株式会社 学研ホールディングス
次世代を担う社員の成長と挑戦を支援
――学研の「経営人財」育成に向けた取り組みとは
グループ横断で新事業を創る「G-1グランプリ」
ジュニアボードの取り組みと並行して、2011年から「G-1グランプリ」というグループ横断の社内コンテストも実施しています。
小林:「G-1グランプリ」は社員からの提案による新規事業育成プログラムです。弊社グループの社員は、現業でも常に新しい発想を求められますが、G-1グランプリではその視野をグループ全体、あるいはそれ以上に広げた企画提案を募っています。社員なら新人でも誰でも参加でき、最初から詳細な事業計画書を作る必要もありません。発想の芽を摘まないようにハードルを下げ、A4用紙1枚のアイデアレベルで応募できるようにしています。
新事業の要件はただひとつ。グループメリットが活かせる事業であることです。各社単体で完結する企画は要りません。例えば出版事業会社の社員なら、こういう本を作りたいという企画は現業で行えばいいわけです。自社だけでは取り組みたくてもできないから、他社と協働して実現したい――そうしたグループの絆を深める、視野の広い企画を求めているのが最大の特徴です。もちろんグランプリ企画は実際に事業化されます。
これまでの応募の状況や事業化の実績について教えてください。
小林:アイデアの募集は年一回で、全国の事業所から毎回140~150件ほどの応募が集まります。第一回のグランプリに選ばれたのは、学童保育の機能をもつ教育託児施設の新事業。提案者はいま現場の責任者に就いていますが、もともとは幼児教育部門の社員ではなく、書籍販売会社の学研マーケティングに在籍していました。グループ横断プロジェクトならではの成果といっていいでしょう。
ボトムアップの提案を単に奨励するのではなく、社内コンテストという形で制度化したねらいはどこにあるのでしょうか。
小林:私たちがいま展開している既存事業の多くも、もともとは社員の「やってみよう」から始まっています。グループ社員の行動指針に「Creative Challenge」とうたっているとおり、社員一人ひとりの発想とたゆまぬチャレンジこそが学研グループの企業競争力の源泉です。「挑戦して失敗するのは大歓迎、挑戦しないことこそ悪である」という文化は、基本的に昔から変わってはいません。
ただ、冒頭に申し上げたような業績不振の厳しい時代があると、社員はどうしても委縮して守りに入ってしまいます。目先の数字や自分の専門にとらわれて、提案する意欲や発想まで鈍りがち。そこで、声を上げやすい、視野を広げやすいしくみを制度化して、もう一度組織を活性化させたいという思いがありました。ようやく業績が回復し、会社も足元を固めた上で攻めに転じています。この制度自体が、そうした経営の姿勢を社員に知らせるメッセージでもあるのです。