育休支援だけでない、企業に必要な「介休支援」の視点
第一生命研究所 総合調査部 副主任研究員 須藤 智也氏

注目集まる育休。一方、介護休業は?
厚生労働省は2025年7月、2024年度の育児休業・産後パパ育休(以下、育休)の取得率が女性86.6%、男性40.5%であったと公表しました(資料1上図)。女性は18年連続の80%超え、男性は12年連続上昇となり、企業が従業員の仕事と育児の両立を応援する環境整備は進みつつあります。一方、介護休業(以下、介休)の取得率は2022年に男性1.60%、女性1.55%で、2012年以降、低位で推移しています(資料1下図)。双方を比べると取得率は育休より介休の方が低いと分かります。
なぜ介休の取得は進まないのでしょうか。2021年度の調査では「勤務先に制度が整備されていない」「代替職員がいない」「勤務先の制度を知らない」「職場に制度を利用しにくい雰囲気がある」「業務量が多い、仕事が忙しい」などが介休を取得しない理由の上位に並んでいます(資料2)。総務省は年間約10万人が介護を理由に離職すると公表していますが、従業員が介休を取得しにくい職場環境は、介護離職を生む原因の一つとも考えられます。
仕事と介護の両立支援実現にむけた直近の動向
こうした状況を受けて2024年5月に改正された育児・介護休業法では、仕事と介護の両立支援制度に関する個別周知・意向確認・早期情報提供や、仕事と介護を両立しやすい雇用環境の整備などが企業に義務づけられました。企業には介休制度の設計・見直しや、介護当事者以外の社員へ制度を普及させることなどが求められています。また、厚生労働省は企業の一層の両立支援を促すため、2025年3月に中小企業にむけて「介護支援プラン策定マニュアル(改訂版)」を公表しました。ここでは法改正内容、企業が取組むべき事項(資料3)、企業の実際の「介休支援」事例などが解説されています。
企業に求められる「介休支援」の視点
企業の「育休支援」は広がりをみせつつありますが、今後は企業が「介休支援」の視点を持つことも今以上に大切になるでしょう。企業には「介護に直面する前の従業員が安心して働ける職場づくり」「介護に直面した従業員が仕事と介護の両立を実現できる環境の整備」を、制度の設計・見直し・普及などを通じて実現することが一層期待されます。
第一生命経済研究所は、第一生命グループの総合シンクタンクです。社名に冠する経済分野にとどまらず、金融・財政、保険・年金・社会保障から、家族・就労・消費などライフデザインに関することまで、さまざまな分野を研究領域としています。生保系シンクタンクとしての特長を生かし、長期的な視野に立って、お客さまの今と未来に寄り添う羅針盤となるよう情報発信を行っています。
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