サッポログループマネジメント株式会社:
人事部門が主導し、グループ横断で取り組む
「マイナンバー制度」対応プロジェクトとは
グループ人事総務部 人事グループリーダー
城戸 寿弘さん
「マイナンバー制度」(正式名称は「社会保障・税番号制度」)が2016年1月からスタートします。住民票を有するすべての人に一つずつの番号を付与し、年金・医療などの社会保障や納税、災害対策などの分野で事務業務を効率化することで、国民の利便性を高めることを目的とした新しい制度です。運用開始に先立って、2015年10月からは一人ひとりのIDともなる個人番号(マイナンバー)の通知が始まります。このマイナンバー制度がスタートすると同時に、民間企業でも従業員の給与や社会保険、外部契約先への報酬の支払いなどに伴って、マイナンバーの取扱業務が不可欠となります。重要な個人情報に関連するマイナンバーだけに、取り扱いに際しては高い正確性、安全性の担保が求められますが、十分な対応ができている企業はまだ少数派ではないでしょうか。比較的早期からマイナンバー対応に取り組んできたサッポログループで、プロジェクトの中心となって動いてこられたサッポログループマネジメント株式会社人事グループリーダーの城戸寿弘さんに、これまでの経緯や現在の進捗状況についてうかがいました。
- 城戸寿弘さん
- サッポログループマネジメント株式会社 グループ人事総務部 人事グループリーダー
きど・よしひろ●1982年サッポロビール入社。サッポロビールの地区本部、工場、関係会社勤務の後、2013年よりサッポログループ各社の共通機能を担う会社として2008年1月に設立したサッポログループマネジメント社に勤務。現在、グループ人事総務部人事グループに所属し、人事労務関係業務の全社集約に取り組み中。また社内に立ち上げたマイナンバー制度対応プロジェクトのワーキンググループリーダーを務める。
関連性の高い部門が中心になってプロジェクトを立ち上げる
最初にマイナンバー対応プロジェクトの立ち上げ時期、また立ち上げに至った経緯などをお聞かせいただけますか。
プロジェクトの正式スタートは2015年2月ですが、その前年からさまざまな情報収集を行っていました。弊社のIT部門で付き合いのあるシステムコンサルティング会社にマイナンバー制度に深く関わっている方がいらっしゃって、その方から「導入されたら企業へのインパクトはかなり大きい制度ですよ」と比較的早い段階から聞いていたんです。ただ、特定個人情報の取り扱いのガイドラインが出るまでは、実務レベルでどう動けばいいのかがはっきりしなかったこともあって、具体的にプロジェクトの準備を始めたのは、国からのガイドラインが示された2014年12月以降です。
その段階でマイナンバー制度に対して持っていた認識は、まず企業経営へのインパクトとリスクが非常に大きいということ。個人情報の安全管理などをしっかり行わなくてはなりませんが、かといって企業側に利益を生むものではないので、あまり費用をかけずに効率的に対応することが求められる。さらに、制度スタートまでの期間が短く、時間的な制約もあると感じていました。
弊社は、グループ共通の人事・総務、経理、ITなどの業務を集約する機能会社として、持ち株会社であるサッポロホールディングスとともに、サッポログループの本社を構成しています。人事・給与・厚生をはじめ、マイナンバー制度が深く関係する業務を幅広く担当していることから、プロジェクトは弊社がリーダーシップをとって、グループ横断で進めていく方針になったのは自然な流れだったと思います。「我々がやらないと何も進まない」という、ある種の「使命感」「責任感」のようなものもありました。
プロジェクトは具体的にどのような体制、規模で動いていらっしゃるのでしょうか。
マイナンバー制度に実務レベルで直結する部署として、弊社の「グループ人事総務部」「グループ経理部」「グループIT統括部」からそれぞれ担当者を出しています。マイナンバーというと従業員の給与(源泉徴収票)や社会保険関係が中心になるイメージですが、個人取引先の支払調書などは経理部門の管轄です。
また、現状では弊社が管理業務を受託していないグループ会社もあります。グループ内でマイナンバー制度の対象となる会社は27社、従業員数で約1万3000名ですが、このうち外食系でパート・アルバイト従業員を多数抱える「サッポロライオン」や「ポッカクリエイト」など14社、約7000名分が未受託となっています。これらの会社はそれぞれ社内に人事給与部門、経理部門を持っているので、各社でマイナンバー関連の窓口を決めてプロジェクトに加わってもらいました。
サッポロホールディングスからは、個人情報保護関連で「グループリスクマネジメント部」、そして個人の業務委託先に関する契約関係の整備などで「グループ法務部」も参加しています。法務部では、当初、個人株主への配当支払いにもマイナンバー対応が必要ではないかと考えていたようですが、これは後に証券会社に業務委託できることがわかりました。
プロジェクト全体は約20名で構成されています。いずれも本来の業務との兼任という形です。ここに外部の専門家(コンサルタント)やアウトソーサーにも加わってもらいながら進行しています。
現在の進捗状況や今後の見通しなどについてお教えください。
個人番号の収集は2016年1月から行う予定です。それに先立つ準備作業はすべて年内で終わらせたいと考えていて、8月中にはその実行計画がほぼ仕上がる見通しです。基本的にプロジェクトの役割は、この実行計画の策定で一段落します。あとは出来上がった計画を各社・各部署に持ち帰って作業していく中で、必要な場合にそれをサポートしていくイメージですね。ゴールは見えてきましたが、まだやるべきことが残っているので、全体としては6割程度の進捗率ではないかと考えています。
また、これまではマイナンバー制度に関わりの深い業務の担当者中心に話し合いを進めてきましたが、今後は一般社員やパート・アルバイトも含めて広くグループ全体に、制度の周知・教育を行う段階に入ります。個人への番号通知は10月から始まりますので、ここをしっかり行うことはとても重要です。