【本誌特別調査】改正労働契約法に伴う無期転換への対応アンケート(労務行政研究所)
無期転換ルールはフルタイム型で63.2%、短時間勤務型で59.1%が策定済み
平成25(2013)年4月1日に施行された改正労働契約法により、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた場合、労働者の申し込みによって使用者はその労働者を無期労働契約に転換しなければならない(いわゆる「無期転換ルール」)。
この無期転換ルールに基づいて、平成30(2018)年4月からいよいよ有期契約労働者による無期転換申込権の行使が可能となる。そこで、有期契約労働者の雇用と無期転換ルールへの対応について各社の状況を調べた。
ポイント
(1) 無期転換申込権が発生する有期契約労働者を雇用している企業は、フルタイム型では86.8%、短時間勤務型は70.5%[図表2]
(2) 有期契約労働者の労働契約について、回数または勤続年数で上限を設定している企業は、フルタイム型で22.5%、短時間勤務型で20.0%[図表4]
(3) 無期転換ルールはフルタイム型で63.2%、短時間勤務型で59.1%が策定済み。2017年10月の段階でルール策定を完了していない企業も約3割[図表5]
(4) 2018年度中に無期転換申込権が発生する労働者に対しては、約6割が「原則として全員を無期転換する」と回答[図表7]
(5) 無期転換に対する考え方としては「人件費増大を抑制するため、期間の定めのみを変更して無期化したい」が32.1%で最多[図表10]
(6) 契約期間が通算5年を超えないようにする方法は、契約更新回数や勤続年数の上限を設ける、上限内容を変更するなどが約半数。クーリング期間の活用は短時間勤務型の1社のみ[図表13]
(7) 期間の定めのみが変わる無期転換者の基本給は、フルタイム型で正社員の70~80%程度、短時間勤務型で60~80%程度が中心[図表15]
(8) 無期転換後には「異動・転勤はない」がフルタイム型で12.5ポイント減、短時間勤務型で19.4ポイント減と、長期雇用での管理に変化が見られる[図表20]
(9) 無期転換者を人事評価や目標管理制度の対象とする企業は、フルタイム型で9.1ポイント増、短時間勤務型で16.0ポイント増[図表21](省略)
(10) 雇用上限を65歳とする企業が多いが、すでにその年齢を超えている有期契約労働者への対応が課題となっている[図表27~29](省略)
(11) 今後の課題として、同一労働同一賃金、高年齢者への対応、派遣労働者への対応、現場への制度周知など多くのテーマが挙がる[事例4](省略)
1 有期契約労働者の雇用状況
有期契約労働者の雇用状況と、2018年4月1日に無期転換申込権が発生する有期契約労働者の有無[図表1~2]
無期転換申込権が発生する有期契約労働者を雇用している企業は、フルタイム型では86.8%、短時間勤務型は70.5%
勤務形態ごとの有期契約労働者の雇用状況は、[図表1]のとおり。フルタイム型を雇用している企業が91.3%、短時間勤務型は79.9%、定年再雇用者は92.3%であった。
規模別に見ると、1000人以上ではフルタイム型98.8%、短時間勤務型86.9%、定年再雇用者96.5%と、有期契約労働者を活用していることが分かる。300人未満では、フルタイム型83.7%、短時間勤務型61.1%、定年再雇用者86.0%と、1000人以上に比べて各勤務形態とも10ポイント以上雇用割合が低かった。
産業別では、フルタイム型は製造業89.9%に対し、非製造業が92.5%で非製造業の雇用割合が若干上回ったが、短時間勤務型と定年再雇用者は、製造業が9ポイント以上高かった。
次に、定年再雇用者を除く有期契約労働者について、2018年4月1日に無期転換申込権が発生する者の有無を尋ねた[図表2]。フルタイム型では86.8%、短時間勤務型は70.5%の企業で、無期転換申込権が発生する通算5年超の有期契約労働者を雇用しているとの回答があった。特に、フルタイム型の1000人以上、300~999人では「いる」という回答がそれぞれ90%を超えており、無期転換ルールへの対応が必要であることがうかがえる。
有期契約労働者の契約期間は1年が主流。一律的な上限設定は行わない企業が大半[図表3~4]
回数または勤続年数で上限を設定している企業は、フルタイム型で22.5%、短時間勤務型で20.0%
[図表3]では、有期契約労働者の1回当たりの契約期間について、最も多く適用されているケースを尋ねた。フルタイム型で67.7%、短時間勤務型で51.5%が「1年」契約と回答しており、次いで「6カ月」がそれぞれ20.8%、29.4%であった。
有期契約労働者の契約更新回数や、通算勤続年数の上限について見たものが、[図表4]である。「個別対応または上限は設けていない」という回答が、フルタイム型で77.5%、短時間勤務型で80.0%と多数を占めており、一律に決めていないことが分かる。規模別に見ると、フルタイム型、短時間勤務型ともに、規模が小さくなるほど「個別対応または上限は設けていない」割合が高くなっており、バブル期を超える人手不足の中、小規模企業では柔軟な雇用管理が求められているといえよう。
契約更新回数または勤続年数で上限を設定している企業は、フルタイム型で22.5%、短時間勤務型で20.0%であった。設定している上限の内容を見ると、回数では「4回」がフルタイム型45.5%、短時間勤務型38.5%、勤続年数では「5年」がフルタイム型48.6%、短時間勤務型46.9%と最多であった。いずれも改正労働契約法の無期転換ルールを意識し、通算契約年数が5年を超えないようにしたものと推測できる。
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