Sansan株式会社:
全ての人事施策は「生産性向上」のために
~Sansanが進めるミッション・ドリブンな働き方改革とは~(後編)[前編を読む]
Sansan株式会社 人事部 部長
大間 祐太さん
「どに~ちょ」「イエーイ」「Know Me」「強マッチ」「コーチャ」「MOM」「KISS」……クラウド名刺管理サービスを展開するSansanには、中身もネーミングも斬新な人事制度が数多く設けられています。(前編参照)それはなぜか? 同社のミッションが、「ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する」だからです。そう掲げる以上、まずは自分たちの働き方から革新していかなければ始まらない――。ひたすら「生産性の向上」に資するため、あるべき人事のカタチを追い求め続ける同社人事部長・大間祐太さんへのインタビュー後編では、制度の概要から設計・導入の背景、効果や課題に至るまで具体的なお話をうかがいました。
- 大間 祐太さん
- Sansan株式会社 人事部 部長
おおま・ゆうた●新卒で人材系ベンチャー企業に入社し、採用コンサルティング事業の立ち上げを経験し、その後、独立。役員としてベンチャー企業の立ち上げに携わり、2010年2月にSansanへ転職。法人営業として入社し、同部署のマネジャーを務めた後、2015年1月より人事部にて副部長として採用全体を統括。その後、2016年6月より人事部 部長に就任。現在に至る。
求めるのは成長の速さと高さ、だから個々人の強みを活かす
Sansanではビジネスを加速させるために、“七人八脚”と呼ばれる「部門を超えた活発な社内コミュニケーション」を重視しているとのお話がありました。そうした部門間の連携を深めるために、何か制度を設けられているのでしょうか。
代表的なものとしては、「Know Me」(ノーミー)という制度があります。名前のとおり、社員同士の飲み会に会社から補助が出る制度なのですが、人数は1回3人以内で、他部門のメンバーと行くことが必須条件です。部門をまたいだ交流を促すのが「Know Me」の特徴なんです。これも、前回お話しした神山ラボなどと同じで、一見すると福利厚生のようですが、そうではありません。
たんなるストレス解消や雰囲気づくりのために飲み会を補助しているわけではなく、部門を超えたコミュニケーションの活性化を通じて、あくまでも生産性の向上に寄与するのが目的です。“七人八脚”で走っている組織ですから、他部門のメンバーと交流を深めるメリットは大きい。他部門の現場の話にヒントを見つけたり、自部門で抱える悩みが他部門から見ると問題でも何でもないとわかったり、そういう気づきが事業をドライブさせるきっかけになっていくのです。
補助は1回あたり一人3000円で、使える回数は一人月2回まで。会社全体で毎月100枠ほど用意していますが、1週目でだいたい埋まるほど人気が高く、最近は「枠を増やしてくれないとKnow meに行けません」といった意見もあがるようになりました。みんながそれだけ他部門とのコミュニケーションを求めているのだとしたら、会社としてもいい傾向だと思います。
生産性向上を図るためには、個々の人材の能力開発という視点も重要になってきます。そのあたりの取り組みについてはいかがですか。
われわれが大切にしているValuesの一つに、「強みを活かす」というものがあります。事業成長の速さと高さが問われるベンチャーでは、働き手の弱点を一つずつ補い、克服していくよりも、むしろ個々の強みを積極的に活かしたほうがはるかに簡単に、はるかに大きな成果が期待できるのです。そこで当社では、「強マッチ」という独自の能力開発を実施しています。新入社員が入社すると、最初に行うのがこれです。
「ストレングス・ファインダー」や「エニアグラム」などの自己分析ツールを使って、従業員一人ひとりが自分の強みは何なのかを理解するとともに、それを明文化し、全社で共有する。強みに着目した人材配置や強みを活かしあえるコミュニケーションをしかけ、チームの生産性向上につなげようという取り組みです。同じように「強みを活かす」施策として、コーチングを取り入れた「コーチャ」という制度もあります。
コーチングをどのように活かしているのですか。
人事部にコーチングの資格を所有しているメンバーがいまして、彼との1on1で、自分の強みをどう最大化していくかをテーマに、コーチングを受けるのが「コーチャ」の基本です。人事に申請すれば、誰でも利用できますし、ニーズは結構ありますね。
たとえば、ちょっと壁にぶつかっているようなメンバーには、「課題からではなく伸びしろから考える」というように視点転換を促し、本人の可能性を見つめて引き出していくわけです。強みを活かすためのコーチングの機会を、会社として提供するために制度化しました。
「コーチャ」制度には、「コーチャTEAM」という各部門などチーム単位で利用するバージョンもあります。社内コーチだけでなく、彼の知人の外部コーチにも入ってもらって実施するチームコーチングです。じつは昨年、これが本当にうちの制度として機能するかどうかを検証するため、まず人事部みんなで徳島の神山ラボへ行き、体験してみました。