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HRペディア 最終更新日:2021/04/08

【ヨミ】ハタラキカタカイカクガイヨウ 働き方改革《概要》

「働き方改革」とは「一億総活躍社会」のスローガンの下、働く人の目線で生産性を向上させる成長戦略のことです。これまで日本企業が想定してきた「無限定正社員」とは異なり、柔軟で多様な働き方を増やすことを目的としています。政府の「働き方改革実現ロードマップ」において、長時間労働の是正や非正規雇用の処遇改善、生産性の向上など九つのテーマが提示された中、「働き方改革関連法」として2019年4月から順次施行されています。

1. 働き方改革の全体像は?

まずは働き方改革の背景、解決策、具体策を図で見てみましょう。

働き方改革の推進はおもに労働力不足や労働生産性の低さが背景となっています。その解決策は、「日本特有の雇用システムの見直し」と言えます。その具体策が、政府が重視している「三本柱」を中心に行われています。このうち「長時間労働の是正」「非正規雇用の処遇改善」に焦点を当てた法改正が「働き方改革関連法」です。

以下の文章で、詳しくみてみましょう。

2. なぜいま、「働き方改革」なのか?~背景

なぜいま「働き方改革」が求められているのでしょうか。今後、日本社会は急速に少子高齢化が進み、労働力不足に直面します。このような事態に対処するため、これまで中心的な働き手であった男性正社員だけではなく、非正規社員として働くことの多かった女性や若者(フリーター)、高齢者、障がい者などの多様な人材が、その持てる能力・スキルを発揮して働くことが求められています。

また、現在はグローバル化の進展により、外国人の活用が大きなテーマとなっています。そこで問題となるのが、長期雇用と年功型賃金を基軸とする日本特有の雇用システム。一般的に、外国人は特定の企業での長期就労を望まず、賃金はその時点での成果・実績に応じて支払われることを希望します。その点で日本の雇用システムは訴求力(魅力)に欠け、優秀な外国人を取り逃がしてしまう結果となっています。グローバルに事業を展開していくために、日本型雇用システムにひもづいた働き方を見直していくことが求められています。

さらに、今後はAIやロボットの技術が進展していくことが予想されますが、定型的な作業は機械に任せた方が効率的であり、人間が主体となって行うケースは少なくなります。それに伴って、人々の働き方は大きく変わるでしょう。正社員のやるべき仕事は、新しい技術を活用するタイプのもの、機械が不得手な非定型・突発的なもの、創造的な思考を要するものが中心になっていくと考えられます。「時間に比例して成果が出る作業」は少なくなり、従来のジェネラリスト型正社員に限定することなく、柔軟に人材を確保していくことが求められます。

今後は専門性を持った社員や、プロフェッショナル型の社員に対するニーズが高まることが予想されますが、そういったタイプの人材は正社員として抱え込むよりも、業務委託で調達した方が効率的と言えます。あるいは処遇体系を変えることや、テレワークや在宅勤務などを導入することも必要になってくるでしょう。

このように柔軟な働き方が求められている一方で、「過労自殺事件」などの原因の一つである「長時間労動」「過労死問題」が未だに大きな問題となっています。日本企業は、これまでの働き方を変えていくことは難しいのでしょうか

日本企業の「労働生産性の低さ」も、問題視されています。OECDのデータに基づく2017年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、47.5ドル(4733円)。米国(72.0ドル/7169円)の3分の2程度の水準に相当し、OECD加盟36ヵ国中20位にとどまっています。主要先進7ヵ国(G7:フランス、米国、英国、ドイツ、イタリア、カナダ、日本)で見ると、データ取得可能な1970年以降、最下位の状態が続いています。

まさに、日本企業の雇用管理のあり方が看過できない状況となっています。そこで、従来型の働き方を見直し、働く人々がそれぞれの事情に応じた多様で柔軟な働き方を選択できる社会を実現する「働き方改革」が、急務の課題としてクローズアップしてきたわけです。

【OECD加盟国の時間当たり労働生産性(2017年/上位20ヵ国)】

*OECD平均:53.5ドル
1.アイルランド 97.5
2.ルクセンブルク 94.7
3.ノルウェー 82.3
4.ベルギー 73.5
5.デンマーク 72.2
6.米国 72.0
7.ドイツ 69.8
8.オランダ 69.3
9.スイス 68.0
10.フランス 67.8
11.オーストリア 64.7
12.スウェーデン 62.4
13.アイスランド 62.2
14.フィンランド 59.7
15.オーストラリア 57.6
16.イタリア 55.5
17.スペイン 53.8
18.カナダ 53.7
19.英国 53.5
20.日本 47.5

*出所:労働生産性の国際比較2018(日本生産性本部)

3. 「働き方改革」が目指すもの~働き方改革実現会議・計画・ロードマップ

人口が減少する日本では、一人ひとりがいきいきと働き、生産性を高めていくことが欠かせません。そのために政府は「働き方改革」が不可欠と判断。2016年9月から始まった「働き方改革実現会議」では、安倍首相が自ら議長を務め、経団連や東商などのトップが参加したことで、大きな注目を集めました。最終的に働き方改革実現計画とそのロードマップが策定され、ロードマップでは三つの「働く人の視点に立った課題」と、九つの「検討テーマ」が示されています。

【働く人の視点に立った課題】
  1. 処遇の改善(賃金など)……仕事ぶりや能力の評価に納得して、意欲を持って働きたい
  2. 制約の克服(時間・場所など)……ワークライフバランスを確保し、健康で柔軟に働きたい。病気治療、子育て、介護などと仕事を無理なく両立したい
  3. キャリアの構築……ライフスタイルやライフステージの変化に合わせて、多様な仕事を選択したい。家庭の経済事情にかかわらず、希望する教育を受けたい
【検討テーマ】
  1. 非正規雇用の処遇改善
  2. 賃金引上げと生産性向上
  3. 長時間労働の是正
  4. 柔軟な働き方がしやすい環境整備
  5. 病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障がい者就労の促進
  6. 外国人材の受け入れ
  7. 女性・若者が活躍しやすい環境整備
  8. 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の充実
  9. 高齢者の就業促進

検討テーマの中で、「1.非正規雇用の処遇改善」「3.長時間労働の是正」は、現在直面している「非正規雇用問題・処遇格差」や「長時間労働問題」を解決するものとして期待されています。また、「4.柔軟な働き方がしやすい環境整備」は、「柔軟な働き方の実現」を目指していくために不可欠な施策と言われています。これら三つのテーマが2019年4月に施行された「働き方改革関連法」の中で、政府側の検討資料等の中でも強く要請しているものであり、「働き方改革」を進めていくために重要な位置づけを占めています。

以下、「働き方改革関連法」のポイントを記します。

4. 働き方改革関連法の内容

詳しい内容・対応の解説は「働き方改革関連法」の記事をご覧ください。

(1)労働時間法制の見直し(2019年4月1日施行、中小企業は一部繰り下げ)

  • 残業時間の上限規制
  • 「勤務間インターバル」制度の導入促進
  • 年5日間の年次有給休暇の取得(企業に義務づけ)
  • 月60時間超の残業の割増賃金率引き上げ
  • 労働時間の客観的な把握(企業に義務づけ)
  • 「フレックスタイム制」の拡充
  • 「高度プロフェッショナル制度」の創設
  • 産業医・産業保健機能の強化

(2)雇用形態に関わらない公正な待遇の確保(2020年4月1日施行、中小企業は一部繰り上げ)

  • 不合理な待遇差の禁止(正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)
  • 労働者に対する待遇に関する説明義務
  • 行政による事業種への助言・指導や裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の規定の整備

(3)同一労働同一賃金ガイドラインの概要

正社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規労働者(短時間労働者・有期労働者・派遣労働者)との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なもので、一方不合理でないか、原則となる考え方・具体例を示したものです。

  • 基本給
  • 待遇手当等
  • 通勤手当等
  • 賞与
  • 家族手当・住宅手当等
  • 時間外手当等

5. 助成金

働き方改革の一環で整備された助成金は、次のようなものがあります。

  • 時間外労働等改善助成金(時間外労働の上限設定に取り組む中小企業などに対して)
  • 業務改善助成金(中業企業等で、生産性向上のための設備投資にかかった費用に対して)
  • キャリアアップ助成金(非正規労働者のキャリアアップ促進の施策に対して)

※助成金の詳細については各機関にお問合せください。

6. 「働き方改革」を進めていくための課題

次に、「働き方改革」を進めていく際に、どんな課題があるのかを見ていきます。

経営トップの明確な方針の打ち出し

全社的な取り組みにしていくには、経営トップが「働き方改革」に対して明確な方針を示す必要があります。その際、自社特有の課題を組み込み、会社と社員にどうなってほしいのか、最終的のどのような競争力へと結び付けていくかなどを、具体的な表現(記述)を用いて各事項へと落とし込み、全社員が共感できる方針として明示することが大切です。

働き方の実態の見える化と、制度・施策の検討

また、方針を実現するためには、長時間労働や年休取得など、自社の働き方の実態を具体的な数字として把握し、見える化すること。そして、組織内でその結果を共有・評価し、そこからさまざまな問題や課題を明らかにしていくことが必要です。その上で、働き方の見直し制度・施策を、各職場で検討していくことが求められます。重要なのは、これらを各職場に埋没させず、全社的に共有・展開していくことです。

従業員の意識改革

続いて重要なのは、従業員の意識改革です。これまでにない多種・多様な制度・施策を導入したからといって、すぐに「働き方改革」が実現するわけではないからです。実際、制度・施策が導入されても利用者が少なく、変化が起きていないケースを見かけます。制度・施策を導入しても、従業員の考え方や行動が変わらなければ何も変わりません。こうしたことが起きるのも、制度・施策に対する従業員の理解が十分に得られていないから。そのためにも、なぜいま「働き方改革」に取り組まなければならないのかを従業員が納得した上で、それぞれが意識(働き方への態度)を変えていく必要があります

ここで、『日本の人事部』が取材した事例(リクルートホールディングス)をご紹介します。

【事例紹介】株式会社リクルートホールディングス~働く場所を、従業員自らが選ぶ「リモートワーク」

リクルートホールディングスでは「働き方変革プロジェクト」を実践。雇用形態にかかわらず全ての従業員を対象とした上限日数のない「リモートワーク」の取り組みは、内外に非常に大きな反響を呼びました。その取り組みは、日本の人事部「HRアワード2016」で、企業人事部門最優秀賞を受賞しています。

話者:株式会社リクルートホールディングス 働き方変革推進室 室長 林宏昌さん(当時)

結果平等を標ぼうするには、働き方変革が不可欠

「働き方変革プロジェクト」は、ダイバーシティにおける女性活躍推進がきっかけでスタートしました。リクルートは「結果平等」を標ぼうする会社だと言われてきました。男性・女性、年齢に関係なく、「結果」を出せば「評価」されるという構造でした。しかし 確かに「結果平等」ではあるのですが、現実的には育児や家事、介護における女性の役割が大きなままで、「プロセス不平等」になっていました。男性は朝早くから来て、夜遅くまで仕事をすることができますが、女性はそうはいきません。「結果平等」を標ぼうしているのに「プロセス不平等」であっては、「結果不平等」になってしまうのは明らかです。

そのような問題意識から、男性・女性関係なく、育児や家事、介護を分担していく社会にしていかなくてはならないと考えました。男性も含めての対応ですから、女性の働き方変革、女性活躍推進といった女性に限ったテーマではなく、全従業員の働き方をどう変えていくかという「働き方変革」が、テーマとなったわけです。そこで、「時間」に対する取り組みの延長上で、最初に行ったのが「働く場所」に捉われない働き方である「リモートワーク」です。

働き方の実態の見える化と、制度・施策の検討

通常の業務に関するコミュニケーションはどこにいてもできますが、問題は日常的な会話(雑談)でした。リクルートには、雑談や立ち話をすることを大事にする文化があったからです。「リモートワーク」を行うことによって、それがどうなるのか。実際、半分以上の人が「雑談が減った」と回答しています。

しかし一方で、約2割の人たちが「コミュニケーション量が増えた」としています。その理由は「チャット」で、軽い感覚で会話をしていると、オフィスにいるときよりもコミュニケーションが円滑になるというのです。

実際にクリティカルな問題が出てきたら、止めるか縮小すればいいわけです。大事なことは、そうしたことをオープンにして、それを乗り越えるために常に皆とコミュニケーションを取ること。そして、いろいろと知恵を借りて、必要な対策を順次打っていくことです。

ロイヤリティ、生産性の向上を実現

「リモートワーク」は、育児や介護など特別な事情を持つ社員に限ったものではありません。雇用形態にかかわらず、全ての従業員が選択できます。一人ひとりの裁量に任せ、「働き方変革」を実現することが目的でしたから、そのことを立証するために「実証実験」を行い、メリットやデメリットを明らかにして懸念事項やリスクを取り払いました。

実証実験を行うに当たっては、「何がだめだったのか」「リスクになったことは何か」などを忌たんなく言ってもらいました。その結果、9割近い人から「リモートワークは期待できる」という回答を得ました。「この会社で働き続けたいと思う」といったロイヤリティ向上を上げる人もいました。半分以上の人が「生産性が高まった」と回答しています。

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