「親に決められた」就職が転職の動機に? 希望する業界に行けなかった転職希望者の思い
このままだと後悔するかも…… 「今度こそ自分のやりたい仕事に」という転職
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面接を受けているうちに分かってきました
「ゲーム音楽をつくるような仕事を希望されるのであれば、未経験からご紹介するのはかなり難しいですよ。即戦力の求人しかないですからね。趣味でつくった作品があるなら、これはと思うゲーム会社に片端から送ってみる方法がいいかもしれません」
人材紹介会社のビジネスは、企業からの紹介手数料で成り立っている。企業がお金を払ってでも採用したい人材以外は紹介できないのだ。Yさんの場合だと、人材紹介を経由しない方がわずかながら可能性があるかもしれない。
「音楽をつくる仕事ではありませんが、ゲームに関連のある会社で今までの経験を活かすというのはどうですか? 例えばこういう企業などで……」
私が「ダメモト」だと思いながら紹介したのは、ゲーム機でも使われる半導体を扱っているメーカーだった。これならYさんの経験は活きるのだが、ゲームや音楽そのものとはまったく関係ない。断られると思っていたのだが、意外にもYさんは面接を受けてみたいと言ってくれた。書類選考はもちろん合格だった。一次面接が終わった翌日、私は企業の採用担当者に第一印象を聞いてみた。
「即戦力だと思いますよ。Yさんにその気があるなら弊社としては二次面接に進んでほしいのですが、少し迷っている雰囲気があったので、どう思っているのか確認してもらえますか?」
Yさんは、自分が迷っていたことを認めた。
「面接を受けている時に、この仕事ならすぐ対応できそうだけど、よく考えたら今とそう変わらないなと思ってしまったんです。違いがあるとすれば、今の会社は新卒の時に親の意見に影響されて決めたというところだけ。仕事内容ではなく、“親に決められた”という不満な気持ちが強くなりすぎて転職しようとしていたのかなあと、ふと思ったんですよね」
受話器の向こうのYさんの声は想像したよりもしっかりしていた。Yさんは、もう一度じっくり考えてみますといって電話を切った。転職活動をしてみて初めて自分の本当の思いに気づくという人は少なくない。Yさんの場合は、「親の意見で仕事を決めてしまった」という経験がモヤモヤした気分を生み、特に必要のない転職活動に走らせていたのかもしれない。
今回は企業に辞退の連絡をしなければならないだろう。しかし、近い将来、Yさんが本当に転職したいと考える時がくるかもしれない。その時には、Yさんの思いをしっかりとサポートできるような存在になっていたいと思う。
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