私傷病により通院する労働者のための
「治療休暇制度」導入の実務
一般社団法人CSRプロジェクト
近藤 明美(特定社会保険労務士)/桜井 なおみ
5. 規程例
既存の就業規則の「休暇」に関する規定に追加して設けるか、治療休暇規程として別に定めるかなどは選択することができます。「検討すべき主な制度内容」の項目を参考に自社の実情に合わせて作成してください。
治療休暇制度規程(例)
(目的)
第1条 この規程は、○○株式会社(以下「会社」という)における、治療休暇の取扱いを定める。
(定義)
第2条 この規程において「治療休暇」とは、私傷病により長期治療が必要な従業員について、所定労働日に通院する際に利用できる休暇をいう。
(対象者)
第3条 この規程で定める治療休暇が取得できる従業員とは、第4条に掲げる疾患に罹患している従業員であって、次の条件を満たす者とする。
(1)勤続年数が○年以上あること
(2)週の所定労働時間が○時間以上あること
(長期治療が必要な疾患)
第4条 治療休暇の対象となる疾患は次の通りとする。
(1)悪性新生物(がん)
(2)精神および行動の障害
(3)循環器系の疾患(心筋梗塞、脳梗塞、くも膜下出血等)
(4)筋骨格系および結合組織の疾患(腰椎椎間板ヘルニア等)
(5)特定疾患治療研究事業対象疾患(難病)
(6)その他前各号に準ずると会社が認める疾患
(休暇の日数)
第5条 対象従業員は、各年次について○日の治療休暇を取得することができる。ただし、当該年度における残日数を翌年度に繰り越すことはできない。
(休暇の単位)
第6条 治療休暇は、通院の時間帯により、1日単位の他、半日単位、時間単位で取得することができる。ただし、半日単位で取得した場合の始業および就業の時刻は以下の通りとする。
午前半休 午後○時から午後○時
午後半休 午前○時から午前○時
(申請等)
第7条 治療休暇の取得を希望する者は、原則として○日前までに所定の手続きにより、会社に申請し、許可を受けなければならない。取得申請の取消し、日時の変更等の場合も、同様とする。なお、取得申請時には必要に応じて医師の診断書を提出するものとする。
2 従業員は、申請のあった日時に治療休暇を取得する。ただし、会社は、業務の都合によりやむを得ない場合、治療に支障のない可能な範囲で他の日時に変更できるものとする。
3 会社は、従業員が指定した日時にできる限り休暇を取得することができるよう代替要員の確保を図るなど状況に応じた配慮を行わなくてはならない。
(休暇中の給与)
第8条 会社は従業員が治療休暇を取得したときは、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う。
(規定外事項)
第9条 この規程に定めのない事由が発生したときは、都度詮議して定めることとする。
付則
この規程は、平成○年○月○日より適用する
こんどう・あけみ ● 特定社会保険労務士。一般社団法人CSRプロジェクト代表理事。株式会社KSR取締役。2008年に近藤社会保険労務士事務所開設。自らもがん経験者である社会保険労務士として、2009年より桜井なおみ氏のがん経験者・家族支援活動に参加。現在、がんと就労問題に取り組み、働き盛りのがん経験者や企業からの相談を受けている。著書「がんと一緒に働こう!必携CSRハンドブック」(共著、合同出版、2010)。
さくらい・なおみ ● 一般社団法人CSRプロジェクト理事、NPO法人HOPEプロジェクト理事長、キャンサーソリューションズ(株)代表取締役社長。技術士、産業カウンセラー。2004年夏、30代でがんの診断を受ける。その後、自らのがん経験や社会経験から小児がん経験者や働き盛りのがん経験者支援の必要性を感じ、2005年からがん経験者・家族支援活動を開始。設立1年後を契機にNPO法人化、現在に至る。2007年には、東京大学医療政策人材養成講座に参加。筆頭研究者として「がん患者の就労・雇用支援に関する提言」を発表。以来、一貫してがんと就労問題に取り組む。
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