転職活動中に起こった、予想外の事態――
改めて、自分のキャリアを見直す求職者
人生の転機…思いもよらぬ出来事… 求職者は何を思い、どんな行動をしたのか
- 1
- 2
再応募は可能になったものの…
二次面接の前に、きちんと辞退の連絡をしてくれたNさん。社会人としては常識だが、意外とこれができない人は多い。電話がつながらず、やっと連絡がついたと思ったら、「急な出張で連絡する余裕がありませんでした。先方には、辞退とお伝えください」と言われることもある。辞退しなくてもとっくの昔に不採用になっているのだが…。
私は緊急事態の中でもきちんと連絡をくれたNさんの姿勢を企業側に伝えた。一次面接での評価が良かったこともあり、企業側はNさんの内定について辞退ではなく、いったん白紙に戻すという対応にしてくれた。
「Nさんを配属しようとしていた部門は、しばらくしたらまた新しい募集を出すと思います。その時は、二次面接から受けられるようにしますので、ぜひ再応募するように伝えてください」
通常、企業は一度辞退した候補者をあまり好まない。どんな理由があろうと、本当は転職する気がないのではないか、他社と天秤にかけていて時間稼ぎをしているだけではないのか…などと思ってしまうようだ。Nさんのように、「また応募してください」と言われるのはかなり稀だといっていい。もちろん天災が影響していることも大きかっただろう。
Nさんにそのことを伝えると、非常に喜んでくれた。普通なら縁が切れてしまうところをつないだのだから、私も人材紹介コンサルタントとして最低限の仕事ができたと思った。しかし、Nさんはその企業に再び応募することはなかった。
「復旧の仕事をしているうちに、自分がやりたいと思う仕事の内容が変わってきました。しばらくは今の仕事を続けながら、新しい分野に挑戦するための経験を積もうと思います」
一年後にNさんからもらったメールには、そんな内容が書かれていた。あの時、中越地震がなければNさんは第一志望の企業に転職していたはずだ。天災に限らず、思いもよらぬ事態や出来事に遭遇した時、人は自身のキャリアを見つめ直すことになるのだろう。
- 1
- 2