行ってみたら事務所がない? 妙に強気の人気企業 直接訪問して確認したいのだが……。「とにかく紹介だけしてほしい」というケース
人材採用をサポートする仕事をしていると、どうしても採用に慣れている企業とのお付き合いが中心となる。しかし、世の中は「採用慣れしている企業」ばかりではないので、こちらがびっくりするような企業も時にはある。採用に慣れていないだけで、「最近の人材採用は難しい」ということがわかっている企業は、きちんとこちらのアドバイスにも耳を貸してくれるので全く問題はない。問題なのは、自社は人気企業だから採用なんて簡単、とやたら強気のケースである。
行ってみたら事務所がない?
「面接先の会社の場所として教えてもらったビルに着いたんですけど、その会社が見当たらないんです。どうしたらいいでしょうか?」
Uさんからの電話に、私は一瞬にして血の気が引いた。Uさんに紹介した企業「G社」での面接は、本来ならあと20分で始まる時刻だ。いったい何が起こっているのか……。
「Uさん、今いらっしゃるのは“青山のLビル”で間違いないですよね。そこの3階のはずなんですが。もう一度確認してみてください」
「いえ、間違いないと思います。ビルの正面に大きくLビルと書いてありますし」
電話を一旦切り、私は焦りながら外出しているG社担当の営業に電話をかけた。幸い電話はすぐにつながったが、事態を告げると担当営業も私以上に驚いている。
「すぐに先方にどういうことか確認して! 面接までもう時間がないよ!」
数分後にかかってきた営業からの報告は驚くべきものだった。G社が少し前に移転していたというのだ。
あきれながらも私はG社の新住所をメモし、すぐに地図で確認した。幸い、UさんがいるLビルからは地下鉄で一駅の距離。定刻には遅れるかもしれないが、大惨事にはならずに済みそうだ。もちろん、面接直前にこんなトラブルがあったことで、Uさんの気持ちに余計な波風を立ててしまったことは否定できない。
私はUさんに、本当のG社オフィスの場所を告げるとともに平謝りしていた。
「本当にすいません。事務所移転の情報がしっかり伝わっていませんでした。先方も申し訳なかったとおっしゃっています。ぜひ落ち着いて面接に臨んでください。少し遅れる旨はしっかり伝えてありますので」
電話を切ると私は営業担当にもう一度電話した。ついつい声が荒くなる。
「もし可能なら現地に急行してUさんを道案内してください。これはうちの責任問題だよ!」