楽しく働き、成長することができる
「プレイフル」な学び方・働き方とは?(後編)[前編を読む]
同志社女子大学現代社会学部現代こども学科 教授
上田信行さん
「Can」ではなく「How」で考え、課題に集中していく
「プレイフル」な環境を作っていくために、必要なことは何ですか。
何かをやる時に、物事を常に「How can I do it?(どうやったらできるだろうか)」で考えることです。さらに「How can we do it?」で考えると、仲間がいる分、さらにいいでしょう。とにかく「How」で考えるようにすると、言い訳を考えることがなくなり、全てが「どうしたらいいのか」という課題に直結したポジティブな思考となっていきます。というのも何かをやる時に、関心が自分に向くか、課題に向くかで大きく違ってくるからです。
「Can I do it?(私にできるだろうか)」と、ネガティブに考えてはいけません。「Can」だと何か困難な課題に出会った時に、関心が自分に向いてしまうことになって、ついつい自分の能力のことを考えてしまい、不安になって動けなくなってしまうからです。ところが「How」で課題に関心が向くと、とにかく何とかしようと考え、前向きな対応ができるようになります。また課題を皆で共同注視していけば、さまざまな視点からアイデアや施策が出てくることになり、課題解決がよりダイナミックに行われます。共同で物事に当たるということは、一緒になって考え、共感してくれる仲間の存在を強く感じることができます。これは組織における大きな求心力となっていきます。
「プレイフル」で大事なのは、真剣に向き合うことですが、その時に、一緒に向き合ってくれる仲間がいること。そして、それがうまくいかなかった時も、仲間が「大丈夫だ」とサポートしてくる環境があることが大切だと思います。そういう「組織文化・風土」のあることが、人を挑戦へと駆り立てる源になるのではないでしょうか。
僕は、人の資質として、挑戦できる人、挑戦できない人がいるとは考えていません。挑戦できるかどうかは、状況がそうさせているだけなのです。決して他人事にしないで、自分のことにして、状況を自分のpassionに火がつくように変えていくことです。それは、自分自身の責任です。だからこそ、自分で全力で何とかしていかなければなりません。自分で何とかしていこうとすると、もっともっと面白くなってきて、さらに他の人が巻き込まれてくると、もっと面白くなっていきます。
だからこそ、大きな仕事にチャレンジして、いままでの既成概念を壊してほしいと思います。失敗もあるかもしれませんが、大事なのは、そこから立ち直ることです。すると、気づきが生まれ、新たな成長が促されます。だから一番のリスクとは、リスクテイクをしないことです。このことに、すでに皆さんは気づいていると思うのですが。
昔はそういうことではなかったわけですね。
現在と違って、あまり変化がなかったからでしょう。リスクを取る必要もなく、定年まで無難に過ごすことができました。しかし、いまや終身雇用は危うくなり、誰にでも途中で退職を迫られる可能性があります。否応なく、リスクを取らなくてはならない時代になっています。変化が激しく、何が起こるか分からない時代にあっては、そういうことを楽しめるかどうかが、とても大事な要件となります。確かに、不安な人も多いでしょう。老後の心配などをまともに考えたら、税金や年金の問題をはじめとして、頭の痛いことばかりです。しかし、それでも目の前で起こっている変化を楽しもう、現状を受け入れ、その中でどれだけ楽しめるかというのが、これから本当に必要な才能、能力だと思っています。
そのためにも、たくさんの友人を持ち、最先端のテクノロジーが使えるといいですね。さまざまな情報に接することができるわけですから、いろいろな場に出て行って、どんどんと動くことです。立ち止まったら、そこで成長も止まります。だからこそ、動いてクラッシュして、倒れて、また立ち上がる。それを本気でやっている限り、「プレイフル」なのです。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。