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「ワーク・ライフ・バランス」実現に向けて
~企業は何に取り組むべきなのか?

近年、長時間労働の是正や育児支援制度の導入など、企業の「ワーク・ライフ・バランス」に関する施策が注目を集めている。しかし、ワーク・ライフ・バランスとは、単なる施策の導入ではなく、働き方の根本的な改革である。社員の多様な働き方を実現するために、効率よく仕事を行い、時間生産性を向上させることが、いま強く求められているのだ。「なぜ必要か」という議論から、「どうやったら定着するのか」という、現場のマネジメントのあり方が問われる時代となってきたのである。それでは、ワーク・ライフ・バランスを実現するために、企業はどのように取り組んでいけばいいのか?また、現場でのマネジメントをどう行っていけばいいのか?この分野に詳しい専門家の方々に、お話を伺った。

【Interview-1:人事部へのメッセージ】
どのようにワーク・ライフ・バランス支援を行うのか
~求められる人事マネジメントと働き方の改革

佐藤博樹氏
東京大学社会科学研究所教授
佐藤 博樹氏
1981年一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位修得退学。81年雇用職業総合研究所研究員。83年法政大学大原社会問題研究所助教授。91年法政大学社会科学研究所教授。96年より現職。専門は人事管理論。公的な活動として、内閣府・男女共同参画会議議員、ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議委員、厚生労働省労働政策審議会分科会委員、仕事と生活の調和推進委員会委員長、経済産業省ジョブカフェ評価委員他。「男性の育児休業:社員のニーズ、会社のメリット」(中公新書)「ワーク・ライフ・バランス:仕事と子育ての両立支援」(ぎょうせい)「人を活かす企業が伸びる:人事戦略としてのワーク・ライフ・バランス」(勁草書房)など、ワーク・ライフ・バランス関連の著書を数多く手掛けている(編著・共著含む)。最新の著書は、「実証研究 日本の人材ビジネス-新しい人事マネジメントと働き方-」(日本経済新聞出版社)。また、ワーク・ライフ・バランスを学ぶためのDVD「ワーク・ライフ・バランス」(日本経済新聞出版社)の監修も担当している。

そもそも、ワーク・ライフ・バランスとはどういうことなのでしょうか。

言葉としてはかなり普及しましたが、まだ誤解が少なくありません。ワーク・ライフ・バランスとは、社員が、会社や管理職から期待されている仕事や、自分がやりたい仕事をきちんとできると同時に、仕事以外にやらなくてはいけないことややりたいことができている状態を意味します。

勘違いしてほしくないのは、「仕事はほどほどでいい」というわけではないことです。仕事がちゃんとできていることは、ワーク・ライフ・バランスの前提条件なのです。しかし、仕事以外でやりたいことは一人ひとりで違います。また、ライフステージによっても変わっていきます。それなのに、ワーク・ライフ・バランスを子育て支援に限定しがちな企業も少なくありません。確かに子育て中の人にとっては非常に大事ですが、子育てがひと段落すれば、今度はまた違ったこと、例えば、自己啓発が大きなテーマとなってくるかもしれません。すべての社員にとって唯一望ましいワーク・ライフ・バランスの状態があるわけではないのです。

重要なのは、社員それぞれのワーク・ライフ・バランスの実現を、企業が支援していくことです。社員一人ひとりが求めているワーク・ライフ・バランスを実現できるような働き方や、社内風土を作ることが、企業に求められているのです。

だから、社内であえてワーク・ライフ・バランスという言葉を使う必要はないと思います。それこそ、「オンも充実、オフも充実」といったキャッチフレーズでいいわけです。自社で進めるワーク・ライフ・バランスは何なのかということを明確にし、それが理解しやすい言葉で社員に情報発信すればいいのです。

ワーク・ライフ・バランスへの取り組みを、どのように進めていけばいいのでしょうか。

ワーク・ライフ・バランス支援に必要な取り組みには、3つの段階があります。1つは、建物の土台にあたる部分で、職場風土です。次は1階部分で、これは働き方、仕事の仕方です。最後の2階部分が、両立支援にかかわる制度です。この3つの取り組みのバランスがとれていないといけないのです。

3つの取り組みからなるWLB支援
3つの取り組みからなるWLB支援

土台の部分が重要です。ライフステージによって、仕事と生活のバランスのあり方は大きく変わってきます。職場には多様なライフスタイルの社員がいることになり、その人たちが意欲的に働けることが大事になります。そのためには、さまざまな働き方やライフスタイルを取る人を受け入れられる職場を、目指していかなければなりません。

今までの日本の職場は仕事一辺倒の「ワーク・ワーク」の社員像を想定していました。しかし、現在はワーク・ワーク社員が少なくなり、多様な生き方、仕事の仕方、ワークスタイルを選ぶ人が増えています。ワーク・ワーク社員だけではなく、ワーク・ライフ・バランス社員を受け入れられる職場風土としていくことは不可欠で、これがまさに土台となるわけです。

次の1階部分は、仕事の仕方、働き方に相当します。社員がいつでも残業できることを前提としたマネジメントを見直し、社員の「時間制約」を前提とした仕事管理、働き方を実現することです。しかし、ワーク・ライフ・バランスを推進している企業でも、残念ながら、仕事の仕方や働き方の見直しに取り組んでいる企業は少ないです。その結果、恒常的な残業があったり、時間生産性が低い職場が依然として多いのです。

社員一人ひとりが時間意識を持ち、限られた時間を有効に活用するには、まず、無駄な仕事をなくすことです。仕事に優先順位を付け、付加価値の高い仕事から取り組んでいくことです。また、過剰品質を解消することも重要です。そうして時間当たりの生産性を向上させることです。働き方を見直すことで新たに創出された時間を、自分の生活のために有意義に使っていくことが大事です。こうした働き方にしていくためには、この1階部分がとても重要です。

そして、土台と1階が整備された後に、2階の両立支援制度の整備が課題になります。せっかく制度を導入しても、土台や1階部分ができていなければ、両立支援制度は円滑に利用されません。ところが、今までの日本企業のワーク・ライフ・バランス支援というのは、2階の制度導入を中心に行われてきました。さらには、法定を上回る制度の導入を競っていた面もありました。しかし、土台と1階が整備できれば、2階の両立支援制度は、法定レベルでも十分なのです。

大事なのは、例えば、取得できる育児休業期間の長さではなく、育児休業を取得して復職した後、無理なく仕事と子育てが両立できる1階部分の働き方があること、また、それが当たり前となっている職場風土としての土台があることなのです。この部分ができていないワーク・ライフ・バランス支援をいくら行っても、実効性はありません。2階だけでなく、土台と1階をきちんと整備していくことこそが、これから企業に求められるワーク・ライフ・バランス支援のあり方だと思います。

すると、部下へのマネジメントのあり方も変わってきますね。

2階部分は、人事部が就業規則を変更し、制度を導入することで整備できます。しかし、土台と1階部分については、人事部が就業規則を変えることで、整備できる話ではありません。社員一人ひとりの時間意識が変わると同時に、管理職の職場マネジメントが変わらなくてはいけないのです。つまり、管理職による仕事や部下の管理のあり方がポイントになります。なぜなら、部下に意欲的に仕事をしてもらって、自分に課せられた課題を達成するというのが管理職の仕事だからです。

実は、そのことは今も昔も変わりません。しかし、その方法が変わってきました。現在では、部下に意欲的に働いてもらうために、その人がやりたい仕事をできるだけ配分し、働いたことをちゃんと評価し、将来やりたいキャリアにつながるような仕事に就けるようサポートしていくだけでは、不十分なのです。

昔は、このように仕事面が充実してさえいれば、それで十分だったのです。なぜなら、皆がワーク・ワーク社員だったからです。ところが、現在はワーク・ライフ・バランス社員が増えてきました。仕事以外にやりたいこと、やならければならないことがある社員が増えてきたのです。

ワークとライフのバランスが取れていない状態を、ワーク・ライフ・コンフリクト(仕事と生活の軋轢・対立)と言います。どちらかができていないと、ストレスが高まり、社員が意欲的に仕事に取り組むことができなくなります。だから、部下がワーク・ライフ・コンフリクトに陥らないよう、ワーク・ライフ・バランス実現に向けて、支援していくことが求められるのです。これは部下のためであると同時に、管理職のため、そして会社のためにもなることです。

では、人事部に求められることは何でしょうか。

現場の管理職の部下マネジメント、仕事の管理の仕方を変えていくことです。これまで、人事部は制度導入に力を入れてきましたが、これからはワーク・ライフ・バランスを実現するための、多様な価値観、生き方、ライフスタイルを容認できる職場作り、そして社員には「時間制約」があることを前提としたマネジメントや働き方を実現してくための工夫が強く求められます。

その際に問題となるのは、管理職の多くがワーク・ワーク社員であることです。今の部長は1980年頃の入社で、課長は85年前後くらいでしょう。職場に同期の女性社員はいましたが、その多くは結婚すると退職し、専業主婦になっていった。一方で、彼ら自身は仕事中心の生活にシフトし、上司に言われるからではなく、残業は当然のことだと思ってきた。同じ仕事を長くやれば、成果に結び付く時代だったからです。そういう時代を過ごしてきたのが、今の部課長世代なのです。

彼らにとって望ましい仕事の仕方や、ライフスタイルがあります。しかし、それについて部下がよかれと思っているかどうかは、別なのです。そこには大きなギャップが存在するわけです。また、管理職世代の意識を変えるというのも、彼らには成功体験がある分、大変です。ワーク・ライフ・バランスが単に子育てのためだけではないということ、すべての社員の課題であり、何より自分自身のためでもあることを、十分に理解してもらわなくてはならないわけです。そういう「気づき」を促すことがポイントとなるのではないでしょうか。

そのためには単なるテキストではなく、物語性のある映像に訴えることが効果的だと考え、ワーク・ライフ・バランスに関するDVD監修に携わった次第です。このようなツールを使い、男性管理職の意識改革を行うことは、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、大変有効だと思います。

(取材は2010年2月9日、東京都文京区・東京大学にて)

【Interview-2:現場管理職へのメッセージ】
社員がワーク・ライフ・バランスを実現するために、現場がすべきことは何か
~「産休・育休」を例にした管理職の具体的な対応

河野真理子氏 (株式会社キャリアネットワーク 代表取締役会長・人材育成コンサルタント)
株式会社キャリアネットワーク 代表取締役会長・人材育成コンサルタント
河野 真理子氏
1981年聖心女子大学卒、2009年東京工業大学大学院(技術経営修士課程)修了。パイオニアグループ国際部門入社、企画・人事勤務後、89年パイオニア100%出資の人事・人材総合サービス会社キャリアネットワークを設立し、出向。常務、代表取締役社長を経て、02年同社独立後、現職。イノベーティブな組織づくりを目指し、企業の人材育成(キャリア開発・能力開発)や組織能力向上のコンサルティングを行う。内閣府 男女共同参画会議専門委員、労働政策研究・研修機構 総合評価諮問委員、日本生産性本部理事/ワーク・ライフ・バランス推進協議会委員。
安藤博子氏 (株式会社キャリアネットワーク 常務取締役経営企画室長)
株式会社キャリアネットワーク 常務取締役経営企画室長
安藤 博子氏
1980年東京女子大学短期大学部卒。三菱自動車工業、CBSニュース社通訳等を経た後、93年よりキャリアネットワークにてキャリア開発・支援両面での企業・個人双方へのコンサルテーションに従事。2002年取締役、06年より現職。日本経団連キャリア開発センターキャリアアドバイザー、国家検定キャリア・コンサルティング技能検定厚生労働大臣指定試験機関技能検定委員。

「産休・育休」を取得し、職場へと復帰する際、問題となっていることは何ですか?

河野:産休・育休後に職場復帰して働くということは、日本の職場では初めてといってもいい現象でしょう。男性管理職が戸惑うのは当たり前です。重要なのは、その後の対応はどうなのか、ということです。現実を見ると、ワーク・ライフ・バランスの流れをきちんと受け止めて対応できる人と、受け止めることが難しく、さらには何もできない人とに分かれてしまっています。ここで問題となるのは、個人的な価値観や固定観念の上での言動やマネジメントになってしまっている点です。

これは、上司と部下のギャップが非常に大きいからです。現場の管理職の多くは男性で、産休・育休を取るのは女性。両者は、育ってきた家庭環境、職場環境が大きく異なります。男性の場合、「働きながらの子育ては難しい」「仕事の生産性が落ちてしまう」「女性は育児に専念するほうがいい」といった価値観でのモノの言い方になりがち。一方、女性はそうではありません。仕事が面白ければ続けたいと思っている人が多い。しかし、両立してやっていくノウハウは、ロールモデルがいないために持っていない。何となく続けていきたいと思いながらも、具体的なキャリアに対するビジョン、生活環境の整え方、仕事面での対応など、現実的なところは何の解決策もないまま来てしまっている、という状態です。

安藤:一昨年あたりから、育休から復帰する人がとても増えています。企業はその数に驚き、慌てているというのが現状ではないでしょうか。これまでは、職場に1人くらいだった。それが大人数になってくると、現場全体に及ぼす影響も大きいため、どうにかしなければいけないと考えています。しかし、どうすればいいのか、誰も教えてくれない。制度を作った人事部や、現場の管理職の多くは男性で、子育ての経験がほとんどありません。会社として、このような状況下での対応をどうしていいのかよく分からないわけです。

そうしたギャップがある中、現場で求められる対応とは何でしょうか。

河野:男性管理職の意識改革と、マネジメントにおける言動の見直しです。そして、ダイバーシティマネジメントへの意識と、その遂行だと思っています。特に、コミュニケーションの取り方が重要です。女性の場合は、キャリアを開発・継続していくために、自己の生活環境を整える努力をすること。それらが、両者のギャップを埋めるために重要だと考えます。

安藤:ここ数年、育休から復帰する前の女性と上司を対象にした研修を行っていますが、昨年くらいから、上司の参加が増えるようになりました。そう考えると、今の状況で一番不安なのは、本人以上に上司なのかもしれません。事実、研修後のアンケートを見ると、「そこまで言ってもいいんだ」「そういう風に考えればいいのか」など、上司の記述が目立ちます。誰も教えてくれなかったので、彼らはものすごく悩んでいたわけです。

研修では、「子どもを抱えていても、仕事で活躍して会社に貢献しなければ、職場に戻る意味がない」など、ワーキングマザーには厳しい話をします。すると、どの企業の研修でも、「頑張ろうという気持ちになった」「戻ることに迷いがあったが、これで吹っ切れた」といった、前向きな反応があります。一方、管理職からは「ワーキングマザーにとって、刺激が強すぎるのではないか」「そこまで言うと、戻る気持ちがなくなってしまうのでは」といった反応が意外と多いのです。女性とは、大きなギャップがあると思いました。

なぜなら、男性管理職の言動の源は、「夫」としてのものだからです。「妻には家にいてほしい」といった感覚で、部下のご主人になり代わってモノを言っているのです。外資系ではそんなことはありませんが、古くからの日本企業の管理職には、そういう発言が少なくないように思います。大切なのは、妻としてではなく一人の人材として期待すること。しかし、実際は「無理しなくていいよ」「今はお子さんが一番大切だから」など、期待とは全く逆の言葉しか言わないケースが多い。これでは、本人たちのやる気は削がれてしまいます。ほとんどの人は、早く仕事に復帰して戦力になりたいと思っている。そういう気持ちを、男性管理職の人たちはよく分かっていないように感じます。

さまざまなプラス面もあるように思うのですが。

河野:多くの日本企業は、必要な人材には中長期的に活躍してもらおうと考えています。その上で考えると、産休・育休にはいくつかの効果があると思います。1つ目は、意欲があって優秀な人材が定着する点です。また、人材の確保にもつながります。2つ目は、自分のプライベート面を支援してくれたことによるロイヤリティの向上。これは自分自身の子育て経験も踏まえ、非常に大きいと思います。3つ目は、ダイバーシティの視点における事業展開や、運営への影響です。さまざまな商品開発にもつながるほか、子育てを経験したことは、組織マネジメントへと活かすことができます。4つ目は、「人間力」の向上。さまざまな人との関わりの中で、単なるスキルだけではなく、忍耐力や積極性、責任感、協調性などが求められ、組織の一員として重要な力が育まれることです。こうした人間力というのは、仕事をしているだけで身に付くものでありません。広く、社会の中で経験することが重要です。育児は、その典型的な例でしょう。

安藤:個人と組織の両方にプラスがあります。個人では、育児経験を通して、ストレス耐性や忍耐力が強くなっていくこと。それからワーキングマザーになることで、倫理観が強くなることもあると思います。特に、コンプライアンスを重視する見方が強まります。

組織としては、部門の生産性向上の大きなチャンスです。育児休業取得者が1人出ると、部門内の業務全体を見直さなければなりませんが、業務分担や仕事の流れを見直すことにより、チーム内のコミュニケーションが活性化されます。また、仕事を引継ぐことで、後任者は少しレベルの高い仕事を任せられることになり、育成されていきます。また、全体の業務を見直すことは、残業時間の削減や有休取得の促進にもつながります。

今後、少子高齢化社会が進んでいくと、介護は非常に大きな問題となってきます。遠からず、社員の誰もが介護休業を取らなければならない状況も出てくるでしょう。しかし、いま産休・育休でシミュレーションしておけば、「お互いさま意識」の相互支援の風土を作ることができます。このような効果も、見逃せないのではないでしょうか。

河野:子育てをすることで、生活スタイルは大きく変わります。本来、価値観とは、ちょっとやそっとの仕事では変わりませんが、今まで予期できなかったことを経験することで、視野が広がるだけではなく、価値観が大きく変わっていきます。「仕事があることは、とても素晴らしいことだ」「会社から離れて初めて、上司や同僚の有難さが分かった」等々。このようなロイヤリティが、育まれていくように思います。

職場復帰後も円滑に働いてもらうために、現場の管理職としてはどのようなことに留意すべきですか。

河野:本人と、いかにきちんと話をするか。産休・育休の前後はどうするかという「予測」を、お互いに共有することです。まずは、そのための「面談」の機会を持つことから始まります。

安藤:本人に、子育て後のキャリアイメージを持たせることが重要です。子どもの手がある程度離れたとき、また、5年から10年、15年といった中長期的なスパンで、自分はどういう働き方をしていたいのか。どんなポジションにいたいのか、どんな仕事をしていたいのか、といったことです。例えば40歳で初級管理職になっていたいと思うなら、それまでの間、どのような働き方をすればいいのか、逆算してみることです。よくよく考えれば、子育て後の人生のほうが長いわけです。そこをよく認識した上で、上司と部下が一緒にキャリアのあり方について考えていくことです。

河野:「逆算のキャリアデザイン」という発想が大事なのです。5年、10年のキャリアだけでなく、20年、30年、さらには定年まで働くかどうかを考えた上で、自分のキャリアを考えていく。それは仕事だけではなく、プライベートを含めたライフキャリアデザインです。その視点から、逆算してその時々の仕事の仕方、キャリアのあり方を考えていくのです。面談の際には、「自分はこういう考えで、こうした働き方をしていきたい」という、長期ビジョンを話し合っていくことです。

何も、ワーク・ライフ・バランスは産休・育休に限ったことではありません。大切なのは、産休・育休も組み入れたライフプランとキャリアプランを考え、それを上司と部下が面談の中でどうすり合わせていくかということ。その時々で、どのような働き方、勤務形態をしていくのか、また、どんな仕事にチャレンジしていくのか、そうした具体的なプランを作成し、共有していくことです。これができていれば、上司もどのように育てていけばいいのかが見えてきます。

【図表】 Aさんのキャリアプランとライフプラン (提供:株式会社キャリアネットワーク)

安藤:これができていないと、お互いが疑心暗鬼になってしまいます。女性からすれば放置された状態となって、期待されていないと思ってしまう。貴重な人材を失うことになりかねません。

なるほど。まさしく、上司の「面談力」が問われるわけですね。

河野:これまで、セクハラやパワハラの問題があるからか、男性管理職の面談でのコミュニケーション力はお世辞にも上手とは言えませんでした。これには、時代背景や育った家庭環境の問題があります。

男性管理職の意識改革には時間がかかります。それには理屈で納得させるより、典型的なロールモデルを見せたり、そういう部下と組ませたりすることです。そうすることで、気持ちの変化や意識改革が促されます。産休・育休を取っても、きちんと仕事のできる人なら文句の言いようがありませんから。

安藤:あるいは、産休・育休から復職した女性社員に対するマネジメントをどのように行っているのか、それを管理職の評価項目に入れると、意識改革も起きてくるのではないでしょうか。女性をちゃんとマネジメントする、それが男性管理職の仕事であることを理解することがとても大切です。

それでは今後、どのような点に注力していけばいいのでしょうか。

河野:企業側は、社員を皆かけがえのない人材としてとらえ、「常に必要な人材」であり続けるよう、自律的な能力開発・キャリア開発を促すことが重要です。そして、せっかく育った企業の人的資源を、辞めさせたりやる気を失わせたりすることなく、長く前向きに活躍してもらうようマネジメントすることは、管理職の重要な仕事です。

そこで重要なのは、部下とのうまいコミュニケーションの取り方、人間関係構築のあり方です。個人的には、これが肝だと思っています。暗黙の了解ではなく、管理職としての言動をうまく出していき、引いたり押したりしながら、コミュニケーションをきちんと取ること、これがポイントです。

女性といっても一人ひとり違いますので、個々の特性を見ること、つまりダイバーシティという視点が大切になってきます。個として見たとき、「能力」という軸、「生活環境」という軸、「意欲」という軸の3つがあると思いますが、当然、人によって違います。それを管理職がいかに把握し、女性側もいかに自分自身のビジョンとして持てるか。管理職と社員が対等の立場で常にコミュニケートしながら、相乗効果を高めていけるかどうかが、分かれ目です。

また、モチベーションという点で考えると、男女にかかわらず、給与や役職では支払うことのできない時代となってきました。そうすると、何がモチベーションになるのかを考える必要があります。キャリア面ならば、「自分は育っているな」という感覚や、「やっていて面白い」と思える仕事が提供できているかどうかです。また、女性が「長く働きたい」「活躍したい」と思える企業風土というのは、常に少しハードルの高い仕事を与え続けることだと思います。

結局のところ、ライフが充実していることによって、ワークのやりがいも上がってきます。生きがいを上げることが、働きがいを上げることになっていくわけです。ですから、ワーク・ライフ・バランスを根付かせるためには、優秀な人材で成功例を出すこと。社内におけるロールモデルを構築していくことです。産休・育休については、優秀な人で、うまくいった例を早く出していくことが重要です。というのも、それが平準的なモデルとなって見えるので、効果としても大きいからです。

安藤:特に、職場に戻った後に、優秀な成果を出している人です。この場合でも、管理職の部下に対する働きかけがとても重要になってきます。

河野:人事部としては、ワーク・ライフ・バランスにおけるトップからのメッセージがあって、管理職と女性がそれに応えていくという形。そうした人材マネジメントにおけるバリュー・チェーンを構築し、サポートしていくことが求められているのだと思います。

(取材は2010年2月19日、東京都港区・キャリアネットワーク本社にて)

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