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管理職1年生日記 Episode-2
若手社員との接し方~トラブルをどう乗り越えたか

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営業課長へと昇進し、当初は個人目標がなくなったことへの戸惑いを見せたA氏だが、部下に成果を出させることが管理職の役割だと自覚できたことで、俄然、やる気にアクセルがかかってきた。しかし、管理職としてはまだまだ経験が足りないのは仕方のないところ。特に、最近の若い社員の考えていることや行動が理解できず、その結果、彼らとコミュニケーションがうまく図れず、早々とトラブルを抱えることになってしまった…。

最近の若者は何を考えているのか?~「本意」が伝わらない…

昨年4月、34歳で課長となったA氏。1972年生まれの「団塊ジュニア」と呼ばれた世代である。食品メーカーC社への入社は1995年で、世代的には「バブル崩壊後入社組」と言われた。同期ライバルが多い中、厳しい就職活動を乗り越えてきただけあって、基本的には優秀であり、何より真面目なのが大きな特徴である。

一方、部下となる若手社員の多くは、IT世代の申し子のようなタイプが多い。ケータイを駆使し、仲のよい友人とばかり付き合う傾向がある。そのためか、職場では上の世代とのコミュニケーション を取ることがうまくない。さらに最近の新人となると、バブル期並みの売り手市場ということもあってか、そもそも仕事に対する真摯な態度が希薄だ。自己中心的な傾向が強く、「オレ様」気分の者も少なくないと感じている読者も多いことだろう。

そんな中で、トラブルは思ったよりも早く起こった。4月半ばの昼下がりの午後、C社の大切なクライアントであるD社からA氏へ電話がかかってきた。すぐに電話を取ると、語気がとても荒い。曰く、部下であるFの対応が非常に失礼だと言うのだ。とはいえA氏には初耳であり、何よりもFからはそんな報告は受けていない。挙句の果てには、管理職としての責任管理 がなっていないと苦言を呈されてしまった。ここは、ひたすら「申し訳ありません」を繰り返すのみである。そして、新任課長であるA氏としては、まず事をあまり大きくしたくないと思い、Fには慎重な言葉遣いで尋ねた。

「Fさん。D社の部長から問い合わせがあったけれど、何かあったの?」
「依頼された件を、そのまま現場に発注しましたが…で、何か?」
この「で、何か?」が、それまで冷静だったA氏の感情のコントロールを微妙に狂わしてしまった。

「何か?じゃないだろう。口で説明した内容が、ぜんぜん反映されていないと怒っていたぞ」
「そんなっ!細かい要望があるのなら、紙にちゃんと書くのが当たり前ではないですか」
Fの反応に、思わず呆れるA氏。Fには、言うべきことを言わなければダメだと思った。
「もう頼むよ、本当に。紙にまとめたものが全てじゃないんだから。それだけなら、メールやファックスで済むことだろ。わざわざFさんに行ってもらったのは、先方の置かれた状況や要望をヒアリングしてもらうためなんだよ。それが仕事だろ」
「それなら、初めから紙に書かなければいいんですよ。だいたい、D社の人は余分なおしゃべりが多いんですよ。回りくどい言い方をするし。それなのに、一方的に責任を押し付けるのも大人気ないですよね」
「そうじゃないだろう。何より、相手は大事なお得意さんなんだから…」
と、A氏がさらに言葉を続けようとすると、
「すみません。夜に用事が入っていて、夕方までに仕事を終わらせなくてはなりませんので、その件はまた後にしてください」
と、一方的に会話をストップされてしまう。もはや言葉を失うばかりのA氏だ。

A氏としては別に、お説教をしたつもりはない。Fに事実を確認しようとしただけなのに、もはや取り付く島もない状況に陥ってしまった。自分の「本意」が伝わらなかったことがとても腹立たしかった。その夜、久々に深酒をした。

挨拶や大事な会話を「メール」でするか?

先の件の影響もあってか、翌日のA氏の表情には本来の明るさが消えていた。傍目から見ていてもそうだ。こういうときには、問題が起こりがちなもの。事実、次のトラブルが起きるのも早かった。

3日後、F社と並ぶ重要なクライアントG社からのクレームの旨を、部下であるSからのメールで知ったのだ。それも、何と出張から帰ってきた夜に、メールボックスを空けて初めて気づいたという。問題は既に、SもクライアントG社も帰ってしまった後だったということ。さあ大変!

即刻、Sの自宅に電話を入れて事の次第を確認し、翌朝一番で自らG社に出向いてトラブル処理を行い、一応は事なきを得た。クレームを付けたG社も、まさか課長であるA氏が直接来るとは思っていなかったようである。しかし、今回のケースは、もし対応が遅れて午後にでもなったら、危うく大きなトラブルになるような件だった。管理する立場 として、こんなことが2度とあってはならないと思ったA氏、もはや怒りを隠せない様子である。

帰社すると開口一番、
「問題があったときは、すぐに報告しないとだめだろう」
「だから、ちゃんとメールに書いたじゃないですか」
「重要なことや緊急事態のときに、何で電話で言わないんだ」
「そんなことないですよ。メールの方が確実ですし、全く問題ないですよ」
「違う!そういえばお前、挨拶もメールで済まそうとするよな」
「挨拶をメールでやっちゃまずいですか?」
「………。」
しばし、沈黙が続いた。
「分かった、もう席に戻っていい」
挨拶をメールで済ます件には、さすがのA氏もどう対応していいのか分からなくなっていた。

C社では社内イントラが整備されて以降、社員同士のコミュニケーションにメールが使われることが多くなった。しかし、簡単な連絡事項ならともくかく、重要な報告や決済事項までメールで済まそうとする若手社員が急増し、正直、おじさん管理職は当惑するばかりである。

Sはメールは確実だと言ったが、A氏はそうは考えてない。メールだと直接相手の反応が見えないから楽だとか、責任を回避できるといった逃げの手段として使っているからだと。
「メールには、メールで答えなくてはならないのか」
思わず愚痴が出る。この日も深酒をしたA氏。妻には露骨にいやな顔をされた。

管理職の「先輩」である「父親」から受けたアドバイス

その週末、東京近郊にある実家に帰ったA氏。実は、課長に昇進したことを喜んでくれた両親が、お祝いをしてくれるというのだ。久々に父親と話をするが、考えてみれば父親は長年、百貨店に店長として勤め上げた実績を持つ管理職としての「先輩」でもあった。少々照れはあったが、思い切って最近あったトラブルについて、父親の意見を聞いてみることにした。

「オヤジ、管理職の仕事は部下の能力を引き出して、組織の成果を出すことだろ。今話したケースでも、自分としてはそう思って部下に接しているのに、なぜかうまくいかないんだよ」
父親はしばらく考えた後、口を開いた。
「部下といっても皆、違うんだなこれが。だから、能力の引き出し方にもいろいろある。例えば、自分でやってみて背中で教える方法もあれば、褒めてやる方法、叱って引き出す方法。いろいろだ。部下の能力と性格で方法はおのずと変わるもんなんだよ」
「じゃあ、俺の方法は適切でなかったと」
「そうだ。お前は責任感が強く、真面目だからつい、相手にも強く言ってしまう。そういう叱り飛ばす方法が必要なのは、やる気も能力もないダメな部下のときだけだ。お前の部下はそうじゃないだろう?」
「そうだね…」

本当にそう思った。そしてA氏は、彼らの力を信じ、待ち、そして生かしていくことが組織として大きな成果を出すことだと、『新任管理職の心得』に書いてあったことを思い出した。

「能力もプライドもある部下に、叱り飛ばしていた自分はいったい何様だったろう」
「確かに場合によっては叱ることも必要だが、叱る方法は長続きしないものなんだよ。むしろ、反発して心を閉ざしてしまうことになる。今のお前の状況がそうじゃないのか」
「じゃあ、どうすればいいんだ」
「まずは、相手の立場に立って、どうしてそういう発言となったかを考えてみることだ。それができなきゃ、管理職失格だぞ」
「分かった。それ以外には?」
「そうだな、やる気を出してもらうには、いい所を見つけて褒めることだな。ただし、具体的にだ。その際、期待感を持たせたり、自信を付けさせる言葉をお前なりに考えてみることだ」
「なるほどね。オヤジ、ありがとう」

少しだが、どん底にいた自分には光明が見えてきたような気がした。実家に泊まったその日、酒がうまかった。傍らにいた妻もそんな雰囲気を察してか、何となく機嫌がよさそうだった。

一人ひとりに対する「言葉」を用意することの大切さを知る

翌週、FとSを個別に呼び出して、管理職として未熟だった自分の「言動」に対する非を詫びた。そして、自分としてはこうしていきたい、こんなことを考えている、こんなことが大事だと思っているといったこと、そしてFやSに期待していることを、いろいろなケースを想定して具体的に語っていった。最初は反応が鈍かった2人だったが、上司と部下というより、一緒に仕事をしていく仲間として「対話」を積み上げていきたいというA氏の熱意の純真さを感じ取ってか、表情が少し変わってきた。

そして、2人からはこのような言葉が発せられた。
「いや、自分こそ勝手なことばかり言って、申し訳ありませんでした。A課長が、そんなにまで自分のことを考えていてくれたなんて、知りませんでした。これから一緒にがんばりましょう」

実は、2人と会うまでに、A氏は自分なりに「やる気を出させる言葉」や「自信を付けさせる言葉」さらには「期待感を持たせる言葉」などを、部下の個性や仕事内容に合わせていくつものパターンを考えていたのだ。例えば、
「Fなら、こういうことはできると思って頼みたいのだけれど」
「Fのいいところは、○○だよね」
「Sなら大丈夫だよ。できるよ」
「すごい、これはSしかできない強みだよね」
といった具合。

部下の顔を思い出しながら考えていたら、かける言葉が次々と頭に浮かんできたようだ。
言葉は、コミュニケーションの第1歩。
この先、状況に応じてバリエーションを増やしていき、部下1人当たり100個ぐらいは用意したいとも考えている。

管理職としての「心構え」に加えて、どうやらA氏にはコミュニケーションを図る「言葉」の持つ意味を理解し、状況に応じた使い方を意識するようになったのだ。管理職1年生としては、まずまずのスタートと言えるのではないか。

そんなA氏が管理職として「一皮むける経験」をしたのが、「管理職研修」での出来事だったという。3回目は、そのドキュメントを追ってみたい。乞うご期待!

→Episode-3>
→Episode-4>

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