転職活動中に起こった、予想外の事態――
改めて、自分のキャリアを見直す求職者
人生の転機…思いもよらぬ出来事… 求職者は何を思い、どんな行動をしたのか
人生の中でも大きな決断が必要となる転職。できれば冷静な状態でじっくり考えて結論を出したいと思うのが普通だろう。ところが、ある日突然、「冷静に考えている場合ではない」という事態が訪れることがある。今回の東日本大震災のような大きな災害があった時だ。あるいは、リーマンショックのような経済的な危機に直面した場合も同じかもしれない。キャリアアップのチャンスをつかみかけていても、「こんな状況で転職活動を続けていいものか…」と考えてしまう人もいるだろう。
残念ですが辞退させてください
「次回の面接は、予定通り行われるのでしょうか?」
東日本大震災が発生してからしばらくの間、企業の採用部門にこうした問い合わせの電話を何度かけたことだろうか。東京都内では大きな被害がなかったとはいえ、これだけの規模の災害となると、何がどこでどう影響してくるか分からない。
「弊社はすべて予定通りですよ。それよりも候補者の方は大丈夫ですか。こういう大きな災害があると事情が変わってしまう方もいらっしゃるのではないですか」
企業の中には、こんな気遣いをしてくれる採用担当者もいる。それを聞いて、私は、以前転職をサポートしたNさんのことを思い出していた。
「二次面接には、どうしても行けそうにありません」
Nさんから急ぎの電話がかかってきたのは、2004年の中越地震の直後だった。当時、在職しながら転職活動を行っていたNさん。第一志望の企業の二次面接が入っていたが、地震で被害を受けた取引先の企業の応援に行かなくてはならなくなったというのだ。
「しばらくは、新潟に出張したままになりそうです」
「しばらくというのはどれぐらいですか。事情を伝えれば、先方も待ってくれると思いますが…」
「それが行ってみないと何ともいえないのです。それに…」
なんと、Nさんは取引先の復旧作業を行う責任者になったというのだ。
「二次面接を受けて内定が出たとしても、半年ぐらいは復旧の仕事が終わりそうにありません。先方の企業に迷惑はかけられませんので、大変残念ですが今回は辞退させてください」
Nさんにとっては、キャリアアップできる転職のチャンスだった。私も残念だが、いちばん悔しい思いをしているのはNさんだろう。
「事情はよく分かりました。先方にはNさんの置かれている立場をお伝えします。その上で辞退ではなく、いったん白紙に戻していただけるように頼んでみます。半年後でも一年後でも、再応募できるならその方がいいですよね」