同じように働き、成果を出すことはできません。誰もが自分にしか使いこなせない資料を、デスクの自分にしかわからない場所にしまい込んだりしている、そういう職場の文化を変えていかないと。オフィスから在宅へ移行する前に、ふだんから意識しておさえておかなければならないポイントはほかにもいろいろあります。そのあたりはぜひ、5月の「HRカンファレンス」のディスカッションでくわしくお話しさせてください。

越川: 「時間自律性」ですか。とても興味深いキーワードですね。さらに掘り下げたお話を次の機会にぜひお願いします。私も、自分が実際にICT環境をどう使い、どう工夫して生産性を上げているのか、デモをまじえながらご紹介したいと思っています。弊社のワークスタイルに欠かせないMicrosoft Office 365 をデモを交えながらご紹介したいと思っています。5月の「HRカンファレンス」でまたお目にかかれるのを楽しみにしております。

「HRアワード」受賞しました
「Link」ビデオ会議の様子
「Lync」ビデオ会議の様子
Microsoft Office 365 ロゴ
日本マイクロソフトが提供する、多様な働き方を実現する 「Microsoft Office 365」が、日本の人事部「HR アワード2014」プロフェッショナル人事・労務管理部門 最優秀賞を受賞しました。
今回「HRアワード」を受賞した Office 365 は、Word やExcel、メールや情報共有、オンライン会議など、仕事に必要な作業とコミュニケーションの環境を提供するクラウドサービスです。マイクロソフト社内での活用はもちろん、大企業から中堅中小企業まで、すでに多くのお客様が、 Office 365 を導入され、テレワークをはじめとした多様な働き方を実現しています。導入企業様の取り組みについてはこちらの導入事例サイトでも詳しくご紹介をしておりますので、ぜひご覧ください。(Office 365 導入事例

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