企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

本誌特別調査 2019年度 モデル賃金・年収調査
上場企業を中心とした各社の定昇・ベアの実施状況や賃上げの配分状況、モデル賃金、年収・賞与の水準等について

民間調査機関の一般財団法人 労務行政研究所では1967年から毎年、全国の上場企業を中心に「モデル賃金実態調査」(2003年度からは「モデル賃金・賞与実態調査」)を実施し、各社の定昇・ベアの実施状況や賃上げの配分状況、モデル賃金、年収・賞与の水準等について調べている。

本稿では2019年度の集計結果から昇給制度の現状を紹介する。

昇給制度の現状

まず、昇給制度の現状を見ていく。

昇給には、(ア)制度的なルールに基づき “定期的に実施する昇給” と、(イ)物価上昇等に応じて賃金表の書き換えなどで全体もしくは部分的に底上げする “ベースアップ” がある。ここでは、前者の(ア)を対象に調べた。

この “制度上定期的に実施する昇給” は、次の三つに区分される。

  • (1)自動昇給……年齢や勤続年数などに伴って毎年自動的に発生する昇給
  • (2)査定昇給……能力の伸長、業績・成果の結果や取り組みを判定した査定に基づく昇給
  • (3)昇進・昇格昇給……職位や職能資格など、格付けの上昇に伴う昇給

各社が「定期昇給(定昇)」という場合、上記の(1)だけを指す企業から、(1)と(2)を指す企業、さらには(1)~(3)のすべてを指す企業までさまざまであり、このことが定昇を考える際に分かりにくい要因となっている。よって、ここでは「定昇」という言葉は用いず、(1)、(2)、(3)ごとに、その導入状況を見ていく。

(1)自動昇給[図表1−(1)、2]
「あり」は管理職で17.4%、一般従業員で47.7%

制度上定期的に実施する昇給の有無について、管理職・組合員(非管理職層。以下、一般従業員)とも「あり」が9割台後半で大半を占める。制度「あり」の場合の内訳を見ると、管理職における自動昇給は17.4%にとどまっている。

自動昇給「あり」の割合の推移を示した[図表2]によると、管理職では02年度37.9%、05年度25.0%、09~12年度20~22%台、13年度以降10%台で、おおむね減少傾向にある。

規模別では、1000人以上14.8%、300~999人と300人未満がともに19.0%と、1000人未満でやや高い。既に一定の賃金水準に達した管理職については、賃金が本来持つ「労働の対価」としての位置づけを明確にし、年齢や勤続年数等に基づく “自動昇給” は行わない(あるいは、過去にはあったが廃止した)企業が多く、特に大企業で、そのような傾向が顕著といえる。

一方、一般従業員における自動昇給は、47.7%が「あり」としており、管理職に比べて多くなっている。管理職に比べ、加齢に伴う生計費の増加に配慮して、一定の年齢までは自動的に昇給する仕組みを持つ企業が多いことが分かる。[図表2]で自動昇給「あり」の推移を見ると、05~11年度は50%台だったものが、12~19年度は30~40%台に低下している。調査年により集計(回答)企業のサンプル(顔ぶれ)の違いもあるため、今後の動向が注視される。

規模別では1000人以上43.0%、300~999人54.9%、300人未満44.9%で、300~999人が最も高い。1000人以上が一番低い管理職とは傾向が異なっている。

【図表1-(1)】制度上定期的に実施する昇給の有無

【図表1-(1)】制度上定期的に実施する昇給の有無

【図表2】制度上定期的に実施する昇給(「あり」の割合の推移)

【図表2】制度上定期的に実施する昇給(「あり」の割合の推移)

(2)査定昇給[図表1−(1)、2]
管理職92.2%、一般従業員95.4%と高い導入率

能力の伸長、業績・成果や取り組み(プロセス)を判定した査定に基づく「査定昇給」がある企業は、管理職92.2%、一般従業員95.4%で、ともに高い割合を示している。

過去の調査における査定昇給「あり」の割合を見ても[図表2]、管理職86~96%、一般従業員90~98%と、それほど大きな変動はない。なお、例年、一般従業員に比べて管理職における「あり」の割合がやや低いのは、既に一定の賃金水準に達した管理職については、「定期的な昇給は廃止して、基本給を “等級別定額(シングルレート)” とし、成果・貢献度に応じて賞与や業績給のアップ・ダウンで報いる」という考え方を採る企業もあるためと考えられる。

(3)昇進・昇格昇給[図表1−(1)、2]
管理職72.0%、一般従業員70.8%が導入

職位が上昇する昇進や上位の資格等級に上がる昇格に伴う「昇進・昇格昇給」がある企業は、管理職72.0%、一般従業員70.8%で、査定昇給と同じく高い割合となっている。17年度以前の調査では9割前後で推移しており、18年度以降の集計では20ポイント前後低下したが、これは18年度以降調査で本項目の調査方法を一部変更したことによる影響が大きいと考えられる[図表2]

【調査要領】

◎調査名:「2019年度モデル賃金・賞与実態調査」

1. 調査対象
全国証券市場の上場企業(新興市場の上場企業も含む)3650社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上。一部「資本金5億円以上または従業員500人以上」を含む)1675社の合計5325社。なお、18年度に上記非上場企業の見直し・拡充を図り、従来より調査対象を約350社増加させた。

2. 調査時期
2019年7月1日~10月3日

3. 集計対象
1.の調査対象のうち、回答のあった301社。業種別、規模別の内訳は[参考表]のとおり。所属業種については、調査時点におけるものとした。なお、項目により集計(回答)企業は異なる(項目により回答していない企業があるため)。

注) *ここでは、一般財団法人労務行政研究所が行った(調査期間:2019年7月1日~10月3日)「2019年度モデル賃金・賞与実態調査」をもとに、『日本の人事部』編集部が記事を作成しました。詳細は『労政時報』第3982号(2019年11月8日発行)に掲載されています。
◆労政時報の詳細は、こちらをご覧ください → 「WEB労政時報」体験版

記事のオススメ、コメント投稿は会員登録が必要です

人事・労務実態調査のバックナンバー

2019年度 部長・課長・係長クラス・一般社員のホワイトカラー職種別賃金調査
~13職種に見る最新実態と諸格差の動向~
グローバル化の進展等に伴い、役割給・職務給に代表される仕事基準の人材マネジメントを志向する企業が、徐々に増えつつある。 こうした動向を踏まえて労務行政研究所で...
2020/06/12掲載
2019年役員報酬・賞与等の最新実態
~従業員身分の執行役員の年収は1511万円~
民間調査機関の一般財団法人 労務行政研究所では、調査資料が少ない役員の年間報酬(報酬月額・年間賞与)その他処遇に関する調査を1986年以降継続して行っている。本...
2020/04/10掲載
労使および専門家の計452人に聞く2020年賃上げの見通し
~定昇込みで6495円・2.05%と予測。7年連続で2%台に乗る~
賃金交渉の最新動向がわかる!労・使の当事者および労働経済分野の専門家を対象に実施した「賃上げ等に関するアンケート調査」から見える2020年の賃上げ見通しは?
2020/02/20掲載

関連する記事

カギは「企業の繁栄」と「労働者の幸せ」の両立
組織の強みを引き出す、法との向き合い方
慢性的な長時間労働に歯止めをかける時間外労働の上限規制、雇用形態によらず仕事内容に見合う待遇を設ける同一労働同一賃金、そして、企業が職場のパワーハラスメント防止...
2020/07/08掲載編集部注目レポート
同一労働同一賃金の施行直前、約7割が対応不十分
『日本の人事部 人事白書2020』から、同一労働同一賃金の対応状況についての調査結果を紹介します。
2020/07/07掲載人事白書 調査レポート
東証第1部上場企業の2019年年末賞与・一時金(ボーナス)の妥結水準調査
全産業212社ベースで74万7808円、対前年同期比0.1%減とマイナスに転じる
2019/10/29掲載人事・労務実態調査
従業員満足度調査をめぐる状況(2018年労務行政研究所調査)
大手企業では3割が実施。従業員満足度に関する取り組みは拡大傾向に。
2019/08/05掲載人事・労務実態調査
2019年度新入社員の初任給調査
東証1部上場企業241社の速報集計。 35.7%が初任給を「全学歴引き上げ」
2019/06/07掲載人事・労務実態調査

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

無料ウェビナー8/25コーナーストーン主催

記事アクセスランキング

注目コンテンツ

【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


変わる、就職・採用!大量に集めて大量に落とすモデルの限界

変わる、就職・採用!大量に集めて大量に落とすモデルの限界

「厳選企業と優秀学生をつなぐスカウト型のエージェントサービス」IROO...


10~300名規模の企業だからこそ効果的<br />
「クラウド型人事・給与システム」が人材と企業経営を強くする

10~300名規模の企業だからこそ効果的
「クラウド型人事・給与システム」が人材と企業経営を強くする

クラウドシステム導入を検討する中堅・中小企業必読のインタビュー。システ...