地方移住と転職求人も求職者の希望もピンポイント 難しい遠隔地のマッチング
夏休みなどの長期休暇が終わると、転職希望者が増える。人材業界では、昔からそう言われてきた。長い休みの間に、旅先や帰省先で自分を見つめなおす時間を持ったり、家族や友人たちと相談したりする機会が増えるからだ。昨今注目されている「地方移住」を考える人にとっても、長期休暇は移住先を下見する絶好のチャンス。実際、人材紹介会社でも、移住を視野に入れた転職相談を受けることがある。
地方移住の中心はUターン
「もし求人があれば、出身地のX県の情報も教えていただけないでしょうか。仕事があればUターンも視野に入れていますので」
近年、転職を伴う地方移住を検討する人が増えているが、その中でもっとも多いのは、地元へのUターンを希望するケースだろう。特に、今住んでいる首都圏での転職をメインとして、もしいい求人があれば第二希望としてUターンも検討したい、というスタンスの人は多い。
「地方の案件は少ないんですが、ご希望であれば情報が入り次第、最優先でご連絡しますよ」
地方の求人情報を豊富にそろえているのは、超大手などの一部の紹介会社に限られる。もし情報が入ってきても、「ぜひ検討したい」という人材をタイミングよく見つけるのは、かなり難しいことだ。
私自身も、こんな経験をしたことがある。ある取引先企業から、地方に拠点を置く知り合いの会社の採用に協力してもらえないか、と頼まれたのだ。懇意にしている得意先からの紹介ということもあり、私は東京から新幹線で1時間ほどのその企業の本社を訪ねた。
「遠いところお越しいただき、ありがとうございました!」
駅にはタクシーで担当役員が迎えに来ており、本社や工場を案内してくれた。詳しい求人情報に加えて働いている人の声なども聞かせてもらい、さらに昼食までご馳走になった。
非常に有意義な訪問だったが、東京に帰ってきてからが大変だった。紹介できる人材がいないのだ。キャリアやスペックは合致しても「勤務地」で求職者の希望から外れてしまう。親切に応対してくれた企業の方々に申し訳ない気持ちと、「やはり地方の案件は、簡単にはいかないな」という思いが残ることになった。