応募先は、紹介会社のコンサルタントに教えるべき?
個人情報と信頼関係
人材紹介会社では、転職希望者のさまざまな個人情報を扱う。履歴書と職務経歴書だけを見ても、氏名や顔写真、住所や勤務先など、さまざまな情報が詰まっている。そのため、これらを預かるだけの信頼に応えられる体制を、しっかり整えることが大切だ。一方で、紹介会社のコンサルタントが意外に教えてもらいづらい情報もある。「今、どこの企業に応募しているか」という選考の状況だ。知っておきたい紹介会社と教えたくない個人、それぞれに事情があるようで――。
それでも教えたくない情報
「企業情報をご紹介する前に、他の紹介会社経由やご自身ですでに応募されている企業があれば、教えていただけますか」
人材紹介会社の転職相談では求職者から、個人情報にかかわるさまざまなお話をうかがう。履歴書や職務経歴書に書かれていること以外にも、転職を考えたきっかけ、仕事選びを進める上で重視したい条件、希望年収、場合によっては家庭の状況や暮らしぶりといったところにまで踏み込むこともある。いずれもデリケートな情報だが、求める求人を紹介するために必要だということをしっかりお伝えすると、教えてくれる方がほとんどだ。
ところが、冒頭のような「今どこの企業に応募しているか」という質問の回答は、意外に聞き出しづらい。ためらっている様子が分かる場合には、選考状況を聞く理由をきちんと説明するようにしている。
「まずは重複してのご紹介を避けること。次に具体的な企業名をお聞きすることで、どんな方向性で転職活動を進められているのかがはっきりわかることですね。それによって、よりご希望に沿った求人をご紹介できるようになるんです」
先日、転職相談に来てくれたAさんは、こうした説明を聞いて、選考状況をつぶさに教えてくれた。
「まだ書類選考中ですが、N社とK社にはすでに応募しています。他にも、D社は別の紹介会社から求人を見せてもらったので、これから応募しようと考えています」
重複した企業があれば教えてくれる、というタイプの人もいる。Bさんがそうだった。
「この会社は、他でも紹介を受けました。書類選考に通ったので、来週面接に行く予定になっています」
昨今、転職希望者が一つのルートに絞って転職活動をするケースは少ない。複数の紹介会社に登録する人もいれば、自分で公募にエントリーする人もいる。ほかに選考が進んでいる企業があれば、こちらもそれにあわせてスピードアップしなくてはならない。選考の進捗状況を把握しておくことは、紹介会社にとって大変重要なのだ。
しかし、「他社の状況は、申し訳ないですが控えさせてください」と言う人もいる。本当は応募している企業があっても、「他に応募している求人はありません」と答える人もいる。こうなると、それ以上はなかなか押せない。紹介会社に進捗状況を教えたくないという人の気持ちも、経験的にある程度はわかるからだ。