日本の人事部「HRアワード2021」受賞者インタビュー
企業人事部門 優秀賞 受賞
経営改革のカギを握る人財育成戦略
変革を推進し、部下を成長させる
次世代リーダーの育成プログラムとは
上村 成彦さん(コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 執行役員 人事・総務本部長)
東 由紀さん(コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 人事・総務本部 人事統括部 人財開発部 部長)
2019年に企業理念を「Paint it RED! 未来を塗りかえろ。」に刷新し、「これまでのやり方は選択肢にない」という強いメッセージのもと大規模な経営改革を推進している、コカ・コーラ ボトラーズジャパン。同社の管理職で最も多かったのは、過去の経験をもとに背中を見せて育てる“率先垂範型のプレイングマネージャ”でした。しかし経営改革を実行するためには、管理職を“部下の成長を促す変革・育成志向型のリーダー”に変えていく必要があると判断。2020年から次世代リーダー育成のプログラムを開始しました。その動向に対する関心は高く、日本の人事部「HRアワード2021」では、企業人事部門 優秀賞を受賞。今後の展開がさらに注目を集めています。変革を導く次世代リーダーを育てる仕組みと環境を、どのようにつくっているのか。同社執行役員 人事・総務本部長の上村さんと人事・総務本部 人事統括部 人財開発部 部長の東さんにお話をうかがいました。
- 上村 成彦さん
- コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 執行役員 人事・総務本部長
1981年にソニー株式会社入社。海外事業本部を経て16年間、海外(クウェート、スイス、シンガポール)で営業・マーケティングを担当した後、アジア・オセアニア・中近東・アフリカの地域統括会社社長を務め、Sony University Singapore Campusを設立。ソニー株式会社人事部門副部門長として、人財開発・採用・ダイバーシティ開発・グローバル人事を担当した後、日清食品グループへ。執行役員CHO人事責任者として人事全般を統括。2018年、コカ·コーラ ボトラーズジャパン株式会社に入社。2020年より同社執行役員人事・総務本部長およびコカ·コーラ ボトラーズジャパンベネフィット株式会社 代表取締役社長。
- 東 由紀さん
- コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 人事・総務本部 人事統括部 人財開発部 部長
ニューヨーク州立大学卒業後、外資系と日系の金融機関でセールスやマーケティングの業務に従事し、2013年に人事にキャリアチェンジ。野村證券でグローバル部門のタレントマネジメントとダイバーシティ&インクルージョンのジャパンヘッドに着任。その後、アクセンチュアを経て、2020年2月より現職で人財開発、採用、評価制度を統括。中央大学大学院戦略経営修士、職場におけるLGBTアライと施策の効果について研究。 2018年11月からAllies Connectの代表として、企業×アカデミック×社会のアライをつなげる活動を開始。特定NPO法人東京レインボープライド理事、認定NPO法人ReBit アドバイザー。
ビジネスモデルの転換で、社員に求められるスキルが大きく変化
「HRアワード2021」企業人事部門 優秀賞の受賞おめでとうございます。今回は、貴社の「変革を導く次世代リーダー育成」への取り組みが高く評価されました。まずは、貴社が変革リーダーの育成施策を実施することになった背景からお聞かせいただけますでしょうか。
上村:まず簡単に会社について説明すると、コカ・コーラ ボトラーズジャパンは、国内12のボトラー社が統合され、2017年に誕生した日本企業です。国内12のボトラー社が統合されたことで、社員数は約1万6000人規模にまで増えました。その結果、日本のコカ・コーラシステムの約9割の販売量を担う国内最大のコカ・コーラボトラーとなり、世界に250以上あるコカ・コーラボトラーの中でも、売上高でアジア最大、世界でも有数の規模を誇るまでになりました。
一方、国内の清涼飲料水市場に目を向けると、革命ともいえる炭酸飲料の誕生で業績を大きく伸ばした時代から、コーヒーやお茶、ミネラルウォーターなどの多品種展開時代を経て、今後はさらに現場のニーズをキャッチしていく必要があります。そのために製造能力の強化や物流ネットワーク最適化、営業を効率化するためのIT投資など、さまざまな経営改革を実行しています。この戦略を動かしていくのはすべて“人”です。持続的な成長を目指すためには、当然ながら人財戦略・人財改革が欠かせません。
東:2019年に就任した現社長のカリン・ドラガンが折につれ発信するメッセージに、「これまでのやり方は選択肢にない」があります。企業理念は『Paint it RED! 未来を塗りかえろ。』に刷新され、当社は今まさに、ビジネスモデルの転換期にあります。社員に求められるスキルも大きく変化しました。「変革を推進するリーダー」と、組織改革を支えるための「育て上手なマネージャ」を育成する必要が出てきたのです。
貴社では「経営戦略と人財戦略の連動」を重視されているとうかがいました。
上村:現在取り組んでいる人財戦略は、2019年に策定された中期経営計画に組み込まれているものです。中期経営計画を策定する際は、人財戦略のみを検討する取締役会議を別に開き、承認のプロセスも経ました。ビジネスモデルの変革をリードするためにはどのような人財が必要かといった人財像と育成施策を、経営会議で提案・検討・決定してきました。それはつまり、人財戦略が経営戦略に沿った施策になっているのかを常に注視し、実行してきたことを意味します。
3年間の調査で見えてきた、
社内に深く根づく製造業ならではのマネジメントスタイル
「変革リーダーの育成」と「育て上手なマネージャの育成」のために、具体的にどのような施策を行ってきたのかをお聞かせください。
東:まずはマネージャの部下育成に対する意識や実態を把握するために、リフレクションサーベイ(360度調査)を2018年から毎年実施しています。
3年間の調査結果からわかったのは、これまでの方法を率先垂範するマネージャが最も多い、ということ。率先垂範型のマネジメントとはつまり、自らプレーヤーとして背中を見せ、部下についてこさせるスタイルを指します。この結果はある意味、必然でした。当社は製造業ですから、決められた時期までに決められた手順に沿って、ルールを順守したものづくりができることが重要視されてきたのです。どちらかというと、オペレーショナルエクセレンスに長けている人財が重宝され、活躍していました。
しかし、先ほどお伝えしたように「これまでのやり方は選択肢にない」という強いメッセージのもと、経営を変革していくのであれば、求められるリーダー像も変わります。これまでのやり方を率先垂範するマネジメントスタイルでは、イノベーションは生まれません。変革には痛みが伴いますから、背中を見せるだけではなく、しっかりと部下と向き合い、ときにエンゲージメントを高めながら、個々人にあわせて成長を促していく「支援・育成型のリーダー」が必要なのです。
研修などを通して部下育成に対するマインドを変えていくとともに、リフレクションサーベイの結果を本人と上司にフィードバックし、改善や強化ポイントのアクションプランを立てて、実践と定期的な振り返りを行うことを仕組化しました。また、低スコア者には人事が個別対応し、具体的な改善策を提示するようにしました。
参加者の意欲が低い状態からスタートした、
選抜型次世代リーダー育成プログラム
リフレクションサーベイが「育て上手なマネージャ」の育成施策にもなっているわけですね。「変革リーダーの育成施策」については、いかがでしょうか。
東:いくらトップダウンで「従来通りのやり方ではなく、新しいことをやろう」と言っても、スローガンだけで人は動きません。そこでまずは、階層ごとに変革リーダーを育成しようと、2020年に選抜型次世代リーダー育成プログラム「コカ・コーラ ユニバーシティ ジャパン(以下、CCUJ)」を設立しました。「一般職リーダー」「所属長(課長)」「部門長」の3階層に分け、各ファンクションで開かれる人財会議で、CCUJの受講者を選抜してもらいました。
上村:選抜の際に重視したのは、次世代リーダーとしての“ポテンシャル”を有しているかどうか。当社ではビジネスを変革し、けん引していく人財が持っている素養を「5リーダーシップ ケイパビリティーズ」として明示しています。「5リーダーシップ ケイパビリティーズ」とは、「イノベーション」「戦略的思考」「ピープルマネジメント」「エフェクティブコミュニケーション」「グロースマインドセット」。この五つの行動要素・考え方を持っているか、これから伸ばしていけそうか、という観点から人財を選抜してもらいました。
東:CCUJ発足後、半年から1年をかけて次世代リーダー育成プログラムを実施しました。集合研修は4~6回なのですが、その間にグループワークやプレゼンテーションがあるので、本業と並行して取り組んでいくのは、とてもハードだったと思います。
率先垂範型から変革型のリーダーに変わるのは容易ではなく、個々人に大きなマインド変革が求められます。選抜された社員の方々は、CCUJ始動に対してどのような反応だったのでしょうか。
東:実は研修初日、参加者のモチベーションは低い状態からのスタートでした。そもそも当社は経営改革中ですから、実務においても変えていかなければならないことが多い。リーダーは新しい業務を学んで、メンバーに教えていかなければならず、大変忙しい日々を送っています。
研修初日、私たちは「皆さんは選ばれた方々です。おめでとうございます!」と迎えるわけですが、「この忙しい時期に研修をやる必要があるのか」というのが受講者の本音だったと思います。ですからキックオフには、社長のカリンや上村にも参加してもらい、変革リーダーの重要性や期待感、困難な状況だからこそ学びが大切であることを強く伝えてもらいました。
部門長クラスは、もともと課題意識や視座が高いので、スイッチがすぐに切り替わった印象があります。所属長やリーダークラスは個人差もありますが、プログラムを受講し、自組織に持ち帰って試してみて、自分のものにしていく経験学習サイクルを回していく中で、徐々に意識が変わっていった様子でした。
現在、一期生のプログラムがちょうど終了したところですが、アンケートに「当初は、なぜこの忙しい時期に時間を割く必要があるのかと思っていたが、今だからこそやる価値があった」「受講して良かった。CCUJに参加していなかったら、現場での経営改革を乗り越えられなかったかもしれない」といった感想があふれていました。CCUJを発足してよかったと感じましたし、とてもうれしかったですね。
「自分にとってのリーダーシップとは?」
半年から1年をかけて行われた多彩なプログラム
CCUJのプログラム内容について教えてください。
東:CCUJを始めるうえで、とても重要だと位置づけていたのが「リーダーとしての軸を探る」プログラムです。「自分は、働くうえで何を大事にしているのか?」「そもそも、どんなリーダーになりたいのか?」など、自分の軸をしっかりと見定めてもらいたいと考えていました。そうでなければ、いざというときに力を発揮できません。変革リーダーを目指すことも「会社に言われているから」と、やらされ感が出てしまっては意味がありません。あらためて、自分にとってのリーダーシップとは何なのか、困難な状況の中で自分はどのようなリーダーでありたいのかを突きつめて考えてもらう時間を最初に設けました。
スキル習得に関するプログラムは階層によって内容が異なりますが、課長層とリーダー層については「戦略的思考」を重点的に取り入れました。MBAで学ぶような経営戦略のフレームワークを基礎から教え、それぞれの実務やプロジェクトに取り入れたらどうなるかを考えて、実際に試してみるという流れです。CCUJではティーチングのプログラムは少ないのですが、戦略的思考は知らなければ動けませんから、授業のようなスタイルで行いました。
プロジェクト型のプログラムも多いとうかがいました。
東:そうですね。たとえば、課長層が参加するCCUJでは、地域のビジョナリーリーダーや大学生を交えた越境型研修「地方創生プロジェクト」を行いました。
ビジョナリーリーダーが地域創生を推進していくうえで抱えている課題を聞き、自分たちがその立場だったらどんな取り組みをするのかを考え、このプロジェクトの最終日にプレゼンテーションしてもらいます。大学生も含めたチームで動くため、「イノベーション」や「リーダーシップ」「チームパフォーマンス」などのケイパビリティを強化するプログラムになりました。普段の業務とは違う、いわば利き腕が通用しない課題に、大学生を交えたダイバーシティなチームで取り組む。異なる価値観やビジネスモデルに触れることで、自組織内だけでは得られない知見を得たり、視野を広げたりすることができたのではないかと思います。
CCUJにおいて、プログラムの企画推進以外に人事はどのような役割を担いましたか。
東:随時サーベイをとっていましたので、状況を見ながら、必要があれば後続のプログラムを微調整したり、受講者の理解が進んでいないと思ったときに講師の方に補足の対応をお願いしたりしました。
ただ、CCUJの運営メンバーとは「できるだけ、手をかけないようにしよう」と話していたんです。なぜかというと、今回の育成対象は次世代を担う変革リーダーです。私たちのサポートがないと動けないようでは困ります。ですから、グループワークの様子を見ることもありませんでした。「ちゃんとできていますか?」といった声かけもしていません。
「業務の都合で5人チームが3人になってしまったのですが、どうしましょう?」と相談されたときにも、「仕事上でも同じようなケースがありますよね。そのとき、どうするかを考えて動いてください」と伝えただけでした。
CCUJ修了生の「変革志向型リーダー」
「支援・育成志向型リーダー」の割合が飛躍的に向上
リフレクションサーベイやCCUJなどの人財育成施策に取り組んだ効果について教えてください。
上村:受講者に対する意識調査の数字に大きな変化が見られました。研修前は、リーダーシップとは権限や職位に付随するものと捉える「権限依存型リーダー」と、自分自身が結果を残し、部下に模範を示す「プレイングマネージャ志向型リーダー」の割合が多かったのです。
しかし研修後の調査では、リーダーシップとは地位や権限ではなく、変化をいとわない姿勢や行動によって発揮されるものと考える「変革志向型リーダー」の割合が19.8%から31.9%に増加。リーダーの主な役割をメンバーのモチベーション向上と共感、コミュニケーション、指導・育成だと考える「支援・育成志向型リーダー」が15.3%から26.1%に増加しました。
また、「育て上手なマネージャの育成」の施策として毎年実施しているリフレクションサーベイにおいても、低スコア者の人数が2018年実施当初から昨年度実施時点で半減しており、施策の効果が出ています。
東:CCUJの意識調査については、九州大学ビジネス・スクールの松永正樹准教授のご協力を得て、テキストマイニングの手法を活用しています。たとえば、会社が時間と予算をかけてこれだけのプログラムを用意したうえで「研修を受けてよかったですか?」「部下育成は重要ですか?」という質問をすれば、おそらく「受けてよかった」「部下育成は大事」という回答が100%だと思うんです。ただ、それでは、本質的なマインド変革が起こっているのかどうかが、わかりませんよね。
そこで受講者には複数選択式のアンケートとあわせて、定性のエッセイを書いてもらいました。その定性情報をテキストマイニングでデータ分析をしてもらい、極力、恣意性を排除した回答が得られるように工夫しました。
短期間でこれだけ明確な変化があらわれるのはすばらしいですね。そのほかに効果やメリットを感じていらっしゃることはありますか。
東:CCUJ受講者の「変化」に対する受けとめやマインドセットが変わったことが、とてもよかったと思っています。“変化っていいものだ”“変化の先に、良い未来がある”と思えるようになる意識改革が、CCUJの成否を決める一つのポイントだと捉えていましたから。
製造業の現場では、失敗が許されません。そのため、新しいチャレンジをする機会をなかなか持ちにくい状況です。そこで「研修は失敗して良い場」だと伝えました。とにかくやってみて、失敗して、そこから学び、再びチャレンジする体験をしてほしかった。失敗に対する感覚が肯定的になっていっているのを感じられたことがうれしかったですし、この仕組みとメッセージが間違っていなかったと思えました。
上村:変革とは一足飛びにできるものではなくて、徐々に変わっていくものだと思います。日々の業務の中では変革の必要性に気づきにくいですよね。CCUJのように、さまざまな部署や職種の人が集まると、“気づき”が生まれやすいんです。とくに当社は12社が合併して生まれた企業ですから、文化やルールが違っていたり、自組織以外の事情がわからなかったりする。他事業部や他部署を通じて客観的に自社を見つめることで、変革の必要性も腹落ちできたのではないかと思います。
半年から1年をかけて、さまざまなプログラムに共に挑戦してきたチームメンバーとは、強いつながりや結束が生まれているのではないでしょうか。
東:そうですね。大変な課題を一緒にくぐりぬけてきた仲間ですから。本業で忙しい中で時間を捻出して、ときにはぶつかることもありますし、その困難を共に乗り越えてきたからこそ、結束は堅い。加えて、「学び続けよう」「学びをまわりの人たちに伝えていこう」という意識が高まっているのを感じます。「二期生のキックオフに、修了生として話に来てくれませんか」とお願いすると、皆さん喜んで協力してくれました。昨年とはまったく違う反応に驚きました。
来年の1月から二期が始まります。修了生の学びを継続させる、修了生と二期生、三期生をつなげていく目的で新たに「CCUJアルムナイネットワーク」を立ち上げます。修了生が新しい受講生のメンターや、グループワークなどでつまずいたときのアドバイザー役を務めてもらおうと考えています。
東:これは今後の課題でもありますが、「CCUJアルムナイネットワーク」を横や斜めのつながりだけではなく、当社における変革リーダーのコミュニティとして活躍の場を提供していくことが大切だと考えています。CCUJを修了していることが、変革リーダーとしての基礎を学び、その後も学びを継続しているという証明になって、社内で大きなプロジェクトを立ち上げるときには「CCUJアルムナイネットワーク」から選抜されるようになるといいなと思っています。
上村:そのほか、CCUJの修了生が他の社員にどんどん教えていくことでネットワークが広がるようなイメージも持っています。そうすれば、学びの連鎖がメンバークラスにまで行き届きますから。
自社の現状を調査し、課題を見極め、サステナブルな学びの仕組みをつくる
他社がCCUJのような次世代リーダーを育成するプログラムに取り組むとすれば、何が成否を分けるポイントになると思われますか。
上村:私が重視しているのは、CCUJを通して一人ひとりが学びの重要性に気づくこと。「修了後も、自ら学び続けていく人財をつくれるかどうか」を重要なKPIにしています。一定期間研修を受けて、そこで学びが終わってしまったら、それ以上の進歩は期待できません。大きな投資をするからこそ一過性で終わらず、継続して学び続けてもらう。サステナブルな仕組みをつくらなければ、経営陣からの理解は得られませんし、人事の自己満足な施策になってしまう可能性があります。
東:変革リーダーを育てるための手法やプログラムは、世の中にたくさんあります。最も大切なのは、自社の課題を見極めることではないでしょうか。プログラムを実施することで、経営戦略をふまえて変革をリードする人財が本当に育つのかどうかが重要です。たとえば「何が原因で変革が起きていないのか」「マネジメントやリーダーシップに関するどんなカルチャーやケイパビリティの不足が変革を阻害しているのか」をしっかりと見極める必要があります。
当社の場合、リフレクションサーベイで「率先垂範型のマネージャが多い」という結果が導き出されました。現場の課題に合わせて、当社の変革リーダーには何が求められるのかを定義し、一つずつプログラムをデザインしていったのです。とくに定量データを注視していて、プログラムが始動してからも、彼らのマインドセットがどのように変わっていくかを見ていきました。
最後に今後の人財育成で新たに企画されていることや、実施を予定していることなどがありましたら、お聞かせください。
東:当社では、全社員が自己研さんできる場として「ナレッジモール」というe-ラーニングや資格取得のための学習プログラムを導入しています。このラインナップを当社にとって必要なケイパビリティに合わせて大幅にリニューアルし、4月からDX人財の育成をスタートさせる予定です。
基礎的なAIやロボティクスの知識を学ぶことにより、システム導入のベンダーやコンサルタントと共同で行うときに、ビジネスパートナーとして対等に話せる人財を育てることで、ビジネスのDXを効果的かつスピーディーに進めることを主目的としています。それだけでなく、ビジネスの課題を定量的に把握し、解決策を探るためのビッグデータ解析に特化したプログラムを、現在、ベンダーと連携してプログラムを構築している最中です。
また、昨年立ち上げた全社員向けの英語プログラム「Global English Transformation(以下、GET)」をさらにブラッシュアップし、「基礎力強化クラス」「実践力強化クラス」に加えて、ビジネスで効果的なプレゼンテーションなどができる「戦闘力強化クラス」の3階層に分けて、2月から開始します。GETを通じて英語を学ぶコミュニティをつくり、グローバルなビジネスの場で活躍する人財を育成していきます。
上村:今回はCCUJなどの選抜者を対象にした次世代リーダープログラムについてお話ししましたが、選抜者だけではなく、社員一人ひとりが着実にキャリアアップしていくための人財育成施策をファンクションごとにつくろうとしています。キャリアパスを用意し、自律的なキャリアを描くために支援し、教育し、実践してもらって、評価をする。社員みんなが同じ方向を向いて成長していけるように、一気通貫の人事施策をつくることが大切だと考えています。
(取材は2021年11月29日、東京・港区のコカ・コーラ ボトラーズジャパン本社にて)