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上司と部下の信頼関係が「働きがいのある職場」を実現する~大手医療機器・診断薬メーカーシスメックスが取り組む“リーダーの意識を変える”研修とは~

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企業が成長していくには、従業員が仕事にやりがいを持ち、その能力を十分に発揮しなければなりません。検体検査に必要な機器・試薬・ソフトウェアの研究開発、製造、販売、サービス&サポートなどを行うシスメックス株式会社では、昨年からマネジャー層を対象に、意識改革のための研修を実施。「組織活性化」や「風土改革」から「働きがいのある職場」への実現につながることを期待しています。今回は、シスメックス株式会社 人事総務本部人材開発部長の西村文勝さんと、同社に研修を提供し、「働きがいのある会社」ランキングの発表でも知られるGreat Place to Work® Institute Japan コンサルタントの今野敦子さんに、「働きがいのある職場」を実現するために企業はどうすればいいのかについて、語り合っていただきました。
【インタビュー】
シスメックス株式会社 人事総務本部 人材開発部長 西村文勝さん
Great Place to Work® Institute Japan コンサルタント 今野敦子さん

西村文勝さん photo
西村文勝さんプロフィール
明治大学卒業後、シスメックス株式会社に入社。営業、営業企画を担当し、その後総務部長を経て人材開発部長を担当、現在に至る。
今野敦子さん photo
今野敦子さんプロフィール
立教大学卒業後、外資系航空会社、外資系商社を経て、2009年GPTWジャパン設立に参画。フランス国立ポンゼショセ工科大学(MBA)/名古屋大学大学院経営管理学修士号(MBA)取得

シスメックス株式会社
シスメックスは、血液や尿、細胞などを採取して調べる検体検査に必要な機器・試薬・ソフトウェアの研究開発、製造、販売、サービス&サポートを一貫して行う総合メーカーです。シスメックスの製品は世界170カ国以上で利用されており、海外売上高比率は約7割、グループ従業員の約半分が海外従業員というグローバル企業です。また、赤血球や白血球などを分析するヘマトロジーの分野では、世界シェア第1位を獲得しています。
シスメックス株式会社 ロゴ

「期待を超えるもの」を提供し合う“Giftwork®”

今野:貴社は、これまでも管理職を対象とした「マネジメント研修」に注力されてきましたが、最近は「意識を変えるための研修」を実施されていますね。まずは、その理由からお聞かせいただけますか。

西村文勝さんphoto

西村:当社は2013年度で45周年ですが、近年、急激に成長しています。しかし一方で、成長に組織が追いついていないのが実情です。マネジャー層で組織の中核を担う部長は、業績を上げてゆくことに注力しており、日々の業務に追われるばかりで、部下育成や職場に対する働きかけといったことまで考える余裕がなくなっています。つい「今まで通りにやって業績をあげればいい」「自分の持ち分の仕事を管理しておけばいい」といった考えになりがちで、部下との関わりや、広い意味で「人」への興味が希薄になっていると感じていました。それが企業風土調査などにも現れてきています。これまで、マネジャー層はTOEICやアセスメント、eラーニングを受講させるなど、さまざまな手段でマネジメント力の強化を図ってきましたが、新たに彼らの意識を変えることで風土を改革し、職場のコミュニケーション向上や組織活性化につながるような研修が必要ではないかと思っていました。そんな時に出合ったのが、Great Place to Work®Instituteの研修「JOURNEY!」だったんです。

今野:昨夏にGreat Place to Work®Institute(本部 サンフランシスコ)の講師が行った英語版「JOURNEY!」を人事部の方が受講されたことが最初のきっかけでしたね。人を人として見るマネジメント研修と進行スタイルに驚かれたようですが、「日々の仕事のなかで忘れていた部分を思い出させてくれた」と話されていました。

西村:受講した人事部員から研修の内容を聞き、大変関心を持ちました。また、Great Place to Work®Instituteでは「働きがいのある会社」を選出・発表されていて、世界中の「働きがいのある会社」を研究されていることもあり、ぜひ研修を導入しようと考えました。まず部長向けに、昨年12月に1回、今年1月に3回、これまでに合計70人が受講しました。「JOURNEY!」では、参加メンバーの討議の中から、理想の職場、リーダーを思い描いていきますが、その中で出てくるのが、“従業員”や“経営・管理層”が互いの期待や要求を上回るものを提供し合う“Giftwork”という考え方です。これには、私も大変共感を覚えました。

Giftwork® サイクル

Giftwork®とは?
従業員や経営・管理層が、お互いに当初の期待や要求を上回るものを提供することで、組織全体や人間関係の向上に寄与できる相互交流のこと。Giftworkが頻繁に起これば、職場内の信頼レベルは高まり、「働きがいのある職場」づくりにつながっていく。


今野:西村様も実際に「JOURNEY!」を受講されたわけですが、意識や行動に何か変化はありましたか。

西村:受講後はすぐに職場でGiftworkを試してみました。正月に時間があったので、部下一人ひとりにあてて、昨年はどんな仕事ぶりが良かったのか、今年はどこに期待しているかについて手紙を書いたんです。そして、新年会のときに部下一人ひとりに手渡しました。最初は私自身半信半疑であり部下も驚いた様子でしたが、みんな快く受け取ってくれて、その後のコミュニケーションにも変化があったように思います。今後は、実際の仕事の中でも感謝や信頼を行動で示し、職場内の信頼のレベルを高め、「働きがいのある職場」づくりにつなげていきたいと思っています。

人材開発部人材開発課 本庄大介氏の声
上司である西村部長から、私宛の手紙をもらいました。もらったことで、距離が近くなった気がします。部下同士では、手紙の内容まで話しませんが、部長の変化は話題になりましたね。また、手紙に関する会話が増えて、部下同士のつながりにも変化が出てきていると感じています。自分たちのことを考えてくれる上司は誇らしさにつながりますし、次は自分たちが何かしなければと思うようにもなりました。

今野:他の受講者の皆さんには、何か変化がありましたか。

西村:以前は、部下に対して「いい人と思われていればいい」といった消極的な態度があり、職場を活性化させることや、場をつくることへの意識は低かったように思います。しかし、研修を受け、一月後にアンケートを取った結果、「部下との交流を忘れていたので実施している」「これまで、Giftworkを意識したことがなかったが、意識して行動するようにしている」など、新たな気付きがあったという人が多かったです。人に目を向けるようになったことは大変よい変化で、この機会に「職場」についてもう一度考えてほしいと思いました。

今野:Giftworkのアプローチは、上司、部下のそれぞれが「お互いの期待を超える」ことを目指しますが、いつも驚きを与えるのは難しいことですよね。しかし研修では最初の一歩を小さめに考える、つまり「皆さんが既に行われている日常のマネジメントに、ちょっとした(Giftwork的な)エッセンスを加えてください」とお伝えしています。実際演習も多く行いますので、受講後の実践へつながりやすいのではないでしょうか。お互いの期待を超えた演出することで生じるのは、信頼関係です。部下が期待に応えて、上司に期待以上のことを返す。それを上司が認めることで、部下はさらに信頼を寄せる。すると、職場に信頼の風土が根付いていきます。

西村:研修では、「そうだったのか」と気付くことがたくさんありました。講師とのやりとりを通じて「行動を変えれば風土も変わるはず」と素直に思えたのは非常によかったと思いますね。

今野:「JOURNEY!」は一般のマネジメント研修と比較して進行スタイルがユニークです。講師と受講者間のインタラクティブなやりとりを大事にしており、双方が同じ立場で参加することが求められます。従業員の皆さんからは、どんな反応がありましたか。

西村:受講前はどんな研修なのか、戦々恐々としていたようです。しかし、会場のドアを開けると音楽が響き、壁にはイメージポスターも貼ってある。講師から名刺を渡されて挨拶があり、「互いが同じ目線で学ぶ」という印象を受けたようです。

研修風景 研修風景

今野:働きがいのある職場では信頼の土台が必要です。そのことは知識で学ぶというより、心で感じたり、体験したりすることが大切です。ですから、人として社員をみる、人としてその人の仕事を受け入れる、といったことの意味をマネジャーの皆さんが納得できたなら、「Giftworkを職場でもやってみよう」と思ってもらえます。そんな心の揺さぶりの連鎖が起きれば、この研修も成功だと思います。


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