「親に決められた」就職が転職の動機に? 希望する業界に行けなかった転職希望者の思い
このままだと後悔するかも…… 「今度こそ自分のやりたい仕事に」という転職
近年、わが子の就職活動に親が熱心に取り組む、いわゆる「親の就活」が話題になっている。大学が開催する就職セミナーだけでなく、企業の会社説明会にまで親が同伴したり、場合によっては親だけが来たりするケースもあるらしい。そこまで極端でなくとも、親が子の就職に口出しをすることは昔からよくあった。安定した職についてもらいたい、子供に幸せになってほしいというまさに“親心”からなのだが、子供側からすれば親に反対されて希望の業界に進めなかったという思いを後々まで引きずることも多いようだ。社会人になって数年後、その思いが転職にぶつけられることもある。
未経験業界に挑戦したい理由とは
「学生時代からゲームか音楽の仕事がしたいとずっと思っていたんです。未経験ですが、いいお話があればぜひチャレンジしたいと思いまして、今回相談に来ました」
そう話してくれたYさんはちょうど30歳。現在は電子部品の商社で働いているセールスエンジニアである。役職は主任。年収も年齢の割にはよい方だ。それなのになぜ転職しようと思ったのだろうか。
「もともと自分が行きたかった業界ではないところが、不満といえば不満かもしれません」
話を聞くと、学生時代のYさんはコンピューターを使って作曲をするのが趣味だったらしい。その延長線上でゲーム業界や音楽業界に興味があったのだが、いざ就職活動を始めようという時期になって、親に猛反対されたのだという。
「せっかく工学部に行ったんだから、安定したメーカーか商社に就職しろと言われ続けました。ゲーム業界にも大手企業はあるといって説明したんですが、親の感覚からすると比較にならないようで……」
しかもその頃、大手のゲーム会社が合併したり買収されたりといったニュースが相次いだ。Yさん自身も「やはり安定した会社の方がいいかな」と弱気になって、結局今の会社に就職したのだという。もちろん親は非常に喜んでくれた。
「仕事はやりがいもありましたし、順調でしたが、やはり親の意見に従って決めたことに、どこか引っかかっていました。このままだと将来後悔するんじゃないかという気持ちがどんどん膨らんできたんです」
しかし、ゲーム業界も音楽業界も未経験だ。果たして転職など可能なのだろうか?そう思って、いくつかの人材紹介会社にエントリーしてみたのだという。
「もう何社かに相談されたのですか?」
Yさんは苦笑しながらうなずいた。
「どこに行っても同業の電子部品商社やメーカーの営業職を勧められますね。絶対に年収アップしますから、と言われて」
確かに経験を活かした転職ならば、技術系で営業もできるYさんは有利だろう。人材紹介会社にもぴったりの求人がたくさん寄せられているはずだ。