【本誌特別調査】改正労働契約法に伴う無期転換への対応アンケート(労務行政研究所)
無期転換ルールはフルタイム型で63.2%、短時間勤務型で59.1%が策定済み
3 無期転換申込権が発生する有期契約労働者への対応
無期転換申込権が発生する有期契約労働者への対応[図表7~8]
2018年度中に無期転換申込権が発生する労働者に対しては、約6割が「原則として全員を無期転換する」
次に、2018年度中に無期転換申込権が発生する労働者と、通算5年未満で2019年度以降に無期転換申込権が発生する労働者に区分し、無期転換申込権が発生する際の対応について尋ねた[図表7]。
すでに労働契約の更新を重ね、2018年度中に無期転換申込権が発生する労働者に対しては、フルタイム型60.7%、短時間勤務型61.0%が「原則として希望者全員を無期転換する」と回答している。
一方で、今後の契約更新により無期転換申込権の発生をコントロールできる、2019年度以降に無期転換権が発生する労働者に対しては、「原則として希望者全員を無期転換する」はフルタイム型38.3%、短時間勤務型36.6%であった。「人事評価などで無期転換権を発生させる者とそれまでに契約を満了させる者を選定する」と、「通算5年を超えないように労働契約を管理し無期転換はしない」の割合を足し上げると、フルタイム型で37.0%、短時間勤務型で31.0%となる。また、「検討中・分からない」はフルタイム型24.7%、短時間勤務型32.4%に上り、2018年4月以降の無期転換申込者数や世間の動向など様子見の傾向も強い。
無期転換する場合の無期転換後の雇用形態(複数回答)は、[図表8]のとおり。「無期契約労働者(労働条件の変更なし)」の、いわば契約期間のみを期間の定めのない雇用とする企業が、フルタイム型で70.6%、短時間勤務型で81.0%と最も多かった。次に多かったのは、「無期契約労働者(労働条件の変更あり)」の労働条件の変更を伴う無期転換で、フルタイム型18.1%、短時間勤務型15.2%となっている。「正社員」への登用は、フルタイム型15.2%、短時間勤務型5.7%にとどまった。
規模別に見ると、300人未満では「正社員」への登用がフルタイム型24.1%、短時間勤務型17.6%で他の規模よりも割合が高い一方で、「無期契約労働者(労働条件の変更なし)」への転換もそれぞれ79.6%、91.2%と他の規模区分に比べて高い割合を示している。規模の小さい企業では必要な人材は積極的に活用しつつ、法改正による人件費の増大にも対応したい意向が見て取れる。
産業別では、製造業では「無期契約労働者(労働条件の変更なし)」への転換が主流で、非製造業では複数の雇用形態で対応する方向性が見える。
なお、政府が目指す「多様な正社員」である「限定正社員」は、既存の限定正社員、新たな勤務形態を設けた限定正社員とも選択する企業は少なかった。
労働条件の変更を伴わない無期転換者に適用する就業規則[図表9]
フルタイム型、短時間勤務型とも6割弱が有期契約労働者の就業規則を転用
無期転換後の雇用形態で、最も多かった「無期契約労働者(労働条件の変更なし)」に対して、新たに適用する就業規則を尋ねたところ、「有期契約労働者の就業規則に、期間の定めに関する内容のみを追加」とする企業が、フルタイム型で57.6%、短時間勤務型で57.0%と最多であった[図表9]。
「有期契約労働者の就業規則も整備中であり、対応を検討中」という回答もフルタイム型で21.5%、短時間勤務型で18.0%あり、対応を決めかねている企業がまだ5社に1社程度あることが見て取れる。
無期転換に対する考え方[図表10、事例1]
「人件費増大を抑制するため、期間の定めのみを変更して無期化したい」が32.1%で最多
無期転換に対する考え方について、自社の考えに最も近いものを選択してもらった[図表10](省略)。最も多い回答は、「人件費増大を抑制するため、期間の定めのみを変更して無期化したい」の32.1%であった。
次いで「労働条件を変更する無期転換者と、期間の定めのみを変える無期転換者を選別し、限られた人件費の中で人材活用をしたい」が20.0%で続く。
先に紹介した[図表8]の無期転換後の雇用形態でも見たとおり、法改正への対応上、無期転換を行わざるを得ない状況で、期間の定めのみを変更することでできるだけ人件費や労務負荷の増大を避けたいと考えていることが分かる。
なお、回答者から寄せられた自由意見は、[事例1](省略)のとおり。検討中あるいは過渡期、予定など、方向性が定まっていない様子もうかがえる。
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