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キーパーソンが語る“人と組織”

楽しく働き、成長することができる
「プレイフル」な学び方・働き方とは?(前編)[1/3ページ]

2015/2/20

上田信行さん(同志社女子大学現代社会学部現代こども学科 教授)

近年、企業における学びのあり方や個人のワークスタイルが、大きく変化しています。そうした中、ユニークなワークショップやラーニングデザインで知られる同志社女子大学の上田信行教授は、「プレイフル」という概念を生み出し、仕事をより楽しみながら学びを促していくスタイルを提唱しています。「プレイフル」であることが、個人と組織の学びを進化させ、創造性を高めていくとの考えからです。変化の激しい時代だからこそ求められる「プレイフル」な個人、そして「プレイフル」な組織とは、どのように実現していくことができるのでしょうか。上田先生に、楽しく働き成長していくための考え方と具体的な方法論について、詳しいお話を伺いました。
Profile
うえだ・のぶゆき●1950年奈良県生まれ。同志社大学を卒業後、セントラルミシガン大学院、ハーバード大学教育大学院で学び、教育学博士(Ed.D.)を取得。ハーバードでは幼児教育番組『セサミストリート』や学習環境デザインの研究、モチベーションの研究を行う。帰国後は大学で教鞭を取りながら、さまざまな場所で先進的な学習環境やワークショップをデザインしてきた。著書に『プレイフル・シンキング』(宣伝会議)、中原淳氏との共著『プレイフル・ラーニング』(三省堂)などがある。

「プレイフル」とは何か?

―― 上田先生は「プレイフル」という概念を以前から主張されていますが、そもそも「プレイフル」とはどういうことでしょうか。

「プレイフル」とは、物事に対してワクワク・ドキドキする心の状態を指す言葉で、仕事を楽しむためのエンジンとして考え出した概念です。自分の行動や考え方を多角的にながめ、状況に応じて自らをコントロールすることができれば、仕事をより楽しく豊かにすることができます。そういうことの実現できる会社は、働く人のモチベーションを高め、学びを促し、クリエイティブな仕事に溢れた「プレイフル・カンパニー」と言えるでしょう。

では、そのような「プレイフル・カンパニー」を実現するためには、どうすればいいのでしょうか。最初に確認しておきたいのは、「プレイフル・カンパニー」は単に楽しい会社ではないということです。一番大事なのは、本気で何かに取り組む会社であること。人はそういう状態に置かれたら、気持ちが高揚し、チャレンジしたいという気持ちになります。ただ一方で、リスクも高くなります。本気で全力でやらないと、失敗してしまいますから。そういう意味でも、「プレイフル・カンパニー」ではチャレンジが奨励されることが大事です。たとえ失敗しても周囲から非難されるのではなく、「次にまたチャレンジすればいい」と言われるような、プレイフルな環境でなければいけません。

ところで、僕は昨年(2014年)8月に、MITのメディアラボの会議に参加しました。子ども向けに開発されたプログラミング言語「スクラッチ(Scratch)」の会議で、プログラミング教育が描く「創造的学び」の未来ビジョンを語り合うものでした。子どもたちはスクラッチを使って自分でプログラミングを行い、試行錯誤しながらゲームやビデオを作っていきます。その制作の考え方が「リミックス(再構成)」です。創造性とはゼロから生まれるものではなく、いろいろな人のアイデアから触発されて、それをリミックスしていく中で生まれてきます。ここではまず誰かが作品を作り、それをWebで発表します。それを面白いと思った人がダウンロードしてリミックスして、再びWebに上げていく。この作業を繰り返していくわけですが、これは上の句を読んだら次の人が下の句を読むといった日本の「連歌」に近い行為です。

―― 一種のコラボレーションということでしょうか。

僕の横に誰かがいて創作するのは、水平的なコラボレーションです。ここでは、「垂直型のコラボレーション」が展開されていることに注目してください。僕が何かをして、それを次の人が受け取って何かを加えて、またその次の人がそこに何かを加えていく。ただ一緒にやっているわけではないので、お互いの時間はずれています。

これと同じようなことを、先日も行いました。『それから、それから』という絵本を授業で取り扱ったのですが、最初の人が何か絵を書いた後、次の人がそのストーリーからインスピレーションを受けて絵を書いていきます。こうした連鎖を続けていく中で、最終的にとても面白い絵本ができるのです。

この他者との協同による「可能性」や「自信」の拡張が「スクラッチ」の世界で繰り広げられ、世界中の子どもたちがお互いに刺激し合って、一人では考えつかないような面白い作品がどんどん生まれてくるのです。作品が制作されていく様子を見て、僕自身、とてもワクワク・ドキドキした気持ちになりました。周りから刺激を受けることがいかに大切であり、創造性へとつながっていくのだなと改めて感じました。

―― 周囲との関わりの中から、創造性が生まれてくるわけですね。

創造性で言えば、制約のある中でいろいろと工夫して考え出すことが重要です。例えば、主婦が晩御飯にカレーを作ろうと思って冷蔵庫を開けてみたところ、肝心の肉がなかった。しかし、替わりになりそうな食材があるから、これを使ってカレーを作ろうとしてみる。このように、いま目の前にあるモノを使って何か別の新しいモノを作りだしていくことを「ブリコラージュ」というのですが、実はこれが素晴らしい発想なのです。制約のある状況の中で、「これがないからできない」ではなく、「だからこそ何か新しいモノがきるのではないか」と考えるのです。こういうポジティブな発想が、これから世の中でとても大事になると思います。こういうことも全て含めて、「プレイフル」と呼んでもいいと思います。

―― 「プレイフル」を実践していく中で、ポイントとなるのは何ですか。

考えてばかりいないで、何か思いついたらまず「形(プロトタイプ)」にすることです。形にしてみると、周囲の人たちとシェアすることができますから。「なるほど、そういうことを考えていたのか」と相手に自分の考えていることが伝わり、「だったら、こうしたほうがもっと良くなるかもしれない」とアドバイスやフィードバックを受けることができます。そしてすぐ修正していけば、どんどん良くなっていきます。うまくいかなかった場合でも、「もっといいものがつくれる!」という思いで、辛抱強く次のアクションを考え、実行すればいいのです。この「まだまだ!」「もっといける!」という気持ち、「イェット(YET)」がとても大切なのです。(上田先生の師匠であるスタンフォード大学の心理学教授キャロル・ドゥエック(Carol S.Dweck)のTEDのプレゼン参照 The Power of believing that you can improve
YETのマインドセットを持って、プロトタイピングのサイクルをできるだけ短くして、どんどん形にしていくことがポイントです。こうした一連の行為が続くことで、学びの面でも大きな効果が期待できます。


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